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絵を依頼するのも疲れたよって話 その3
上の記事の続きです。
【case.3:Cさん 30代 依頼料:20000円】
前回の記事の終わり際に、「イラスト作成者の理不尽が三度私を襲う!!」みたいなことを書きました。
正確には「連続3回ではなく、3人目の理不尽な人」とという意味です。誤解を招く書き方をして申し訳ありませんでした。
Bさんの時にAdobeStockの素材を使って作ったバナーが、結構評判が良かったんですよ。
それを見た裁量権のある人(中小企業なので察してください)が、外部に依頼したイラストを使ったものと勘違いして財布の紐が少しだけ緩みました。
なので、依頼料が20,000円まで使える様になったのですが、これまでとは一転したんですよね。イラストレーターさん達の質が。
データもai形式で納品してくれるし、打ち合わせの際にもこちらの希望に沿って提案をしてくれる。同じキャラの別ポーズ用の差分パーツなども快く作成していただいたりもしました。
そして、なんと言ってもレスポンスが良いのです。
これはAさんとBさんには無かった特徴でした。それでも、全員がそうというわけではなく、レスポンスの良い人が多いという感想ではありますが。
そんなわけで、何人かと問題の無いやりとりをしているうちに、私の中にも生じてしまったんですよね。「油断」という感覚が。
慣れてしまって、そういうやりとりが普通だと思ってしまったんですよね。いや、もしかしたらそれが普通なのかもしれませんけど。
そんな時でした。私がCさんと出会ったのは。
私が最初にCさんに抱いた印象は人当たりが良い人だなというものでした。
それまでのイラストレーターさん達に慣れてしまっていた私は、Cさんも当然の様に問題の無い人だと思っていました。
「好事魔多し」とはよく言ったものです。
いわゆる「当たり」とも言えるイラストレーターさん達を連続で引いたことで、私の警戒心は薄れてしまっていたのです。
打ち合わせ段階まではね、よかったんです。特に問題もなく、後は絵を作成していただくところまではスムーズでした。
ですが、上がって来た絵を見て覚える違和感に、どうもモヤモヤしました。
あれ、この絵、どこかで見たことある?いや、どこで。素材サイト?
記憶をひっくり返して、目の前の絵に似たイラストをどこで見たか必死に思い出そうとしていると、ついに思い出しました。
そう、Xです。Xで見た何かのアニメのキャライラスト。それに非常に似通っているのです。
私はCさんにそれとなく確認しましたが、Cさんからは「オリジナルキャラです」と返ってきました。
いや、そのイラスト自体はとても上手だったのですよ。しかし、私が似ていると思ったキャラクターと共通点が多いのです。
アクセサリーなどの装飾品、服装、全体のデザインなどなど。表情など細かいところは若干違う部分もありますが、それだって書き手によって多少は変わる程度の誤差でしょう。
言うなれば「この絵、あの作品のキャラじゃね?」とその作品を知っている人がみたら言い出しそうな絵です。しかし、描いた人はオリジナルキャラだと言い張る。
ちょうどその頃、Xではトレスだのパクリだので何かしらが日々炎上しているような状態でした。
そんな時に、この版権キャラっぽい絵を使った広告を出したらどうなるかなど容易に想像がつきます。
描き直しを要求したいところでしたが、絵のデータを受け取ったのは納期ギリギリ。ここで納期を延長して描き直して貰うと、正直、後の工程(広告のレイアウト調整やら色々です)をする自分が厳しい。
私は脳内で素早く算盤を弾きました。この状況を打開する為に導かれる最適解は・・・伝家の宝刀AdobeStockでの素材探しです。
私はCさんからデータを受け取り、社交辞令的なお礼を伝えた後、即座に使いやすそうな素材を探しました。
そして、探しながら思いました。
料金を支払ってイラスト作成を依頼しているのに、版権キャラを描いてくる人いる?、と。
そのキャラが好きな人は嬉しいのかもしれませんが、私は仕事で使う素材の作成を依頼しただけです。
著作権問題に発展しそうな爆弾を渡されても困るんですよ。
Cさんからいただいたai形式のデータは、今でも私のPCに保存されています。きっと、今後も使う予定はないでしょう。
というか、あんなに普通に版権キャラっぽいものを提出するとか大丈夫なのでしょうか。
Cさんとの邂逅は、私に色々なことを考えさせる経験となったのでした。
【そして、私はイラストを依頼しなくなった】
この後もちょくちょく外部にイラスト依頼をし、取引が問題の無い時もあれば、問題が発生する時もありました。
割合で言うと、体感的に問題ない時が6、問題ある時が4という感じでしょうか。
納期を守ってくれない。技術的な問題。連絡などのレスポンスが悪い。などなど、様々な理由で「仕事として」のやり取りをするのが難しい人達が散見されました。
こういうことを繰り返すうちに、私も疲れてしまったんですよ。
イラストを外部に依頼することに。
そもそも、私の仕事は絵が描き終われば完成ではなく、絵は全体の一部にすぎませんし、絵が主役というわけでもありません。
広告素材としての絵があればいいだけです。
その絵を1枚手に入れる為にどれだけの労力を払う必要があるのか。
そんな時に私の前に現れたのが生成AIです。
主役級のイラストとして使用するのでなければ十分使えます。
アイコンとしての人物イラスト程度という使い方であれば、著作権の問題が発生するようなイラストは生成されにくいのではないかと考えられます。
シンプルな絵になるほど、似た様な絵を描く人は多くなりますからね。その状況で生成AIだけを「盗作だ」というのは反AIの人くらいでしょう。
絵が主役ではない私の仕事では、生成AIも素材を獲得する為の手段の1つでしかありません。
こうして、私はイラスト作成の依頼をしなくなったのでした。