かつて吹奏楽に負けてしまった私へ

※自分語りしかない。


この世には2種類の人間がいる。
それは
・響け!ユーフォニアムを他人事として楽しめる人間

・響け!ユーフォニアムで暗黒の過去と対峙する羽目になり楽しめない人間
の2種類である。

当然ながら私は後者だ。

少なく見積もって100万人は似たり寄ったりの経験があると思うので、些末な仔細は省く。
みんなで楽器をやったところで心は一つになれなかったし、音楽が辺境の中学の生徒たちを救うことなどなかったし、喧嘩して叫んで泣いて腹を見せ合うようなベタベタな青春展開は当たり前のように存在しなかった。当たり前のように。

所詮は教室の隅で俯きながら、背を丸め、周囲に壁を作りながら文庫本を広げるような陰キャである。集団部活など合うわけがなかったのだ~終~

3年になった頃は『楽器や音楽は好きだけど、吹奏楽はもうやりたくない』という気持ちが大半を占めていた。地区予選が早々の引き際となって、正直なところ安堵していた。ああ、下手で良かった。向上心のない馬鹿で良かった。

とはいえ人生はそう上手くいくものではないらしい。

高校では軽音部に入るが、色々あって半月(年ですらない)で幽霊部員と成り果てた。
大学ではジャズ研に入るが、他サークルを言い訳に半年で自らの存在を消した。

なんかもう駄目だなと想った。多人数での音楽、どころか、音楽を奏でる側になることはもうないと思った。
わたしは音楽に好かれなかったのだな、と。
つまらない感傷だと自分でも思う。子どものいじけだとも。だが3回挫けてなお挑戦しようと立ち上がれるほど、わたしという人間は強くも立派でもない。

そんな折。
たまたま人から演奏企画とやらに誘われた。SideM好きでしょ?楽器持ってるでしょ?と。

いや、持ってるけど。
全然出来ないし。年単位で触ってないし。

ジャズ研時の出来心。親に借金して買った楽器が、部屋の片隅で息を潜めていた。殺しきれない存在感を放ちながら、私の部屋で長いこと座り込んでいた。
どちらかというと根負けだった。放置していた楽器への罪悪感に勝てなかった。矮小である。

初参加のときの記憶はない。
多分引くほどキョドってたと思うし、もしかすると無駄な空元気だったかもしれない。
大学の新歓で吹奏楽の演奏を見学、しようとして、たくさんの人が楽器を持って一つの団体になっている姿や空気に耐えきれず、聴く前から逃げ出したような人間なのだ。所詮は。

もう行くことはない。
何故なら怖いから。あの環境が怖いから。あの中にいることが怖いから。
(※初めて参加したときからずっと、和気藹々とした優しい世界である。私だけが存在しない敵に怯えていた)

次はない、思い出にはなったな……と思いつつ、曲目に釣られてちょこちょこ参加していた。オタク、チョロすぎる。

とはいえただの無謀なチョロオタク。わざわざ作っていただいた楽譜に太刀打ちできず惨敗しながら当日を迎え、会場へ入る度に(※誰が悪いわけではなく、私の気持ちの問題なのだが)あの空気にビビり、心拍数が上がり、こっそり手や指を震わせていた。
わたしは6歳の正月に、餅を食った後に戻してしまったことから、n倍の年月が経過した今でも餅が食えない人間なのだ、そう易々と私の中の粗末な古傷は消えてくれない。

そんな折。

ムチャクチャ葛藤した。曲目は出てないけど全部好きなのは確定している。
でも参加する楽譜、いつも全然吹けないのに。行ったら頭数に入るわけで、出来ないなんて言えないわけで。

ただ……、ただ、という未練がましい気持ちもあった。もしかしなくても、ホールというちゃんとした場所で楽器を吹くなんて、多分もう人生で機会ない。仕事や他の趣味もあるから楽団とか入れないし。入るだけの技量も度胸もないし。これなら一回こっきりだし。人生って長いようで案外短いし。あーもう、もう、どうしよ、どうしよどうしよどうしよ。

……人生最後の花火、打ち上げるか。
ヤケクソである。

予想通り全然吹けないし、1つの譜面で上下分かれてるの慣れてなさ過ぎてそもそも読めないし、日中の労働はカスだし、体力ないし、しごできパーソンがいっぱいいる中でパートリーダーを拝命する運びとなり……汗汗しながらたまにいただく仕事をやったりした。
私より適任だった人、私より上手に回せただろう人は他にもいたけども。パートの中で明らかに私が最弱だったので(みんなが巧いし私が下手過ぎる)仕事をいただいたのがありがたかった。むしろ下っ端として雑用でもなんでもいいので何かさせてくれって懇願せずに済んだことを感謝したい。

少なく見積もって100万人はいるであろう、つまらん拗らせ奴が、コンプに吐きそうになりながら、譜面の難しさにべそ掻きながら。4/13当日。演奏会に参加した。ひどく滑稽だったと思う。

でも楽しかった。
ムチャクチャ楽しかった。

悔しい部分は山ほどある。吹けなかったところ、もっとよくできたはずのところ、今までやったことないミスを本番でしてしまったところ……。ムチャクチャ悔しいし、最後まで上手な人におんぶにだっこで申し訳なかった。

でも楽しかった。ほんとに。

楽器吹いて、隙さえあればペンラ振って踊って(?)(全部事実なんですよ)でもやっぱり楽器吹くのが楽しかった。わたしはパートの端の席にいるのが多かったのだが、隣や後ろからの音が本当にすごいなと思ったし、ソロやソリもかっこよくて、本当にすごいなと、そればかりだった。
他のパートも、スコア見たり練習回参加したりしていたから決めどころは何となく知っている、みんなすごかったなぁと。

出来ないこと、とりわけ『周りは出来るのに自分だけが出来ないこと』がしんどくて、寝る前に感情がしんでいた夜も少なからずあったが、(そういうときこそ練習しろよという話ではあるのだが)、楽器吹くだけでなく、楽譜確認したり音源聴いたり、過去の練習内容振り返ったりと。拗らせコンプを踏み潰しながら少しずつでも多少はマシになれていたら、聞こえていたのなら良いなと思いました。


もしかしたらわたしのように音楽だったり、技量だったり、音色だったり、はたまた楽団的なものだったりに何かしらあった人はいるかもしれないけど。色んな『理由』を抱えながら参加したり、当日見に来てくれたり、配信観てくれたりして。少しでも前向きになった人がいたんじゃなかろうか。知らんけど。分からんけど。
えむの優しさや温かさ良い意味でのお行儀の良さに救われた人がいたように、色んな『P』が集結した315PPPPPに1個や2個や3個や315個くらい嬉しいことが起きてたら良いなと。別に主催でも運営でも偉い人でも何でもないただの楽器下手奴の一人だけど。ひっそり思うことくらい許してもらえたら幸いです。


楽器、巧くなりて~~~~~!!!!!
練習しよ!!!! !!!!

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