子供の頃のコワイ思い出 注意!!気持ちのいい話じゃない!
田舎からの便りによると、幼なじみが病気で入院したという。
彼ももう歳だ。
私の田舎にはわりと大きな池があり、池の中には松の木の茂る小さな島があった。
釣りのポイントがあったため、よく泳いで渡ったものだ。
釣竿を持って泳ぐのは、子供にとって簡単ではなかった。
今では太鼓橋がかかっているという。
その池で入水事件が起きた。
誰が発見したか記憶にないが、子供心に好奇心と恐れの同居した気分で、その友と一緒に見に行った。
死体は堤防から20mばかりのところに浮いていた。
肌は真っ白にふやけた状態で、長い髪が波にゆらゆらと揺れていた。
顔を見たとき、それはもう人間の顔ではなかった。
両目はえぐられ、黒い穴のようにくぼんでいる。
何匹かのカラスが、その死体に群れていたと言う。
何人かの大人が、竹竿で引き寄せようと試みたが、とても20mの先まで届かない。
ところがそのとき、一人の大人が裸になってその死体に向かって泳ぎはじめた。
そして、着衣の端をつかんで岸に引っ張ってきた。
その大人が私の親父だった。(もうとっくの昔に、ガンで他界したが)
家に帰ってから、父に「怖くはないの?」と尋ねた。
父は「人は死んだら魂は天国へ行く。残るのはただの物体だから怖くもなんでもない。自殺は絶対にいけないが、人は必ず死ぬ。魂はもうそこにはいないけど、死者には礼をつくさにゃいかん…」と、このようなことを言った。
その頃、子供だった私には父の言葉の意味がわからなかった。
その夜はさすがに厠に行くのが怖かった。
成人してから確認したことがあるが、父はそのように言ったことは覚えていなかった。
父は死ぬまでクリスチャンだった。