Sings Street は青春映画なのか。
高校以来にこの映画を見た。いい映画だったな〜とぼんやりとした記憶が残っていたが今見たらとんでもないぐらい染みる映画だった。
見終わってから何度もostを何度も聞いてる。名曲しかない。
二時間かけた超大作のミュージックビデオを見た感覚なのにテンポよくストーリーが進むので飽きることなく見終わる。
劇中ずっと良いシーンと良い映像が続くのだけれど、特に好きなシーンがいくつかあるので記録も込めて書いていきたい。
一つ目は主人公のコナーが初めてラフィーナを目にし、声をかけにいくシーン。
学校の前に住んでいる魅力的だが不思議に満ちた年上の女性に迷わず声をかけるコナー。かなり男気を感じた。
そんな彼女に『僕のバンドのビデオにでない?』と嘘をついてまでアプローチを仕掛ける。何かを始めるきっかけなんてなんでもよくて(それがお金でも女でも)単純でいいんだなと心が軽くなったシーンだった。
次のシーンはコナーとイーモンが深夜に制作してできた曲『up』を歌うシーン。一言で言うと全て良い。劇中で一番好きなシーンかもしれない。
It’s 2 o’clock on the edge of the morning.
(朝になりかけの深夜2時)
She’s running magical circles around my head.
(頭の周りを彼女が回る)
こんな歌い出しから始まる。まさに今の感情と状況を表している。そりゃあ今出来上がった曲なんだから当たり前なのかもしれないけど私はこの2行に感情を持っていかれた。すぐにサイモンがアドリブでピアノを弾き始めるのもとても良い。
Going up. She lights me up. She breaks me up. She lifts me up.
(高く上るよ、光を照らす彼女、壊れそうな僕を彼女が引き上げてくれる。)
この曲は言わずもがなラフィーナに向けて書いた詩であり、それをカセットテープにして彼女に届けるコナー。
化粧を落としながらこの曲をきいた彼女は最後に泣いてた。
"化粧を落としながら涙を流す"
化粧という表の面をとっぱらってただただ泣いている姿を見たこのシーン、誰よりも夢に真っ直ぐで強い意志を持っている彼女の素の部分が垣間見えた気がした。
次のシーンはこの映画のハイライト?ともいえる“Drive It Like You Stole It”を歌うシーン。
演奏している彼らもお揃いのスーツを着て、煌びやかなドレスを着て踊る人たちの中に仲の良い両親がいて、とびきり綺麗なドレスを着たラフィーナがコナーに釘付けになっている。曲の間誰もが楽しそうで幸せな気持ちになる。
実際は両親が仲直りしたわけでも、ラフィーナがやってきたわけでもなく、50年代のダンスなんて微塵も知らない田舎の高校生数名が目の前にいるだけ。
曲が終わると一気に現実に引き戻される。その時のコナーの表情が忘れられない。
This is your life, you can go anywhere.
(これはあなたの人生であり、どこへでも行ける。)
そんな自由を謳う一番華やかなシーンが全てコナーの創造の中であること、
それがこの映画で一番のハイライトであること、
どこのシーンより鮮やかで美しく気を緩めると一瞬で崩れてしまう脆さと儚さがある。
現実のギグでは誰もドレスなんか着ておらず、暗い体育館の中みんなで校長先生のお面を被りアンチソングで盛り上がる。そことの対比も良かった。
この映画は主人公のコナーが一目惚れしたラフィーナに嘘までついてバンドを組み、曲を通じて想いを馳せていく恋愛映画だと思っていた。もちろん最初から最後まで。
For Brothers Everywhere.
(全ての兄弟たちに捧ぐ)
と言うメッセージでこの映画は終了するのである。
本当に度肝を抜かれた。
確かに家庭環境が悪い中兄弟だけはずっと仲が良かった。兄のおかげで新しい音楽や曲作りに励むことができた。
兄が叶えられなかった夢を、希望を弟が叶える。ラフィーナはそのきっかけにすぎなかったのか。
きっかけなんてなんだってよくてそれを生かすも殺すも本人の力量次第。
曲作りからサポートから最後の車を走らせるところまでずっと兄は近くにいて見守っていた。弟の才能に嫉妬しながらも全力で支えていた。
This is your life, You can be anything.
(これは君の人生なんだ何になってもいい。)
You gotta learn to rock and roll it.
(進むにはロックをかき鳴らして)
You gotta put the pedal down.
(アクセルを踏めばいい。)
And drive it like you stole it.
(抜け出すように車を走らせるんだ。)
弟が作詞した曲だけどこれは兄が弟に向けた心情の方がしっくりきてしまった。
全ての兄弟に捧ぐというメッセージの意味はもちろんこの作品のことではあるが、
個人的には“人生は自由なんだ”ということを兄のブレンダンにも伝えてあげたいと強く思った。
ジャンルとしては青春映画に分類されるのだと思う。恋愛、友情、家族、10代に悩まされるものばかり。紛れもなく兄弟の物語なのだ。