其を寿ぎ歌う

退屈な仕事の最中、携帯を盗み見ながら、新元号の発表を待っていた。

「令和」

私はそっと私の中の蜷川幸雄(気難しい部分)の顔色を伺う。彼は黙っていたけど意外にも満足気で、それに何よりもほっとした。

元号が変わったからといって私の生活は何一つ変わることはないが、それでも新しいものは清潔で嬉しい。ふと、音楽の授業で習った「おおひばり」というメンデルスゾーンの唱歌が頭に浮かんで再生された。

おおひばり 高くまた かろく何をか歌う
天の恵み 地の栄
其を称えて歌い 其を寿ぎ歌う

イベントごとなどに浮かれる性分ではないはずなんだけど、今日は浮かれて歌いたい。新しい時代に天の恵みが降り注ぎ、そして平和に栄えるように。

「初春の令月にして 気淑く風和ぎ」
こんなふうに、みんなが毎日の中で少し足を止めて、花鳥風月に心動かすことができる、たおやかな時代になりますように。

2019.04.09

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