クロの買い物紀行
待ち合わせの場所にサラは来なかった。三日前の話。その代わりにあれが来た。
赤い花々で彩られた街中を四つ足を必死で駆ける。猫族の中でも臆病で小柄なクロにはそれが精一杯だ。
待ち合わせの場所に相棒は来なかった。三日前の話。酒場でサラの伝言を見つけたのが昨日。その直後から暴漢に襲われる回数が格段に上がったのだ。
道具屋に飛び込んだ、大丈夫あの暴漢達は撒いたはず。
「すみませーん。黒胡椒100gとおいしい水1リットル、ヒリヒリ草にインスタントテント1個ください!」
「2000Gよ、インスタントテントなんてこの時期に珍しいね、あら、あなた赤い花が付いているわ」
「ええ、もう赤い花が降り始めていました、向こう側に家があるんで帰るんです。」
「お花とってあげる、そのまでも可愛いけれど、毒だものね」
羊のオーナーはクロの頭に手を差し伸べ、そのままチクリと何かを刺した、直後暗転、転倒。
「ごめんなさいね、付き合いがあるの。あなたの相棒、24時間送風機を起動しちゃったみたいよ」店主は申し訳なさそうに呟く。
花渡りが始まってしまう、そうなったら半年は帰れない。
【続く】