焼いてかためて/烏龍水
どんなに優しくおいても卵は転がってしまい、殻を割るにも加減というものが必要だ。白い小鉢に卵を溶いて、塩と砂糖と味の素を加える。そのコントラストが、また違う選択肢もあったのじゃないかと思わせてくるが、ここから入れる保険はないだろうと言うしかない。油を薄くひいた四角いフライパンを熱して、卵液を半分注ぐ。フライパンを回して底を卵液で覆い隠すと、すぐかたまるから、今度は剥がして巻いていく。直線に巻いていきたいが、そうはいかない。手早くしないと、焦げてしまう。半分潰れたみたいな、不恰好なそれを、もう半分の卵液を注いで、かためて、巻いていく。
うん、ここで、上手くできれば、問題ない。
最初の一巻きが破けていたって、なんとかなるさ。だから、大丈夫。
仕上げに、巻き終わった卵を焼いていく。
こうやって身をかためていくのだ。私だって。
焼いているのか、焼かれているのかわからないけれど。