春雷

雨もややぬるくなってきた春の夕方。なるい仕事を騙しだまし片付けていると、突然、久しく忘れていた懐かしい轟音。熱帯夜に飲む氷水みたいにしんと身体に染みわたる、その音のなんと爽やかなこと。頭の芯がキンと冷えた気がした。

夏の豪雨の中で聞くのは暴力的で恐ろしくて嫌いなのに、春一番のそれは、始まりを告げる福音みたいで喜ばしい気がするから面白い。

調べると春雷は、冬眠していた地中の虫たちを目覚めさせる「虫出しの雷」とも呼ぶらしい。「私、虫かよ…」思ったけど、同時にその野性を誇らしくも思った。

2019.04.09

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