ポン煎餅屋さん
ポン煎餅屋さんが公園に時々きていた。リアカーにドラム缶を横に倒して乗せてあった。
前方の引き手側のドラム缶の蓋の下の方に薪をくべるための焚き口があり、ドラム缶の蓋の上には扇型の上下にうごく扇形ハンドルがあり、鋭角の部分あたりの上下に凹面と凸面の直径10センチぐらいの円盤が支柱でハンドルに溶接してあり、挟むとぴったりと重なり合うようにできていた。
ハンドルを下ろすと挟み込み圧力をくわえる仕組みであった。
円柱形の焼き釜の圧力をかけて、蓋を一気に開けて、つぶつぶのポン菓子を焼くのではなく、一枚一枚、手で焼くのである。
1枚5円であったが、家からお米を持っていくと、1枚2円でやいてもらえた。いつもお米を持って行って、焼いてもらっていた。1合ぐらいのお米をビニル袋にいれて、おじさんに渡すと「塩それとも甘」ときかれた。名前と焼き上がり時間が鉛筆で書かれた小さな紙切れを渡されて、「今から焼くからあとで来てね」順番待ちの生米の袋と焼き上がりのメモが台におおくおいてあり、しばらく焼く様子を眺めていた。
まず、凹面の皿に大匙1杯の生米を均等になるように、おいてならし、味付けは、「甘」は味醂、「塩」は塩水を大匙1杯かけて、ハンドルをグイッと力を入れて、降し、数秒した後に、力をスッと抜いて、焼き型を広げると、パフッと湯気の出ている丸いポン煎餅ができている。バリをこそげ落として、一枚焼き上がり。
こどもながら、手間がかかるな、1合焼き上げるのは大変だと思った。手際良い作業を見ていると、足元にはバリ目当ての鳩や雀が群がっていた。時間がかかるので「おねがいしまーす」といって、公園の友達と遊んで焼き上がりまで待った。時間が来て、受け取りに行くと、「あ、なんとか君ね、あともうすこしで全部焼けるからちょっと待っててね。」といわれ、また手慣れた作業に見惚れてしまい。ずっと見入ってしまっていた。「あともうすこしでおわるよ。焼きたてのたべる?」といって、あつあつのを1枚もらって、その場で食べる。おいしい。
「できたよ。はい。代金をはらって、大きな茶色の紙袋いっぱいのほか他のポン煎餅を抱えて、家に帰った。暖かい気分になった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?