暗いなら、明るい場所へ行きましょうよ
あるものでどうにかやる。
この精神が私には染み付いている。
22歳で田舎の広告代理店に入社。
当時はオペレーター課に配属され、
写真の切り抜きや新聞のモノクロ広告などを制作していた。
誰も知らないような美大を出て、
アドビのソフトもろくに使えない私のような子や
何年前から着ているかわからない、もはや何色かもわからない
GAPのトレーナーを2日に1度着てくるおじさんや、
5回くらい聞き返さないと聞こえないくらい小さな声の先輩が
このオペレーター課で働いていた。
かたや、私の同期は
専門学校ですでに専門的なスキルを身につけていて、
自分のデザインをとにかく熱く売り込む男子だったので、
その積極性と即戦力を買われ、デザイン課に所属していた。
予算も時間もたくさん用意された仕事が多いデザイン課に対して、
オペレーター課に課せられる仕事は、予算もなく、
ありものの素材だけで広告を作らなければならない仕事が多かった。
撮影費なんてない。とにかく安く!安く!
そんなクライアントに限って、修正回数も多かった。
勤続年数を重ねるごとに、どうにかこの状況のなかでも
自分が満足できるデザインができないか、
クライアントを黙らせるようなデザインができないか、
考えるようになった。
オペレーター課には、一人、
オペレーター課の希望の星のような先輩がいた。
彼女はありものの素材をオシャレに加工して、
メインで使えるようなビジュアルを考えたり、
ありふれた素材写真に命が吹き込まれるような
ドキッとするキャッチコピーを考えるのがうまかった。
『暗いと不平を言うよりも、進んで明かりをつけましょう』
どこかで聞いて、ずっと好きだった言葉。
後からこの言葉の出典先がわかったが、私はカトリック教徒ではない。
彼女をみていると、この言葉を思い出した。
とにかく会社には不満があったし、
毎日、このままでいいのか?と思っていたけど、
そんなことを思っていても、
目の前の仕事が終わって行くわけでもなかったから、
彼女を真似て、
この現状の中で、いかに自分が気持ちよくなれるかをゴールにしていた。
あれから15年以上経って、
このマインドは完全に自分の体、頭ん中に
染み付いてしまったなーと感じる。
ずっと良い事だと思っていたし、
なんなら特技だと胸を張っていたところもあった。
今でも、何かを始める時にはいつもこのマインドが現れる。
とりあえず、今の状況でできることを。
結果、その程度のものしかできない。
その程度の満足で終わる。
あーこれって貧乏マインドなんだなと気づいた。
この程度でいいや、
このくらいでじゅうぶん。
言い換えればこう言うことだった。
自分に最高の環境を用意してあげることに慣れていないから
まあまあな環境で満足感を得る癖ができてしまった。
たとえ、飽きてしまっても、
たとえ、楽しいかわからなくても、
やってみたい、チャレンジしてみたい
その気持ちには、最高の環境を用意してあげたい。
最高の環境で、
あーこれ違ったな と気づいたら、
スパッとやめられるし、自分に言い訳もしないで済むなと。
早くから、このマインドでいることが
人生を大きく変えていくんじゃないかと。
暗い部屋で明かりをつけても、
さっきよりはマシな環境になるだけ。
暗いなら、もっと明るい場所に行けばいい。
私の悪い癖からの単純な気づきを、
なんか凄いことに気づいてしまったように書いてるけど、
地味にこれ大事なことだと思ったので
残しとこうっと。