【夢分析:ビジネス敗残兵を癒す「補償夢」】
わたしは企業戦士だった。
会社に尽くした30年余りの年月が走馬灯のように脳裏を去来する。
貢献してきたつもりだ。働き盛りの頃、10年連続トップの営業成績を維持。
同期の誰よりも早く課長に昇格。わたしの会社を 業界大手に伸し上げた。
役員の席は確実だと思われた。
ところが、早期退職の勧奨が来た。同時に役職定年の内示も。
晴天の霹靂だった。
足元が崩れた。
初めて家内に愚痴った。
「会社、辞めようかな」
「寝ぼけないで。あなたには、まだまだ銀行ATMで居てもらわないと」
銀行ATMかぁ。わたし独りぼっちになって泣けた。
会社が髭をはやしたキャリアカウンセラーを紹介してくれた。
カウンセラーの前で、気付けば私は大泣きしていた。
何回かカウンセリングに通い、そのたびに泣いた。
涙が出尽くした頃、切ない二つの夢を見た。
(夢 の ①)
40年前に私が育った実家の前にいた。
懐かしさに震えた。
前庭と奥庭がある。奥庭には、そうだ!、飼い犬の ゴン が居るはずだ。
「ゴン! ゴン!」
居た!
ゴンは昔のように奥庭に居た。
ゴンは振り向き、嬉しそうに弱々しく尻尾を振った。
幼い私は両親に懇願して子犬のゴンを飼い始めた。しかし、いつしか飽きてまったく忘れてしまっていた。
「ごめんよ。ゴン。寂しかったかい」
ゴンはキューンと、かすかに鼻を鳴らした。
私はゴンを抱き締めた。ふかふかの毛。
ゴンの匂いに包まれて泣いた。
涙はゴンの茶色の毛を伝い、やがて染み込んでいった。
ゴンはずっと私に抱かさせてくれていた。
(夢 の ②)
大学のゼミの恩師の快気祝いだ。
恩師のお宅の二階に弟子たちがたくさん集まっていた。
私は少し遅れて来た。
階下の台所では、恩師の奥さんと、わたしの "元彼女" が、祝いの料理を準備していた。
"元彼女" を見て、私は懐かしさに震えた。
引っ込み思案の "元彼女" らしく、みんなのように二階で恩師を囲めないでいる。
"元彼女"のそんなところに飽きて、振ってしまったのだった。
私は "元彼女" 微笑んで、腕をつかんで、二階へ引っ張り上げた。
そして恩師の隣りを空けさせて、そこに "元彼女" を座らせた。
恩師は「おー!」と喜びながら、"元彼女"を抱き寄せた。
"元彼女" は、はにかみながらも嬉しげで、私も心の底から愉快で大笑いしていた。
※ 事例は本人が特定できないことを条件に教材にすることが許可されています