ちょっとした楽しみ
僕が現場に出るときは、片付けやら掃除しかしてなかった頃から、タテ落ちするデニムしか履かなかった。
いい色落ちのデニムが何本もできる。
今の仕事で動かすのは基本的に手先だから、全身を使う建築業とは異なるのは仕方がない…。
上は必要なものが入る実用性でカメラマンベストやフィッシャーマンベスト。
寒くなると無骨な米国製の中綿入りジャンパーと決めていた。
クツは屋根の上で滑りにくい、子どもの頃に履いていたジャガーΣの白。
全体に当時流行っていたアメカジ寄りですね。
そして自分が会社の代表になって、サブロクのコンパネとか八尺ものも入るワンボックスで買い替えを考えた。
ハイエースのスーパーGLはいいんだけど、職人さんが皆乗っているし、ややサイズが大きいようにも感じてパス。
理想はVWのヴァナゴンなんだけど、使い倒す実用車であることが前提だったから、ここは国産車からのチョイスとなる。
で、トヨタのタウンエース(二代前のタイプです)に落ち着いた。
グレードは一番よかったDX。
当時どこでも見かけた社用車でもあるけれど、白いボディに黒の樹脂パーツの配分がよく見ると結構スタイリッシュに思えた。
初代のエルグランドとかも見に行ったけど、やっぱり実用車としては使えないなぁとの印象だった。
いい出物があったから早速入手して、カスタムしていった。
白と黒のモノトーンを意識して、貼れる窓はすべて黒いフィルムを貼り、ホイールはあえてテッチンのままにして、ドアの縁に黒のモールを取り付ける。
梯子を乗せる必要があったから、これも黒いスーリーの一番シンプルなルーフキャリアを備え付けて完了した。
たったこれだけで、かなり雰囲気は変わったんですよ。
そしてステッカーカスタム。
ここは一番センスが問われるところで、アウトドアブランドやスケートボードブランドを中心に集めたものを、仕事車らしく派手になりすぎないよう、またテーマやデザインに一貫性を持たせるよう、考えに考えて選び抜いたものを丁寧に貼っていく。
いいカンジに仕上がった。
内装は質素で構わないのだけど、ちょっと遊びがほしくてL L Beanのフロアマットに、紐で結えるタイプの本革製ステアリングカバーを用意した。
ナビとか車載テレビとか、ダサくてお話にならないとパスして、高級オーディオのブランドを見てまわった。
僕は音楽が聴ければそれだけで何もいらないので。
マッキントッシュはどうかな…と候補にしたものの、アレは最低ジャガー以上の風格を持つ英国の旧車にしか似合わないと思えたから、倒産寸前だったナカミチを選んだ。
ディスプレイが上品で、質素な内装にオレンジの控えめな光が大いに映えた。
仕事で使うワンボックスなんだから、システムまでは組まない。
それでも、夜の東名でラリー・レヴァンのリミックスによるアシュフォード&シンプソンなど流していると、気分がいいことだろうこの上なかった。
黒いスチールで棚を組み後部に備え付けて、そこに必要な道具などを納めた。
中央部はあえて空いた空間とし、いろいろなものが載せられるようにする。
遊びに行くときは、愛車のBMXを載せてクルマは駐車場に入れ、街を走り回った。
今一部の人たちがやっているヤングタイマーのカスタムを、かなり先行してやっていたと考えると、ちょっとした満足感が今でもあるくらい気にいっていた。
板バネだから乗り味はご愛嬌だけど、このセンスがわからない子は別に乗せなくてもいいやくらいに思い込んでいたものだ。