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きものが生き残る道

西野さんのこちらのVoicyを聞いて、『きもの』について思いをはせました。

斜陽産業と言われて久しい呉服業界

証券会社から呉服業界に転職したとき、周囲の人にとても驚かれました。呉服業界は斜陽産業と思われていたからです。

わたしが転職した理由はいくつかありますが、一番の理由は『きものが好きだから』です。

過去に手帳に書きとめた、実現したいことのひとつに、洋服と同じ感覚できものを着るというものがありました。この転職のおかげで、この夢を叶えることができました。

わたしとしては得るものの大きかった転職でしたが、実際のところ呉服業界は斜陽産業と言われても仕方がない状況です。

画像:矢野経済研究所

呉服の市場規模は年々縮小しています。今の時代にきものを着る機会はほとんどありませんので当然と言えます。

成人式や結婚式、七五三、入学・卒業式などの特別なイベントのときの装いとして一定の需要はありますが、少子化が進んでいる現状を考えると、イベント需要も減少していくことは間違いないでしょう。

悪循環から抜け出せない

きものは高いというイメージがあるかと思います。実際、洋服に比べれば高価です。多くは絹や麻などの天然素材を用いていますし、加工や装飾によっては非常に高度な技術と時間を要するためです。

きものの需要自体が少ないこと、フォーマル向けのきものは手作業が多いことから、同じ柄を効率的に大量生産してコストを下げるという手段は使えません。大量生産できるのは浴衣くらいです。

商品としては高価なものではありますが、きものや帯の職人さんの収入は決して高くありません。

きものは『分業制』を取ることが多く、名もなき職人さんが多くいます。生地を染める人、絵を描く人、金彩の加工をする人、刺繍をする人といったように、細かく作業が分かれています。

購入する人の手に渡るまで、多くの人の手を経ています。関わる人が多い分、分け前は小さくなるようなイメージです。

どこの業界でもあるとおり、コスト削減は行われていますが限界があります。

生活が安定するかどうか分からない状況では、作り手になろうとする人も減ります。そして、技術を持つ人はどんどん高齢化しているのに、その技を継承する人ができません。

今わたしはアンティークのきものに関わる仕事をしています。明治・大正・昭和初期のアンティークきものにあるような、デザイン性が高いきものは、現代物ではなかなか見られません。

何もかもが縮小に向かっていて、悪循環なのです。

商品ではなく作品を作る、を持ち込む

Voicyで西野さんは作品と商品の定義をされています。

作品:芸術的制作物
商品:売買を目的としたもの

当然、多くのきものは商品として作られています。売れるものを作ろうとするのですが、そもそもの需要が少ない中では、売れたとしても上限が見えています。いまから洋服文化を和装文化に戻すことは無理です。

ついでに言うと、イベントできものを着るのは20代・30代の女性が多いですが、呉服業界の平均年齢は高く、商品の企画をするのは50代・60代の男性が多かったりします。彼らが『売れると思っているもの』と、若い世代の女性が『欲しいと思っているもの』の感覚が違いすぎます。『売れるもの』を作っているつもりが、全然売れません。

身近に目にする呉服屋さんで見かける振袖は、ラメラメしてギラギラしたものばかりで、どれも同じに見えます。今は『ママ振』と呼ばれる、母親の振袖を着る人が増えています。今の振袖よりも、母親世代の振袖のほうが上品で、魅力的な柄や色使いが多いからではないかと思っています。きものが高いから買わないのではなくて、良い物がないから、あるいは探せないから買わないだけです。

商品として作るのでは、もう無理なんだと思います。ママ振のような色柄のきものを作ろうと思ったら当然コストがかかり、今の一般的な相場より高くなります。

きものが生き残るには、パトロンが必要です。作品(美術品)として圧倒的に美しいものを作り、目ん玉が飛び出るような高額で売り、その売り上げで一般向けの商品を作るしかないのではないかと思います。ファッションショー用の作品と、その作品に似たファストファッション的な感じです。

きもの好きの人でないかぎり、アンティークきものにあるような、心を奪われるようなきものが存在していることを知りません。店先のきものを見て、こんなものなのかな?思っているのではないかと思います。

西野さんの考え方の安易な転用ではありますが、商品としてきものを売るという、これまでのやり方では縮小の流れを止めることはできないことだけは確かです。

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タカハシ
サポートしていただきました資金は、全額西野亮廣さんの絵本または本を購入するために使用します。西野さんの世界観を把握して、夢幻鉄道の二次創作(小説)を書きます。