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その昔、志賀高原で熊と出会った
その日は、熊の湯に泊まり、翌朝、志賀山に登った。
下山は、木戸池への道をたどり、ネマガリダケの薮道を下った。
突然に視界が開け、ひょうたん池が目前に広がった。
枯木が白い木肌を水面に映している。
人ひとりいない静寂の木道に、ザックを降ろし大の字に寝転んだ。
雲はゆっくりと流れていた。
しかし、時の流れは止まっているかと思った。
その時だった・・・ガサッという音がした。
その方向を見ると、犬のような動物と目が合った。
なんでこんなところに犬が?・・・と思った瞬間、丸い尻を向けて藪の中に走り込んだ。
ヤバイ!小熊だ。親熊がきっとこの近くにいるはず・・・。
急いで立ち上がり、木戸池の方に向かって急いだ。
親熊に出会うこともなく、難関はすり抜けた。
山で熊に出会ったのは、これで三度目だ。
一回目は奥日光戦場ヶ原で、二度目はカナディアンロッキーの山中でグリズリーに。
距離が離れていた為、熊公も全くこちらを無視していたので大事にはいたらなかった。
もし熊と間近に遭遇したら、「死んだふりをする」との俗説があるが、かえって興味を持って近づいてくるので、論外だそうだ。
熊が近づいてきた場合は、こちらを大きく見せるため石などの高いところに立って、両手を大きく振りながらおだやかに話しかけ、敵意がない事を示すのだそうだが、熊語が話せないのにそんなにうまくいくものかどうか・・・
近づいて来ない場合は、ゆっくりとあとずさりしながら、すばやく離れること。
いろいろと教わったが、結論的には熊のいるところに行かないことが一番いいらしい。
しかし、そのような結論は、あまりにも当たりまえ過ぎて、何かにおびえての逃げの姿勢だと思う。
人は何かを求めて未知のところに行き、新しいものをつかむように出来ている。
さあ、旅に出よう。
ただ、山旅には熊よけ鈴と熊撃退スプレーを忘れないで!
求めよ、さらば与えられん。
尋ねよ、さらば見出さん。
門をたたけ、さらば開かれん。
すべて求むる者は得、たづぬる者は見いだし、
門をたたく者は、開かるるなり。
⇑ 志賀高原大沼池
⇑ 志賀高原木戸池