わたしがわたしに還る場所……年配女性にとっての少女まんが館
先日来館された方(Yさん:「1966年、当時小3の「週マ」愛読者の体験談」参照)と、その後、メールのやりとりをいたしました。
少女まんが館でのひとつの出来事として、一部を抜粋してご報告いたします。
(Yさんに公開のご快諾をいただきましたので……どうもありがとうございます!)
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◎2021年5月29日 19:18
Yさん→大井
今日は本当にお世話になりました。
長い時間の滞在になり、お気遣いいただいたことお礼申し上げます。
美味しいお紅茶もごちそうさまでした。
今、武蔵増戸駅で電車に乗りました。
少女まんが館で、記憶の底から思い出したことがたくさんあり、
私の「失われた時」を掘り起こしたような気がします。
半世紀以上の時を経て、
また同じ作品に巡り会えるとは思いませんでした。
できるなら、
泊まり込んで夜明かしして本を探したいくらい素晴らしい蔵書だと思います。
私の「好きなもの」を思い出すことができ、嬉しく思いました。
山の端に夕陽が沈むのを、久しぶりに見ました。
いい一日になりましたこと、重ねてお礼申し上げます。
◎2021年5月31日 0:53
大井→Yさん
温かい素敵なメールをありがとうございます。
女ま館でよい一日を過ごされたとのこと、
わたしのほうこそ、御礼申し上げます。
お話もほんとうに楽しかったです。
女ま館は、かつて少女*(女の子)だったわたしが、
「わたしがわたしに還る場所」
(妻・母・嫁・姑・祖母でなく)
(あるいはOL・キャリアウーマンでなく)
(つまり、女性であるがゆえに冠される、いろいろな呼び名やくくりではなく)
……という想いが、わたしにはございまして、
そのように過ごされる方がいらっしゃることは、
この上ない喜びなんでございます。
将来的に、宿泊できるようにすることを真剣に考えてみますね。
(これまで、夢、としていましたが、現実的にどうしたらよいか、方法をさぐってみます)
ともあれ、少なくとも、
4〜10月の毎週土曜日午後は、
定開日としてずっと続けていくつもりですので、
また、お気軽に遊びに来てください。
*少女(女の子):8歳〜18歳前後ぐらいまでの、成人前の女性。小学校中学年から高校生ぐらいまで。親(保護者)の庇護のもとに、親とともに暮らしている女の子。
◎2021年6月2日 1:21
Yさん→大井
「わたしがわたしに還る場所」
素敵な言葉ですね。
確かに女ま館での私は、妻でも母でもなく、
遠い昔、
心の赴くままに好きな本を読んでいた女の子のままでした。
そんな日々があったことをずっと忘れていました。
子ども時代の幸せを思い出し、
追体験できたことで、
とても満ち足りた気分に浸ることができました。
この話を友人にすると、なぜかみんな共感してくれます。
きっと、
思い出の何冊かの本が心のどこかに大事にしまってあるからでしょうね。
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Yさんが女ま館からの帰り際に、
にこやかな笑顔でいたことが、
大井にとっては、ほんとうにうれしいことでした。
いやはや、女ま館を続けていてよかった。
女ま館が存在することができてよかった。
さまざまな形で少女まんが館にご協力してくださったみなさまに、
ありがとうございますだぁー(二宮青太*風)、と申し上げます。
*二宮青太:『摩利と新吾ーヴェッテンベルク・バンカラゲン』(木原敏江、1977〜1984年まで『LaLa』掲載、白泉社)に登場する人物。お日さまの匂いのする、天真爛漫な青年。「まりしん」は、わたしにとっては、大人になってから、なぜか定期的に読みたくなる作品。旧制高等学校を舞台にした、古き良き青春大河というか。最近覚えた言葉でいうと、ブロマンス(テーマが、ですね)……たぶん、まさに。魅惑的なキャラクターがてんこ盛りの、少女まんがの名作。
追記:(ネタバレ注意)
先日、竹宮恵子先生の『地球へ…』(『マンガ少年』1977〜1980年掲載、朝日ソノラマ)を再び読み返して、セキ・レイ・シロエの存在が、ほぼリアルタイム(1980年アニメ化の折に、再度発売された総集編ムック本……たぶん)で読んでいたときには感じなかった重さで、心に響いてきました。
14歳までのいっさいの記憶を剥奪されたことが許せず、問題行動をおこすセキ・レイ・シロエ。その世界ではアタリマエのことを受け入れず、15歳で逝ったセキ・レイ・シロエ。
少女まんがは大人になったら卒業するものよ、
夢みる頃を過ぎても、少女まんがなんて読んでいちゃだめよ、
女の子は大人になって、恋をして妻となり、母となるのがしあわせなのよ、
女の子だったことは忘れるのよ……
そんな70年代から長きにわたり、わたしの中に巣くっていた社会常識のメタファーだったんかい! と(メタファー:ほほほ、むずかしい言葉を使ってみました)。いまやっと気がつきました(シロエが少年だったので、気づかんかった。ジェンダーのことも、2年前にやっと気がついて、独学中。おれっち、遅すぎるってば、よ)。
そうか、わたしは、生き残ったセキ・レイ・シロエだったりするのかしら、と不遜にも思うのでした。
『地球へ…』、最初に読んだとき、ジョミーとなきネズミが出会ったシーンが衝撃的。竹宮先生、天才……と思いました。
*次回(っていつになるかは未定ですけど)は、「年配男性にとっての少女まんが館」について、考察する予定です。
(了)