問わず語りのカボチャ/烏龍水

 こんばんは。ああ、そんな怖がらないで。
こんな夜だもの。別に不思議な格好じゃあ、ないでしょ。君こそどうしたの?こんなところで。
…ああ、友達を待っているのか。なるほど。じゃあ、来るまで待とうか。ほら、灯りがないからね。僕の頭が代わりになるだろう。
それにしても、この町は前来た時とだいぶ感じが違っているね。実は、僕、旅人でね。長いこと、いろいろなところを彷徨い歩いているのさ。どうしてかって?昔、悪いことをたくさんしてたら、かえる場所が無くなっちゃったんだ。
ん、悪いことって何をしたんだと?想像してごらん。…出来たかい?それ、全部だよ。
まあ、世の中にはやってしまったら取り返しのつかないことがあって、それをやっちゃったのさ。そういうことほど、最初はなんてことないって思うんだけれど、そのうち、事の大きさを自覚して、慌てて、怯えて、自棄になって、そして、絶望するんだよ。
どうしたんだい、顔色が悪いよ?大丈夫?なら、いいんだけれど。
だから、僕は世界中を旅しているのさ。安住の地を求めてね。まあ、そんなところはないのだろうけれど。
でも今日は、一年に一度の大仕事だ。何をするんだって?うーん、案内みたいな?あるべきものを、あるべき場所へ。自分の家すら忘れた僕にとって皮肉な役目だよ。だが、そうあれと望まれたなら、全うしなくては。
あ、ほら。お友達が来たよ。可哀想に。ハロウィンの夜は、たくさんの悪霊がいるんだ。あんなに憑かれちゃって。本物のゾンビみたいだなぁ。君はどうする?そのナイフを持って。

そうか。じゃあ、家に帰ろう。精一杯、そのナイフで奴らのふりをしなさい。
なに?礼だって?いいさ。また会うかもしれないから。生憎、僕は地獄も天国も、道までは知っているのでね。

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