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ウクライナの越境攻撃に思うところ…

この写真の切り取り方には「悪意」を感じずに済ますことは、自分にはなかなか難しい

ウクライナ🇺🇦は勝手な理由で侵略された側であり、ウクライナに暮らす人々を思うと決してロシア🇷🇺の側の味方することはできないとの結論を持つ者としても


大きく評価の別れる人物でもあるエマニュエル・トッドが指摘した重要な視点として、その国民性が同じ東スラブ人ながらも大きく異なっていること、ロシアが家父長的なのに対し、ウクライナが西側ヨーロッパに近い個人主義的なものであるというものがある

福島第一原発事故後に、ロシアに近しい権威主義的な国家体制を持つベラルーシ🇧🇾から「亡命」した医師のユーリ・ #バンダジェフスキー 氏を日本に招聘すべくウクライナまで赴いたジャーナリストの木下黄太さん(傲慢な印象を与えてしまう人なので多くの人に嫌われるのは仕方ないとしても、当時プライベートなお付き合いを重ねた上での結論としては、日本人ジャーナリストとしては相当優秀な方で間違いないです)から聞いていたエピソードとも符号するところが多くあり、少なくともこの件に関してはトッドはそれほど大きな間違いは言っていないと判断している


ただし、かの国の政治情勢は、日本人があれこれ言えたものかどうかという問題はあるけれども、独立以来ゴタゴタしていた印象ばかり残している

現大統領のウォロディミル・ #ゼレンスキー もまったく同じ問題を抱えているが、ロシア同様にオリガルヒと呼ばれる有力な経済人次第で決まる面は否めず、今も変わらずそのようにあり続ける

東方から攻めてくる遊牧民からの圧力が強過ぎたため、カトリック(+プロテスタント)信仰の強い西側ヨーロッパからすれば、国家としての統一性や人々をまとめ繋ぐ信仰等、何事につけかなり遅れることを余儀なくされた歴史を持つ東スラブ人の中で、一番最初に国家を形成し、東方正教会の中心地であったにもかかわらず、その後の複雑な歴史を経て帝政ロシアに吸収され、不本意な位置付けに留め置かれるのみならず、西側からモスクワを目掛けて攻めてくる軍事勢力に対する緩衝地帯にもされてしまう

長らく帝政ロシアからソビエトまでの支配下にあったのだから、権力を志向する者どもにロシア人のように振る舞う傾向があるのも当然だろうし、故に念願の独立を果たしても、ウクライナ・オリガルヒと上手に付き合える者が大統領に選ばれ、彼らにとり邪魔となれば引きずり降ろされるゴタゴタが続き…と、遠い日本から見ていて感じられたとしても仕方がないと思う


しかし、いつだって気の毒なのはウクライナの地に暮らすウクライナ人だということは忘れちゃいけない

就任当初の対ロシア政策を大きく転換して遂には侵略を呼び込んでしまったのもゼレンスキーなら、軍事力はもちろん全人口でも大きく劣るウクライナが対抗するために発令した「国家総動員令」で多くの家庭を悩み苦しませているのも彼だ

ロシア軍は電撃作戦でキエフ(当時の呼称)を制圧し、極めて優位な形で早期に侵略戦争を終わらせる意図があったようにも見えたが、極めて優秀な軍人として、あくまで透徹した現実主義者であり続けるヴァレリー・ #ザルジニー 総司令官の周到な用意と的確な戦略判断により阻まれてしまう

(ザルジニーは後にゼレンスキーと対立して軍を離れている)

五年の任期が来た時点で選挙の洗礼を受けるべきだったと今も強く考えるが、戒厳令を延長し続け、遂には自らの大統領職の任期延長まで決めてしまったゼレンスキーの政策的な判断の是非に関わらず、彼に逆らうのは難しい

対ロシアという意識では、ウクライナの人々の心は侵略以来加速度的にロシア的なるもののすべてから遠ざかっている

ならば、ゼレンスキーを大統領として全面支持することはしかねたとしても真っ向から反対するのはなかなかできることでない


歴然たる事実として、自前の経済力や軍事力では侵略戦争への抵抗を到底継続できないウクライナを率いるゼレンスキーは、いつも軍事装備品や兵器を米国🇺🇸やMATOに求め続け、そのためのアピールならばなんでもやるという姿勢だが、欧米諸国から見れば同じ東スラブ人同士という他人事の揉め事でしかなく、ウクライナ支援のための予算は議会でなかなか承認されない

今回のウクライナにによるロシア領土への越境攻撃は、揉めに揉めた挙げ句、ようやく米国をはじめ欧米の対ウクライナ支援の予算が議決されたから可能になったものでしかなく、まずはその継続性に大きな疑問を持つべきと考える

いつまでウクライナにカネを出すんだと各国の有権者は感じ始めている

他国のカネや兵器を使って越境攻撃を仕掛け制圧地域を拡大させていくことで、ウクライナがこれまで通り「祖国防衛」のためという名分を戦闘の正当性として国際社会に向けて主張することも、今後は通じにくくなっていくだろう

クルスクがロシア軍によるウクライナ侵略攻撃の基点になっていたとはいえ
(故に越境攻撃の正当な理由になり得ているが)


一方で、プーチンはウクライナ軍に充分に攻撃させて制圧領域が拡大していくのを冷静に見ている

適当な頃合いを見計らって小型核兵器を使ったとしても、その理由として「もはや『ウクライナへの侵略戦争』ではない、我が国も侵略攻撃を受けて大きく領土を損なってしまった」などと宣言したとしても、国際的な非難はこの越境攻撃以前よりも幾分かは軽減されるとの計算は済ませているとも思う

現に、ザポリージャ原発を占拠したロシア軍が大きな非難の対象となったにも関わらず、今度はウクライナ軍がクルスク原発に狙いを定めているとして、既にIAEAが大きな危機感を持ち、「両国への注意喚起」という声明を発表して乗り出してきている

(ポーランド🇵🇱がロシアの飛び地領であるカリーニングラードを制圧する動きを見せているとの報道もあり、スラブ民族の中での争いがNATOや米国を逃げようなく巻き込む事態になったとしても、国際政治を欧米諸国が一方的に仕切る時代は終焉する時期に来たような感もあり、これら一連の対ロシア包囲網に対して、国際世論が多数派を形成して欧米に追随するとは考えにくい)

プーチンがこんな声明を出している

#クルスク という土地は、ロシア国民にとり特別な意味合いを持つ

ナチスドイツがモスクワを目指して侵攻し、迎え撃つ当時のソビエト連邦との間で人類史上最大の地上戦が展開され、多くのロシア人兵士の命を犠牲にして「敵」を撃退したのが、第二次世界大戦の #独ソ戦 におけるクルスクだ

クルスクが制圧されたとなれば、ロシア人は否が応でも「祖国防衛」を意識することになる

(シュミレーションゲームの #アドヴァンスド大戦略 をナチスドイツ側で散々プレイしたのだけど、エルアラメインあたりからとても勝てそうにない展開が始まり、それが絶望に至ったのがクルスクの画面を見た時だったことを思い出す…)

プーチンに今すぐにでも軍事力を行使して制圧地域を奪還するだけのヤル気がなかったとしても、彼が強い調子の言葉を使えば使うほど、たとえそれだけでしかなかったとしても、ロシア人にとって対ウクライナ戦争を戦い抜くための意識を強め裏付ける正当性を「敵」が提供してくれていることになる



この越境攻撃は、ゼレンスキーという胡散臭さが国内外にバレてしまった人物が、自らの手で成果を上げて求心力を得たかったがためという、彼の個人的な意図しか自分には見て取れない
(反論があって当然と思います)

そして、それはウクライナの人々の今後にとり、悪い結果しかもたらさないとの想像したくない可能性を強く感じさせるものでもある


沈黙を続けるザルジニーはかかる事態を見て何を思うのか、とても気になる


独ソ戦に関してはこちらで比較的手軽に学べます


表題の画像は、僕の親しい友人夫妻に初めてのお子さんがお生まれになった時、数年後に送った自分でもお気に入りの絵本『てぶくろ』です

この絵本にはずっと以前からウクライナ民話と記載されていましたね

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