◆アトランティスの魔導士〈0〉 ‐序章‐ Part‐1
おおぬきたつや・著。
まどうし
『アトランティスの魔導士〈0〉』
~はじまりのはじまり~
〈序章〉 part‐1
その店舗(みせ)は別段、今日がお決まりの『定休日』というわけではありはしなかった。が、にも関わらず――。
ぴしゃり…!
そのシャッターは、固く閉ざされたままだった。
そう、午前中よりか、もうずっとのことだ。
そもそもが日頃におき、そうは頻繁(ひんぱん)にありもしないはず貴重な客足を、かたくなに拒んでばかりでいる。
しかもそこはある種、特異とも言いうる業態をしておきながらにだ。
それだから、店にとりまさにかき入れ時だろう午後の三時(おやつどき)をとっくに過ぎていようとも、いまだにぴくりとも動き出す気配がない。
もはや単なる手違いや、ましてやただ一時(いっとき)の気の迷いなどではまったくのなしにである。
いいや、むしろわざとであったか?
そこに弁解の余地のひとつすらない、それはもはや完全なる故意においてだ。
さてはこの店員は相当に性質(タチ)が悪いのやら…?
ともあれ、こちらとかく振る舞い身勝手な売り手側、ときたらばだ。
シーン…!
色あせさびかけたシャッターがただの一枚きりで閉ざされた店内は、何やらどんよりと薄暗く、その中にただ独り――。
それはバチ当たりな不届き者が、つんと可愛げのないむくれっ面(つら)して、不機嫌に居直っていた。
※雑な絵でごめんなさい! これから徐々に良くなっていく…ハズです♡
そこはただでさえが手狭(てぜま)で見回す限りをそこかしこ。
やたらに細々(こまごま)した商品がごちゃませに並ぶ売り場の三和土(たたき)から一段、もとい、二段ばかし高いの奥の居間へと上がる敷居にちょこんと腰掛け、裸足(はだし)の両足をぶらんと宙(ちゅう)に放り投げる…!
こんな身ぶりそぶりがいささか大人げなくあるのは、やはりその人影(シル
エット)がまだ子供のそれだからだ。
ぷうっとへそを曲げた面立ちは、しごく幼いものに相違もなかった。
見るからには、初等教育もいいとこまだ半ば、ぐらいなものだろう。
そんな見てくれの華奢(きゃしゃ)で小柄な少年は、いつまでぶすりと沈黙していたきりだったが、やがて不意に単発、くしゃみを飛ばしたりする。
それからかすかに肩を震わせたりもした。
その背後、狭い部屋の隅っこには、音を消したままで終始点けっぱなし、この屋内じゃ今や唯一の光源たりうる、くたびれた小型テレビの画面がせわしなく明滅(フラッシュ)するのみ。
かくて日中でも外部からの日の光をまるで取り入れぬ閉め切った続き間は、ただいまの季節柄にはもう大分冷え込んでいてこそだ。
だがしかるにこれを件(くだん)の男児ときたものには、それはいまだに素足に肢体半袖(したいはんそで)の、それこそは夏場さながらのスタイルなのであって…。
「くしゅんっ、しゅんっ! うう…、ちぇっ、やってらんないやい、こんなショボイみせのばんなんてさっ!!」
くしゃみ連発!
またそんな涼しさに身を縮こめながら誰にともなく憎まれ口叩けば、まだやせ我慢して背後のひやりとした畳みに大の字に寝っ転がったりする。
あてどなくぶらつかせていた両足をおのれの体温で温(ぬく)い敷居にまで引っ込め、立てた膝っ小僧とその先の天井をぼんやりとだけ眺めるのだった。
そしてもはやそれっきり。
そのまま浮かぬ顔してふて寝でもするかの幼い店番ながら、しかしこれがまたどうしたことやら?
ややもせぬ内、出し抜けむっくりと身を起こす。
薄暗がりの中にただちにじっと小さなを耳を澄まし、一度はつむった目をふたつとも皿にして前方(まえ)へと向かった。
ただひたすら、みずからの意識を閉じたままのシャッター、そのまた先へと集中する。
「――っ! 帰ってきたっ!!」
それはつい、ほんの今し方のこと。
そのにわかに外部(そと)で生じたあるひとつの気配をだ。
これをどうやら自分なりの判断基準におき、今までにはなかったある特定のそれだと瞬時に嗅ぎ分(かぎわ)けたものらしい。
よって途端(とたん)、それこそがだんっと弾かれたように敷居から小さな尻を弾ませれば、愛用のゴム底サンダルつま先に突っかけ、ドダダタっ! と一目散(いちもくさん)にそちらへと突っ走る。
それがいきなり蹴(げ)つまずいたかにペタリと腰を落としたのは、付く手を阻(はば)む冷たい鉛色のカーテンに鼻っ面をぶつける寸前だ。
そうかと見ればその頑(かたく)なに封印していたはず一間幅(いっけんはば)のシャッター、何ら迷うこともなしに両手で掴(つか)むや否(いな)やにこの頭上まで一気にジャララララーッとばかし、持ち上げるのだった。
で。
またその途端――。
「…ッ!」
※次回、Part2に続く…!
おまけ♡
※過去の挿し絵です♡ かなりもんでヘタッピですよね♪