AIイラストではない作品だけのプラットフォーム『notAI』は開発中止になりました。
AIイラストではない作品だけを投稿できるプラットフォームとして、『notAI』というサービスを開発し、事前登録を募っておりました。
しかし、先日発表されたAI技術「PaintsUndo」の登場により、AIイラストではない作品を判別することが困難になり、サービスの前提が崩れた結果、『notAI』の開発中止を決定いたしました。
以下は、PaintsUndoが生成したタイムラプス動画の一例です。
なぜ「AIイラスト禁止」のプラットフォームを作ろうと思ったのか?
初めまして。大森と申します。株式会社CAENの代表として、WEBサービスやモバイルアプリの開発を行なっております。
また、個人としては役者活動など創作の現場にも関わっており、「役者 × エンジニア」という異なる領域を通して、より視野の広いプロダクトの開発を目指しています。
2022年7月頃、イラスト生成AIが登場し、瞬く間に性能と知名度を上げ、一般にも普及し始めました。
誰でもプロ級のイラスト画像が出力できるようになり、AIイラストを生業とする「AI絵師」や、AIイラスト専門のサービスが急増。それと同時に、AIイラストを取り巻く諸問題も顕在化しました。
各イラストプラットフォームではAIに対する立場を表明し、AI生成物の取り扱いについてのルールを設けました。一部のプラットフォームではAI生成作品の掲載を禁止しましたが、「AI生成作品をどう見分けるのか」という問題への対応は不明瞭でした。
多くの場合、AI生成作品フラグを投稿者が自主的に付けるなど、良心に頼った仕組みになっており、「このイラストはAI生成物なのでは?」という論争も度々起こりました。
このような状況を踏まえ、私は「AI生成物ではない作品」のみが掲載できるプラットフォームの必要性を感じ、『notAI』の構想に至りました。
「制作過程のタイムラプス動画」という証明
AIイラストではないことを客観的に証明するにはどうすれば良いか?
私は「制作過程のタイムラプス動画」に着目しました。AIイラストはプロンプト(指示書)とデータセットを入力すれば、瞬時に完成形が出力されます。「制作過程」そのものが存在しません。
そこで、イラストのタイムラプス動画の有無を確認することで、「AIイラストではないことの証明」が可能ができると着想。
さらに、「制作過程」をイラストの付加価値として掲載できる様にすることで、クリエイターと閲覧者双方に利のある状態でプラットフォームを作れるのではないかと考えました。
そのため『notAI』では、イラスト投稿時に制作過程のタイムラプス動画の添付にすることにしました。
そして、サービス開発中止
2024年3月頃、『notAI』プロジェクトをスタートさせ、各方面へのアンケートや直接のヒアリングを通して、サービスの必要性や求められる機能を模索。
2024年5月には事前登録LPを公開し、2024年中旬末のベータ版リリースに向けて開発を進めていました。
そんな中、2024年7月9日、米スタンフォード大学の研究者チームが、イラストの制作フロー動画を生成するAI「PaintsUndo」を発表。
このAIは、完成したイラストを入力することで、下書きから着彩、イラストが完成するまでの流れのタイムラプスを自動生成し、動画として出力できるものでした。
この技術の登場により、『notAI』の前提が崩れてしまいました。
タイムラプス動画による証明方法が無効になったため、総合的に判断した上で『notAI』の開発を中止することを決定しました。
AI時代に求められる「SF力」
AI技術の急速な進歩は、今まで以上に「何に賭けるのか」がとても重要になったことを痛感しました。AIが参入した分野では、破壊的なゲームチェンジが起こる可能性があります。昨日まで絶対優位だったもの、価値があったものも、1日で状況が変わります。
行動が水泡に帰さないためにも、AIがもたらす未来を予測した上で、何をするか、何を作るかを考えることが非常に大事です。
AIがもたらす未来を予測するには、現状のAIの性能や得意・不得意を知るだけではなく、その技術を活用して何ができるかを発想力豊かに夢想し未来を描く「SF力」が必要になる思っています。
「SF力」とは、AI技術の潜在能力を冷静に見極めつつ、その技術がもたらす未来を、既存の枠にとらわれず自由に想像する力です。
例えば、PaintsUndoは完成イラストから制作過程のタイムラプス動画を出力できるAIですが、この技術の根幹は、「未来と過去を類推できる」ことであり、その技術の応用として、描いているイラストを部分的に加筆修正できる、イラスト制作の補助的ツールが生まれる未来があるかもしれません。
もしかしたら、「未来と過去を類推できる」技術がイラストだけに留まらず大きな概念となり、「擬似的なタイムトラベル」ができる様になるかもしれません。(そんなことあり得ないかもしれませんが、あくまでSF力としての発想練習です)
「創造力」から「想像力」の世界へ。
株式会社CAENは、AI時代だからこそ重要となる人間の想像力や発想力を活かし、人間性を求めて魂を削った創作物を生み出します。
株式会社CAEN
代表取締役 大森 翔吾
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『notAI』は開発中止という結果になりましたが、事前登録やアンケートを通して、多くのクリエイターの皆様から貴重なご意見をいただくことができました。この場を借りて、心より感謝申し上げます。
AI生成コンテンツとの棲み分けを行うプラットフォームへの需要や必要性などの声も多く届きましたので、未来へのバトンとして、その一部を抜粋してご紹介させていただきます。
アンケート抜粋
以下のアンケート結果は、回答者の匿名性を保護するため、個人を特定できる情報を除いて掲載しています。
notAIに期待すること
AI使用者を気にせず、気持ちよく創作活動ができることを期待しています。
作品の保護機能の実装を予定している部分に期待しています。
オリジナルイラストをたくさん見ることができたら嬉しいです。
これからタイムラプス動画作成を始めてみたいです。その手順も知れたらと思っています。
タイムラプスなど作れない環境の人もいると思いますが、たくさんのユーザーが安心して利用できるプラットフォームになることを祈っています。
興味深いプラットフォームの企画をありがとうございます。応援しております。
notAI、イラスト、AIに関して何かご意見ご感想などございましたら教えてください
AIはツールとして活用されるべきだが、手書きの価値も尊重してほしい。
クリエイターの権利を守るための具体的な対策を求めます。
運営の透明性が重要。特にAI使用の有無については明確にしてほしい。
AIの使い方を教える教育的なコンテンツがあれば、クリエイターのスキル向上に役立つと思います。
クリエイター同士が交流できるコミュニティ機能を充実させてほしい。
ユーザーからのフィードバックを積極的に取り入れて、サービスを改善してほしい。
以下の内容は有料記事として提供させていただきます。
『notAI』プロジェクトについてより深く知りたい方、このような取り組みを応援したいと思われる方は、ぜひご購入をご検討ください。
コラム記事
①なぜ『notAI』は仕様変更ではなく開発中止に至ったのか?その理由と判断材料とした未来予想
②これからの未来における『notAI』作品のあり方について
デザインについての記事
①『notAI』イメージキャラクターイラストの発注指示と、イラスト画像
②「notAI」特徴を表すイラスト3点の発注指示と、イラスト画像
コラム記事
①なぜ「notAI」は仕様変更ではなく開発中止に至ったのか?その理由と判断材料とした未来予想
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