17年の真相

小学二年生のとき、私のクラスでは空前のオカルトブームだった。友達の中には霊の玉(?)なるものが見えるという子がいて、いつもそれを拾って(?)は掌で空をこねていたし、私も、周りの子も、その子の言うことを本気で信じていて、その子から霊の玉を貰って同じく空をこねていた。ものごころ取得段階の集団催眠は恐ろしい。
ある日、友達の一人が、「家に代々伝わっている呪文が家のある部屋から見つかった」とこっそり打ち明けてきた。その子の祖父曰く、霊に襲われるなどの有事の際に有効なのだそうだ。
「一家に代々伝わる呪文」この魅惑的なワードにオカルト少女たちは色めきたち、私たちにも教えてほしいと懇願した。私たちの必死の頼みに、絶対秘密だよ、と勿体ぶりながら渡してもらった紙には
「オンカーカーカービサンマーエーソワカ」
と書いてあった。私たちはいざというときに咄嗟に言えるように何度も読み上げて練習した。

人間は声に出して読み上げたものは記憶しやすいというけれど、たしかに25歳になるまでこの謎めいた呪文を忘れていない。ふと、気になってこの呪文を検索してみると、オンカーまで入力しただけでその後の言葉がサジェストされて驚く。
調べるとそれは、「類まれな尊いお地蔵さま」という意味のサンスクリット語 "Om hahaha vismaye svaha "
ということが簡単に分かった。呆気なく正体が分かり、しかもかなりメジャーなものであったことにガッカリすると共に、古代インドから海を渡り、時を経て21世紀の群馬の山中にも根付いている地蔵信仰に思いを馳せた。

2019.11.09

いいなと思ったら応援しよう!