今年度スタート「大岡を知る学習」の真髄を聞く 山名中学校長
今年度、校長として大岡中学校に着任されたばかりの山名校長先生。
大岡中学校の良さは、先生方も子ども達も距離が近いことだと活き活きと話されていました。
毎日ほぼすべての先生と生徒が会話を交わすことができるだけでなく、一歩引いて生徒同士あるいは生徒と先生方のやり取りも俯瞰して見ることがき、言葉だけでなく表情や普段とは違う様子などからも今の状態を知ることができると言います。
小規模校の良さは、生徒の一人ひとりが活躍できる場があること。
得意ではないものも「やってみよう」と生徒同士や職員で励まし合ってできるのが大岡中学校。
自己肯定感を高めあっていくことのできる学校づくりを目指していかれています。
先生方も、校務分掌が減るものではないものの、良い意味で言えば大規模校よりチャレンジできる。大変だけれど、それを学校の強みにもでき、大変だからこそ生れるものがあることを目指されてもいます。
「大岡を知る学習」への思い
大岡中学校の総合的な学習の時間の名前は、「大岡を知る学習」。昨年度までは、大岡の場所をテーマにした学習を展開し「全校遠足」を行っていました。今年度からは「場所」から「もの」へと対象を変え「食」をテーマに「大岡を知る学習」を行っています。
「大岡を知る学習」には、地域学習の一つとして、地域を知ることはもちろんのこと、大岡から日本を見て、日本から世界を見て欲しいという思いが込められています。大岡を理解するだけに留まらない、大岡は日本そして世界を知るための「窓」なのです。
生きた学びを中学から高校へ
日本や世界の課題を大岡の地から見て知ることは、中学の間に完結できることではないかもしれません。大岡を知ることで、高校でも生きる学びに繋がるような経験になればと構想されています。
大岡中学校は卒業した後に全国へと仲間が巣立っていきます。どこへ行っても生きた学びは深く残っていき、高校で更に発展されていくと描かれ、「大岡を知る学習」がスタートしました。
自分なりに課題を見つけ、課題解決の方針を探し、課題解決への取り組みをしていき、活動や学習を振り返り、そのサイクルを繰り返していく。振り返ることで、多くの気づきを得て物事の本質を捉える視座を養って欲しい。
生徒の言語活動の充実
書くこと・話すこと・読むこと・聞くこと、これらを通じて、「それってどういうこと?」「そうするとどうなるの?」をいう疑問を言葉にして表現することで更なる探究につながり、学びを先へと推し進めていきます。生徒達の対話や表現を年間通して定期的にやっていく予定です。
また、先生もしかりで、先生方も生徒達と共に学び進めていくことになります。「あの先生は○○と言っていただけどう思う?」というような疑問提起も繰り返していかれるそうです。
今年度のテーマ「食」にかける思い
大岡の豊かな食文化を素材として「食」に焦点をあてた探究的な学びを実践することで様々な気づきが生まれ、食から派生して、生活に溶け込む地域ならではの文化や暮らしの営みへと思考と興味が伝播し、発展性のある総合的な学習が展開できるのではないでしょうか。
山間地が培った食と暮らしの文化に触れる
大岡には、様々な歴史や伝統があり、それが今も地域の人々の生活に根ざしています。
今では少なくなりましたが、味噌、豆腐、やしょうま、おやき、干し柿、餅つきなどは、昔はどの家庭でも行っていました。大岡では今でもご家庭で作っている様子が見られ、そこにコミュニティがある様子も見られます。
他にも、ふきやタラの芽、わらびなどの山菜、よもぎなどの野草を食べる習慣、西山大豆や花豆などの豆類を郷土料理に取り入れること、イノシシや鹿などのジビエを食することなど、山間地にある大岡ならではの多様な食文化があります。
さらに山間地に位置しながら水に恵まれ、「大岡三千石」の言葉に代表されるように、米作りが盛んなことも大岡の特色です。
日常に溶け込む食だからこその学びの連鎖
栄養士の傘木先生の記事にもあるように、子どもたちは食べることが大好きですし、給食をはじめ日々食べることで様々な発見をしています。元気で素直な生徒たちですので、様々な事象に出会う中で「なぜ?」「どうして?」が生まれ、「もっと知りたい」「もっとやってみたい」「やってみたらこんなことがわかった」「次はこんなことをしてみたい」という学びの連鎖が生まれる仕掛けが食にはあります。
協働する、という気づき
大岡には、みんなで支え合って助け合って一つのことを成し遂げる文化が色濃く残っていると思います。
農村農耕文化が脈々と受け継いできた人と人とのつながりだと感じます。
その姿を見て、全校14人という小規模な大岡中学校の子どもたちにも「協力する」ことの大切さや「協働する」ことで生み出される楽しさや素晴らしさを学び、感じてほしいと願っています。
一人ひとりの学びへの発展
探究的な学習を重ねていく中で「自分らしい学び」を見つけて欲しい。「食」は一つの土台であり、一つの窓口。ここから子どもたちの学びがどんな方向に進んでいくのかが楽しみです。
年度末に生み出される目指す成果とは!?
1年間の総まとめとして、学習の成果発表の機会を設ける予定だそうです。
まだ具体的にはどのように、というのは決まっていないものの、生徒達がやってきたことや、今後大岡の方々と一緒にやってみたいものなど、成果と振り返りを行い、来年度につなげていくそうです。
先生の探究活動
「大岡を知る学習」では、先生は当事者でもあり、生徒達の伴走者でもあります。見通しを持ち、時には突っ込んだ質問もできる、やり取りを増やして欲しい。校長が言ったからやるのではなく、先生方も疑問を持ち、「どうしたらいいの?」を繰り返して欲しいと校長先生は生徒達にも先生方にも思いをにじませていました。
そのためにも、先生方と校長先生の対話を今後は増やしていき、生徒に還元していく取り組みもしていきます。
「大岡を知る学習」の加速
大岡の恵まれた自然を生かして、身体全体を使った、五感を総動員するような学習を目指し、地域の人や自然とつながっていくようなダイナミックな学びになっていくことを構想中です。
生徒達も先生方も地域の皆さんも一緒に学んでいく、そんな「大岡を知る」「大岡で知る」「大岡から学ぶ」学習を創り上げていきます。
これからの「大岡を知る学習」の進化と深化に興味と期待が膨らみます。
山名校長と生徒と(山名校長の寄稿)
校長室には生徒がよく来て様々な話をしていきます。
ある日、校長室で子どもたちと「これからの大岡中学校」について話していると「大岡らしい、ここでしかできない学習や活動がしたい」「自分が興味を持ったことをずっと追究するような学習をしてみたい」という声が聞かれました。何か、これからの学習の進化や深化に期待している様子でした。「みんなで学びを作っていくんだよ」と声をかけると、「校長先生、また語りましょう」といって笑顔で校長室を出て行きました。「大岡を知る学習」のこれからを考えていくことで、生徒も先生方も「自分たちの学びを創っていく」「大岡中学校の学びをデザインしていく」そんな貴重な営みになっていくと素敵だなあと思っています。
インタビュー後記
「大岡を知る学習」は純粋に「知る」にフォーカスしている学習ではなく、その先の個々人の興味関心・課題設定・課題解決までのアウトプットを目指しているようにお伺いしていて感じました。
まだ始まったばかり。上手くいかないこともあるようですが、一つ一つの活動と取り組みが、生徒達にとって「学ぶことは楽しい!」と言えるような学習へと昇っていくことを期待し見守っていきます。
1年間を通したプログラムです。ここから各専門教科への興味関心へと広がると「大岡を知る学習」が日本そして世界への入口としての「窓」になるのかなと思いを巡らせました。先生全員で一丸となって本気で取り組んでいくことになるのだろうと期待しています。
余談ですが、校庭脇の空き地の「開墾」をスタートしたとか・・・
そんなことを始めた童心溢れる先生は一体どなたなのでしょう。フフフ♪
学びの種まきがどんな芽を出すか、これから楽しみです。
先生も楽しむからこそ、生徒達も楽しめる。そんな一面があることもワクワクします。学びってそういうことだと思います。
しかし、学校へ行く度「腰が痛い」と言う先生、「筋肉痛になった」という生徒、増殖中です(笑)。開墾の苦労は人生に幾度とない体験です。先生も生徒もガンバレ。
次のバトン
山名校長からご紹介いただく次のインタビューバトンは、!!!
乞うご期待。