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ファンタジーが現実になるまで

ポケモン世代。私はそれに該当するか些かあやしい。
人にとってはど真ん中と言い張るだろうか。
ポケモン赤緑が我が家にやって来たのは小学校を卒業する最後の年だった。

それが、何故か妹にポケモン緑だったか赤だったかが与えられたのだった。
経緯は全く覚えていないが、我が家に携帯機のゲームがやってきたのは青天の霹靂だった。

その頃、私は塾と読書、共働きの母を助けるための洗濯、晩御飯の手伝いで忙しくゲームに触る暇などない生活を送っていたのだが、全て終えて子ども部屋で寛ぐ妹のプレイするポケモンを漫画を読みながら眺めていた。

「イワーク、強すぎる。無理。怖い。」
「イワーク??どんなん??うわ、厳ついな」
妹はお供をリザードンにしていたせいだろうか、死にそうな顔をしていた。岩は炎に抜群などという概念は、当時の私たちには初見殺しすぎた。
「いまね、お月見山ってとこにおるの」
「え、可愛い名前。どんなんおるの?」
「だいたいズバット……でも、ピッピって可愛いのが出るらしい」
「捕まえたら見せて」「全然でん……」
「場所間違えたんやない?」
「あ!おねえ!これ!!これ!!!」

何故かこれらのやり取りは鮮明に覚えている。

途中、レベル上げが足りなくて先に進めずしょぼくれていた妹に変わり、今で言う育成代行を行い、水辺の町の桟橋あたりで永遠にレベル上げをしたことだけがゲームとしてポケモンに触った思い出だ。

少しあとになるとメディアミックスでポケモンのアニメが始まり、幼なじみが何故かドはまりし、ららら言えるかな〜を嫌というほど聞くはめになるのだが、ポケモンとのファーストインプレッションは、ちょっと第三者視点での遭遇だった。

社会現象を巻き起こすほどのブームだったのだが、妹は金銀まではプレイしていたように思う。

イーブイ推し過激派のはなし

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次に私がポケモンに深く関わるのは、幼稚園教諭として仕事を始めた頃だった。
丁度仕事を始めた年に、リーフアンドグリーン、ファイアレッドのリメイク版が発売され、園児たちはポケモンが好きすぎて、園に持ってくるコップやタオルなどをポケモン染めにしていた。

「先生、ポケモン知っとる?」
「知っとるよ〜、ピカチューやろ?あと、リザードン、フシギバナ、ナゾノクサとか」
「おれ、1番好きなのピカチュー!」
「俺は強いのならなんでもすき!」

子ども達にせがまれて、良く藁半紙に塗り絵するためのポケモンを描いた。
そして、そのうちに造形と絵画の時間に問題は起きた。

『動物をかこう』『動物をつくろう』
の課題で、ポケモンを描く、ポケモンを作る子が現れたのだった。
造形の先生はにがい顔で、
「ポケモンは動物ではありません。違うものを作りましょう」
と、ため息をついた。
子どもたちは、先生は何を言っているんだ??という顔でむくれていた。

今でも覚えているのは、
「僕んちは、犬も猫もかえんの。でも、イーブイやピカチューなら噛んだりしないから、飼ってもいいって。僕のイーブイ、可愛いんだよ」
という、園児の必死の訴えだった。

推しの概念はまだない頃の話だが、彼の言わんとすることはわかった。
イーブイ、たしかに可愛い。
造形も動物をもとにしているからだろうか、4本足で、フェネックとポメラニアンを足したような見た目で、犬っぽい。

ゼニガメなんかはもうそもそも亀だし、彼らの中でポケモンと動物は曖昧なのだなぁと納得するしか無かった。
まだペーペーの私は、わかるよ。わかるけど、動物図鑑に載ってないやろ??

と、苦し紛れの説得をし、イーブイに似たポメラニアンを見せて、イーブイFateポメラニアンということで、彼にポメラニアンという名前のイーブイを作ってもらうことで決着を見た。

(画像は我が家のイーブイみのあるポメラニアン)

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正直フシギバナとかだったらお手上げだった。
彼の推しがイーブイで本当に良かった。

そうして、微妙にポケモンと関わりながら他人のポケモンへの熱い愛を目の当たりにし、彼らにとってポケモンはリアルを侵食してるんやなぁと感じた。


携帯機からスマホへ。どんどん身近になるポケモンたち

時は流れて、私は結婚し夫ととあるゲームにどハマりした。
Ingressという、位置情報を使った戦略ゲームで、近所のランドマーク同士を起点に線を引き、三角形を繋いで繋いだ範囲を自分の陣地として制圧するゲームである。
地図が読めない、近所の地理に疎い私が歩きまくり、なんならポータルというランドマーク申請をしたりもした。

Ingressは、何を隠そうPokémon GOの開発元、Nianticが開発したゲームである。
私たちが通ったポータル、申請したポータルはそのままPokémon GOに流用された。
夫は、開発版のプレイヤーに選ばれ私たちは自然にIngressからポケモンに流れていった。

正式版リリース日、私は1匹のイーブイを捕まえた。星2で今なら間違いなく飴玉にする無慈悲なトレーナーなのだが、最初に捕まえたイーブイがかわいすぎて、大事に育て現在も私のボックスの中にサンダーに進化した彼がいる。


あー、あの時の推しにハマる感覚が今ならわかる。私が最初に捕まえたイーブイ可愛すぎるわ。能力とか関係無い。かわいいは正義。
いつの間にか推しポケが爆誕した瞬間だった。

その後も、ダラダラと続けた訳だが、そのうちに息子が生まれ、彼は見事にポケモンにはまった。VR機能があるPokémon GOは、現実世界にポケモン(概念)を呼び出し写真を撮ることが出来る。

まぁこのせいで、息子はポケモンの虜になった。ママとパパの携帯から出てきたポケモンと写真が撮れるのは、ほとんど現実にいるのと相違がないらしく、
「オレのプテラ!!!一緒に飛んでみたいの!」
だとか
「この青いこはオレの大事なギャラドス!強いねぇ」
いや、それ育てたのママですし??

私のカメラロールは花と息子と、美味しいものと、ポケモンに侵食された。

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彼の愛は凄まじく、くじ引きで当てたサンダースのぬいぐるみを持ち歩き、寝る時も一緒。ららら言えるかなを熱唱した幼なじみにプレゼントされたレックウザを恐竜のフィギアと戦わせ、サンタクロースにパルキアのぬいぐるみをお願いする。洋服と持ち物はポケモンか恐竜で無ければ着ない始末となった。

私がポケモンに初めてであった1996年から2021年まで25年。完全に我が家はポケモンが現実になった。
今なら、イーブイは動物だと言い張った彼の気持ちが分かる。まだ彼が見たことの無い、ラッコとポケモンのミジュマルは、概念としての差がほとんどない。

彼がポケモンは生身がない幻想の生き物であることに気づく日まで、つかの間のポケモンのリアルの日々を楽しもうと思う。
誰かが推しに狂う姿は、大変尊い。
ちなみに、彼の最推しはカモネギである。

さて、今日はジョウト地方のポケモンを捕まえに行く約束である。いってきます!


#ポケモンへの愛を語る

#ポケモン


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