月ノ座 文章ワークショップ事前課題文
テーマ「何を、どんなふうに書いてみたいか。書けるようになりたいか。」
私は自分のことを話すのが苦手だ。自分に自信がなく、人にどこまで興味を持ってもらえているのか分からなくて、自分の話をするのが怖い。それに、いつも世間の流れから少しズレたことばかり考えているので、どうせ話したところで伝わらないなどと傲慢にも決めつけて黙りこくっていたら、ふと気づけば孤独だった。
誰にも私の存在や考えを伝えなかったらそれは死んでいるのと同じではないか。ある日そう気づいて、何の芸術の手立ても持たない私が、人と繋がっていくためにできることを考えたら、それは文章を書くことだった。
大多数の人に読んでもらおうなんて大それたことは思っていなくて、自分にとって大切な人たちと繋がっているために、自分を開示するために、日々考えたこと・感じたことをすみずみまで血液の通った文章で紡ぎたい。
すみずみまで血液の通った文章は生きて人格を持つ。どんなにつまらない話だろうが、敬意を持つに値するものになる。血液の通った文章は「ほんとうに、心から」思ったことを書かなければ紡げない。
「今年は卯年ですから、ウサギのように跳躍の一年にしたいですね。」こんな文章は時空間を仕方なく埋めるための文様にすぎない。
ネットで検索して出てくる定型文の時候の挨拶ではなく、ほんとうに私が感じた季節のことを書きたい。
血液の通った文章を紡いでいくためには、(これは生涯かけても難しいことだけれど)言葉になる前の、感じとった「未分別の何か」を、極限までそのまま表すために、ぴったり馴染む言葉を選びとる必要がある。そのためには星の数ほどある語彙を拾い集め、感じ、考え続け、とやっていくしかないと思っている。