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女ま館日誌20221008  のがみけい「星がひとつ」 60年代こわいまんが「猿少女」「へび少女」「のろいの顔がチチチとまた呼ぶ」

今日10月8日(土)は少女まんが館の一般公開日。お客さまがたの発見ものがたりなどを。

*トップ画像は1973〜1974年の『りぼん』。上段には同時期の『週刊マーガレット』が並んでいます(「ベルサイユのばら」「エースをねらえ!」「銀河荘なの!」などが連載されていた)。玄関入ってまっすぐ、階段踊り場の本棚にございます*

60代姉妹で来館されたおひとり(1960年生まれ)は、ジェフ・ベックをモデルにした「星がひとつ」(のがみけい)を探し出して読むことができた、と喜んでおられました。『りぼん』1973年1〜2月号に前後編で発表された作品です。

『りぼん』1973年1月号(集英社)

そのかたは、18歳でジェフ・ベックのファンになり、子どもの頃に読んで印象深く残っていた少女まんがにジェフ・ベックのような話があったはず……と長年探していたのだそうです。ずっとずっと探していて、ネット検索してもわからず、やっと見つけた、読めた、と。たぶん、まちがいない、これだ、と。

つまり、12〜13歳のときにジェフ・ベックを少女まんが「星がひとつ」を通して、なんとなく知っていた、ということになりますね。

70年代前半、洋楽(ロック)ファンって少数派だったと思われますが、少女まんが家さんには洋楽ファンが少なからずいらっしゃった。洋楽に疎いわたしでも名前だけは知っているジェフ・ベック。洋楽(ロック)と少女まんがって、70年代前半は近しい関係だったかもしれません。デビット・ボウイやクィーンがモデルのキャラクターは70年代少女まんがの世界にそれなりにあったりしますし……(ほかのロックミュージュシャンもかなりいるかもしれないけれど、なにせ、洋楽疎しでよくわからず)

60代姉妹のもうおひとり(1959年生まれ)は「猿少女」が読みたい、と。怖くて怖くて怖いんだけど、もう一度読みたい、と。「へび少女」も読みたいけど、楳図先生だったか古賀新一さんだったか、よく覚えていないとのこと。あと、肩に顔ができて、そこらじゅう顔だらけになるシーンがある……怖くて怖くてトラウマ……でも、もういちど読みたい、と。

はい、「猿少女」古賀新一『週刊マーガレット』1967年52号~1968年6号掲載。女ま館にございました。

『週刊マーガレット』1967年52号


「へび少女」楳図かずお『週刊少女フレンド』1966年11号~25号掲載。女ま館にございます。

『週刊少女フレンド』1966年11号。若き日のエリザベス女王でしょうか。


顔だらけシーンが怖すぎてトラウマ……はい、たぶん、古賀新一先生の『のろいの顔がチチチとまた呼ぶ』でしょう。『週刊マーガレット』1967年37号~43号掲載。女ま館にございます。

『週刊マーガレット』1967年37号。ん? 表紙にはタイトルの最後に「?」がついてますね。

「子どもの頃は、1日10円のお小遣いもらっていて、それを1週間貯めて、50円、60円になるから、『マーガレット』を買っていたのかも。自分ではもう少し大きかったと思っていたけど、小学1年生から買っていたみたいですね。うーん、まんがばっかり読んでいたから、勉強ができなかったのか(笑)。お友達が『週刊少女フレンド』や『少女コミック』を買っていたのを、お互いに交換して、よく読んでましたねぇ。もうっほんと懐かしいっっ」と、うれしそうでした。わたしもうれしいです〜。


1967〜1968年の『週刊マーガレット』。「猿少女」「のろいの顔がチチチとまた呼ぶ」掲載。1階西側本棚にございます。


「へび少女」掲載の『週刊少女フレンド』1966年11号〜25号。2階の水色本棚に平積みになっています。

楳図かずお、古賀新一両先生は、のちに「漂流教室」(『週刊少年サンデー』)、「エコエコアザラク」(『週刊少年チャンピオン』)などでホラーまんがの大家になられていきますが、1960年代後半は『週刊少女フレンド』『週刊マーガレット』で少女たちにトラウマ級のホラーを届けていた看板作家さんでした。歯医者さんや骨継ぎ(あれ?死語? 整骨院っていえばわかる?)や床屋さんやお医者さんの待合室で、お姉ちゃんや妹の部屋でうっかり少女まんが雑誌を読んでしまった少年たちも、トラウマを刻印されたことでしょう。

貸本→少女まんが→少年・青年まんが→世間さま(男性社会)が認め大家となる……という図式があるわけです。ちょっとくやしいです。まず、少女まんがの世界で大人気を博したんです。楳図先生、古賀先生は。少女たちに大受けしたわけです。1960年代後半のこと。あ、楳図先生は、70年代に「洗礼」を『少女コミック』で連載されておりますけれど。

(現在、「猿少女」「へび少女」「のろいの顔がチチチとまた呼ぶ」いずれもインターネットから読めたり、買ったりできるようです。それらの作品が世に出た初出誌が、1960年代少女まんが雑誌なのです)


さて、話は戻って、姉妹のおふたりはご自身の娘さんに「もえぎ」「ききょう」と名づけようと思ったとか。おひとりは実際「もえぎ」と名づけ、もうおひとりは姓との相性がわるいので残念ながらやめたとのこと。のがみけい「風よ雲」(『りぼん』1973年6月号~1974年2月号掲載)(りぼんマスコットコミックスに前編・後編の2冊あり、1975年発行 )の影響だとか。おふたりとも、この作品がとてもとても好きだったそうです。

「風よ雲」は、戦国時代を背景に、武田信玄の5男・信盛と忍びの里のもえぎとの純愛物語であり、大河ドラマ的でもあり。コミックスには「異色力作」とあります。アツい作品です!

当時、日本の歴史ものは「異色」だったんですね。『週刊マーガレット』で「ベルサイユのばら」が爆発的人気だった頃です。その「ベルばら」ですら、連載前は編集者に難色を示されていた*。とはいえ、『別冊少女コミック』では「ポーの一族」が掲載されていました。エリートサラリーマンの編集サイドと、戦後生まれの才気あふれた若い女性作家サイドが乖離してて大変だった(と思う)けれど(女性の社会進出の厳しい現場というか)、読者的には……なんという贅沢な時代!!

*「歴史はあくまで男の世界、女こどもにはウケない」(当時の男性編集者のことば)

NHK「アナザーストーリズ 「“ベルサイユのばら”オスカルになりたかった私たち」オスカル誕生秘話:2022年7月15日放映より

のがみけい先生は、わたし(1961年生まれ)は能のお話を覚えています。「のがみけい」という名前と能面が出てくる……ぐらいしか記憶になくて申し訳ないのですが(でも強烈に覚えている)、少女まんが読みに、「日本」を意識させてくれた稀有な存在かもしれません。


ほかには、高階良子「修学旅行殺人事件」が読みたかったという女性もいらっしゃいました。やはりずっと探していたとか。女ま館にはコミックスあり(もしかしたら、初出誌『なかよしデラックス』もあるかも)。読めてよかった……。


今日も、女ま館はゆるやかに幸せなひとときが流れていきました。


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