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【中学校を訪ねて #1】椎茸の駒打ち

北アルプスを見渡す山間地にある中学校では、毎年、生徒たちが地元の林業を行っている「森林塾」の皆さんから指導を頂きながら、椎茸の駒打ちを行い、椎茸の販売を行っています。今年も新学期早々、全校生徒で椎茸の駒打ちを行いました。
駒打ちについて、森林塾さんにお話をお伺いしてきました。

先輩から後輩へのバトン

中学校では長年、椎茸の栽培を行ってきています。駒打ちをしてから、椎茸が芽を出すまで約1年半。今年の春に打った駒からは、来年の秋にならないと椎茸が出てきません。
ですので、毎年先輩方が駒打ちしたほだ木を受け継いで、後輩達が椎茸を収穫し販売しています。
いつしか、これが先輩から後輩へのバトンと呼ばれるようになり、脈々と受け継がれています。

中学校が行う椎茸の駒打ちの歴史

中学校で行う椎茸の栽培の歴史はかなり長く、森林塾さんからお話をお伺いすると、なんと昭和40年代の頃からやっていたそうです。当初は小学校で行っていたそうですが、それが平成に入ると小学校から中学校へと受け継がれ、以来中学校で育ててきているそうです。
人数が多かった頃は150本近い原木の駒打ちをしていたようですが、令和になった今では生徒数の減少もあり、この数年は120本程の原木の駒打ちを行っているようです。
原木を置いておく場所も、時代の変遷とともに移動し、工夫しながら日当たりと湿度を考慮された場所が選ばれているそうです。

椎茸の栽培を始めた当初は森林組合さんが指導に当たっていたそうですが、それを平成26年からは森林塾さんが受け継ぎ、今も毎年学校へ総出でお越しくだって指導にあたってくださっています。

椎茸を栽培する理由・山を身近に感じる

椎茸の原木は聖山という地域の山の中腹から切り出しているそうです。また、隣村からも原木を切り出し運んでくださっているとのことでした。
椎茸は林産品のため、林業との親和性が高く、山の保全にもつながります。

「子ども達に山をもっと身近に感じて欲しい」という思いから、子ども達にも取り掛かりやすい、椎茸の栽培を通して、林業者と学校の子ども達が繋がりを持つようになったようです。
学校が続く限り、椎茸の栽培は続けて欲しいと森林塾の皆さんはおっしゃっていました。椎茸を通して山を知ることができる、山とのつながりを持ち続けて欲しい、と。

原木は、冬から春の初めの間伐材が利用され、水分をふんだんに含んでいる限られた時期に切り出す必要があり、時には学校の先生方も手伝い、切り出し作業にあたってくださっていることが分かりました。

切った材の株からはまた芽吹く。椎茸の原木はまだ細い内に切り出すので、山の再生につながる。人の手を入れた山は人の手で管理をする必要がある。椎茸の栽培をすることは、山の更新にもつながっているのだよ、と丁寧に教えてくださりました。
また、適度に空間ができることで、環境保全にもつながり、鳥獣被害にも有効で、健康な山を維持し続けることにもなります。

椎茸の栽培は、自然と人間の共生、そして自然循環にもつながっている奥の深い取り組みだと改めて感じました。

森林塾の皆さんに中学生達が行う椎茸の栽培の魅力についてお伺いしたところ、「おいしい椎茸が収穫できる!」と皆さん迷わず即答されていました。
確かに、中学校の椎茸は肉厚で風味もしっかりとしていて弾力もあります。

椎茸販売の楽しみ

一昨年に森林塾さんと共に駒打ちした椎茸の収穫が始まっており、週に3日(月・水・金)と中学生達が販売に回っています。
学校で販売している時もあれば、学校近くの施設で出張販売している時もあり、いつの時も早く行かないと完売になります。特に、何かの集まりで人が多い時などは買うことができずに残念がる方もいらっしゃいます。
特に、今年は豊作のようで、連日生徒達が収穫と袋詰めをしてはかご一杯販売しています。
天候にも恵まれたようで、立派な椎茸が多く収穫できている様子です。
口コミでも椎茸人気が増している気配です。

生徒達は活き活きと販売にあたっています。
ここまでの道のりで、森林塾の皆さん、生徒達が授業を受けている間にも椎茸を気にかけ世話をしてくださっている庁務員さん、生徒達をサポートしてくださる先生方のお力添えがあってのことだと思います。

生徒達も、販売を通して地域の方との交流が増えることを楽しみにしていたり、学校界隈まで来られない方への販売(お届け)方法や、おいしい椎茸レシピをつけて販売してみるなど、様々な案を出しあいながら日々椎茸を栽培し収穫にあたっているようです。
今は、お互いに助け合いながら椎茸の様子を毎日確認しているとのことでした。
生徒達の「買ってくれてありがとう~」という笑顔と、「完売しました~」という時の嬉しそうな表情は見ているだけで応援したくなります。子ども達の声が響くのは活気をもたらし、元気をもらいます。

なお、椎茸の収益金は、生徒会費の一部として補填され、秋に行う文化祭など、生徒達が使途を協議して活用されているそうです。

中学校の椎茸。一袋200円で販売。

森林塾とは

大岡の山を活かしていく。林業の後継者を育てていく。
これらの観点から意見が合致した初期メンバー6名で発足し、大岡の山を守り育て保全していくことに活動主体をおいていらっしゃる林業従事者の方々からなる団体です。
そして団体発足当初より、小学校・中学校とも関りをもってくださっており、小学校では緑の少年団活動、中学校では椎茸の栽培を通して、山の大切さや素晴らしさを伝承くださっています。

森林塾のみなさん、ありがとうございます。

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