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ヴィレッジヴァンガード密航者だった俺が、ヴィレッジヴァンガードに自分の商品を置けるようになるまで

ヴィレッジヴァンガードの思い出。

18歳くらいの頃に知り、御茶ノ水店が近かったので通ってた。

当時の自分はsyrup16gとかブルーハーツのマーシーのソロ曲の『さよならビリー・ザ・キッド』といった、ちょっと暗いものが好きな時期だったので、そういったものに出会うのにヴィレッジヴァンガードは最適だったと思う。

御茶ノ水店で買った大槻ケンヂの『グミ・チョコレート・パイン』が面白過ぎて、すぐ読み終わってしまい、その日の内(確か御茶ノ水店は深夜まで営業していた)に続編を買いに行ったのを覚えている。

他にもちょっとアブない漫画なんかもここで買った。頭蓋骨に穴をあけて特殊能力を開発する『ホムンクルス』とか、明らかにドラッグ描写の『ウルトラヘブン』とか。クスリやらに一切興味はないけどなぜか買っていた。今思えばそんなに面白いマンガではなかった気がするな〜(失礼!)。

書いてて思い出した。『TOKYO NOBODY』という、東京の繁華街から人がいなくなった瞬間を写した写真集も買ったわ!買ってから一度も開いていないけど。エロ本と一緒に棚の奥にしまっていた。!なんで買ったんだ?多分だけど、写真集(not エロ)を買うという行為をしたかっただけだと思うな!

福満しげゆきもここで知った。当時は『僕の小規模な失敗』が出たばかりで今ほど有名ではなかった気がする。主人公が人目を避け過ぎて最終的に大学(?)の裏階段的なところでご飯を食べたり、めちゃくちゃバカな学校にいるのに「バカな学校にいる自分」ということに悩んでいたのに妙に共感したのを覚えている。俺はバカな大学に通っていたので(そして一切馴染めず辞めている)。

マンガの内容は微かな記憶しかないので、もしかしたら間違っているかもしれない。

中野のはなまるうどんで『僕の小規模な失敗』を読んでいたら、友人の中里に「また、お前はそんな暗い本を買って!」と呆れられた。

その流れがsyrup16gの歌詞みたいな出来事で嬉しかったのを覚えている。syrup16gの歌詞の中に『バイトの面接で君は暗いのかって♪精一杯明るくしてるつもりですが♪』というのがあるんですよ。

当時からヴィレッジヴァンガードは「サブカル(笑)」と揶揄されていたと思う。俺はそれも知りつつ、こそこそヴィレッジヴァンガードに通っていた。いい出会いがあったから。

俺は密航者のような気分でヴィレッジヴァンガードに通っていたのだ。



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その後、俺はとあるおもちゃメーカーに就職するんだけど、新商品の企画書には必ず「ヴィレッジヴァンガード層に響くと思う!」といった文言を書き添えていた。

どんなにいい商品・企画であっても知られないと意味がない。俺が勤めていたメーカーは宣伝を打てる規模の会社ではなかったので、なにか新しいことをやって売ろうとするのであれば、口コミもしくはSNSに頼るしかないと考えていた。

「ヴィレッジヴァンガードに通っている人なら、俺の企画を気に入るはず。そして、ヴィレッジヴァンガードにいる人はインターネットをやっているのでSNSとかで書いてくれるはず……」みたいな気持ちでいた。

初担当商品の企画が通った。ドラえもんのフィギュアなのだがフツーのかわいいドラえもんではなく、ひみつ道具の失敗でネズミと合体してしまったドラえもんや、うそつき鏡に映った八頭身のドラえもんといった“ドラえもん好きなら分かる名珍場面のフィギュア”である。

まあまあの冒険商品だ。俺自身はめちゃくちゃ気に入っていたのだが、いかんせん“裏”スタンダードな商品であるため、営業さん的にも扱いづらかったよう。自社の営業販路とはミスマッチというのもなんとなく分かっていた。

でも、売れると思ってた、やりたかった企画だった。

営業さんに「ヴィレッジヴァンガードなら絶対売れるんで、営業かけてもらえませんか?」と頼んでみた。たしか掛け合ってくれたのだけど「ヴィレッジヴァンガードはさ〜、各々の店舗自身で仕入れを行っているんだよ。だからあんまり営業を受け付けてくれないんだよね」とのことだった。だからあんな変な商品しか置いてないのか

営業さんのセリフに俺は愕然とした。「絶対ヴィレッジヴァンガードなら売れるのに……ここが着火点となって話題になるかもしれないのに……」

どうしてもヴィレッジヴァンガードに俺の商品を置いて欲しかったので、発売前の「こういう商品が出ます!」という資料をヴィレッジヴァンガードに持っていった。

ただ会社に無断で行った行為だったので直前でビビってしまい、結局ヴィレッジヴァンガード店内にあるちょっとした机にその資料を置き忘れてきた。置いたのではない、置き忘れたのだ。置き忘れただけだからルールは破っていない……。

商品発売後、とある有名インフルエンサーが取り上げてくれたこともあり社内のドラえもん商品としては異例の売り上げを上げたと聞いた。企画会議でマネージャーが「定番キャラクターでも視点を変えればこれだけ売れるんだと感じました。企画部はこういうのをどんどん作っていきましょう」と発言したのにめちゃくちゃ泣きそうになったのを覚えている。「ほれ見たことか!」って気持ちと、他人に認められたのが嬉しくてさ〜〜。

その商品は今でもヴィレッジヴァンガードでも見かける商品である。

俺がチラシを置き忘れたお店にも置いてあった。あのチラシが功を奏したのか分からないが、嬉しくてそこで自分の商品を買ってしまった。

そのヴィレッジヴァンガードもすでに潰れている。御茶ノ水店も潰れたようだ。

今の若い人にとってはただのモールの中の雑貨屋という立ち位置らしいが、俺はヴィレッジヴァンガードに通っていたし、頼っていたし、勝手に戦友だとも思ってる(企画書にずっと「ヴィレッジヴァンガード層にウケる!」と書き続けていたので。

なんかヴィレッジヴァンガードが話題になっていたのでつぶやこうとしたら、思わず長文となってしまったのでnoteに公開しました。

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