GRADO SR325xレビュー!新しいドライバーを纏った定番ヘッドホン
GRADO Labs とプレステージ・シリーズ
1953年、ティファニーの時計職人だったジョゼフ・グラドが、以前からニューヨーク・ブルックリンの自宅で行っていたフォノカートリッジの製作のためにGRADO Labsを設立しました。
1984年にカートリッジの生産は最高峰に達しますが、その後、CDの台頭により販売に陰りが見えたこともあり、1991年に最初のヘッドホンが製造され現在に至っています。1万円台の比較的手頃な価格のエントリーから30万円を超えるハイエンドまで充実したラインナップのヘッドホンに加え、最近ではイヤホン、Bluetoothヘッドホン、ワイヤレスイヤホンもリリースされており、国内ではナイコム株式会社の取扱となります。
私は、GRADO SR125の同等品と言われるALESSANDORO MUSIC SERIES ONE(MS-1)と限定品のGH3を以前使用していました。当時の音楽鑑賞スタイルがほぼ外出時にポータブルでの使用ということで、開放型のGRADOのヘッドホンはあまり使う機会がなく既に手放しています。最近は自宅で音楽を聴く機会が増えているため、GRADOのヘッドホンも気になっていました。
今回お借りしたSR325xの前身、SR325はGRADOがヘッドホンを開発した初期、1993年にGRADO最初の金属製ヘッドホンとしてリリースされました。ホームページでは真っ黒なSR325の画像がアップされていますが、色以外、ほぼ外観に違いは見られません。2003年には創立50周年を記念して、ゴールドSR325がリリースされています。SR325はGRADOを代表するヘッドホンの一つであることは間違いないと言えるでしょう。
GRADOのヘッドホンで型番にSRが付くものは、プレステージ・シリーズと名付けられており、数多くのラインナップを誇るGRADOのヘッドホンの中では価格的にエントリーモデルの位置付けです。SR325を除くSR60・SR80・SR125・SR225は筐体はポリカーボネイト製ですが、SR325だけはアルミ合金製となっています。5機種ともドライバーは同じでもちろんオープンエアーです。5機種の違いはケーブルやハウジング、イヤーパッドそしてチューニングの違いとなります。
また、プレステージ・シリーズは無印(1995年)→i(2005年)→is(2009年)→e(2014年)そして今回のxと改良を重ねてきました。
※GRADO Labsのホームページでは最初のSR325のリリースは1993年、SR60は1994年となっています。
本体・附属品
eシリーズからxシリーズに代替わりし、ドライバーが第4世代となる新開発44mm径ヘッドホンドライバー「Xドライバー」へと変わり、ケーブル、ヘッドホンバンドなども変更されています。GRADOのホームページによると、
<Xドライバー>
・ボイスコイルの軽量化により高効率に駆動することで優れたトランジェントを獲得
・磁力の向上と44mm径振動板の最適化による、全ての帯域でリニアリティに優れた高音質再生
<スーパーアニール処理OFCケーブル>
・OFC線材に加熱処理を施すことで、残留応力を除去し機械的ストレスを抑制
・伝送時のストレスの低減による高純度伝送
とのことです。外観の変更はハウジングの型番にxが入っているぐらいの変化しか気が付きません。一瞥してGRADOのヘッドホンと認識できるのはある意味すごいかも。
SR325xについて見ていきます。今回のxシリーズはヘッドバンドにクッションが入ったようですが、なぜかSR325xだけは従来のままのペラペラヘッドバンドです。
価格的には一番高いのに。謎です。本皮らしいので、コスト的にはこちらの方が上なんですかね?イヤーパッドはSR325eではEar Pad LだったのがF型に変更されたようです。F型のイヤーパッドをググっても見つからなかったのですが、限定版のヘッドホン、HEMPで使用されているイヤーパッドのようです。
ぱっと見た感じはL型と変わらないように思いましたが、L型ほど厚みのないタイプのようです。今回は試していませんが、GRADOのヘッドホンはすべてイヤーパッドが交換可能なため、いろいろ試して装着感や音の違いを試してみるのも楽しいかと思います。
附属品は1/4インチ(6.35mm)標準プラグアダプターのみです。3.5mmプラグに嵌まっているので附属品とは思わないかもしれません。
GRADOについてスペックは語るだけ野暮だけど一応
ホームページで公表されているスペックは下記の通りです。
形式:オープンエア
ハウジング:アルミニウム合金
ハウジングドライバー口径:44mm
周波数特性:18〜24,000Hz
チャンネルバランス:0.05dB
インピーダンス:38Ω
感度:99.8dB
接続コード:8芯OFC線(高純度無酸素銅線)
接続コード長:約1.7m
重量:約240g(ケーブル含まず)
総重量:約360g(ケーブル含む)
スピード&パワー!これぞGRADO
SR325シリーズは最もGRADOらしいヘッドホンと言われており、明瞭で解像度も十分、音場は狭いが開放的という特徴に加え、金属ハウジングらしく荒ぶる高域が魅力で、ハードロックやメタルに合うヘッドホンの筆頭とされてきました。
余談になりますが、メタルもサブジャンルが細分化し、一言でメタルと言ってしまっていいのかどうか。自分もメタル好きを公言していますが、パワー・メタル、(一部の)シンフォニック・メタルが好物ですが、プログレッシブ・メタル、スラッシュ・メタルは苦手だったりしますしね。
とりあえず聴いていきます。GRADOには据え置きのちゃんとしたヘッドホンアンプを用意しないといけないなぁとは思うのですが、現在は所有しておらず、購入検討中のため、いつもながらのポータブル機器での試聴となります。
【試聴環境】
PC:VAIO S11(Windows 10)
DAC・アンプ:Fiio Fiio Q5s TC
ケーブル:Beat Audio Emerald MKII Digital Adapter Cable USB Type-C to USB Type-C
再生ソフト:Amazon Music HD
装着感はまさしくGRADOという感じで決して心地よくはありませんが、そこそこ長時間の使用も可能でした。
装着感よりも困ったのはケーブルの太さと質感です。ポータブルでの使用ではないため、あまり取り回しは気にならないと思っていましたが、しっかりとしたアンプに接続しないとちょっと身体を動かすだけで接続している機器が引っ張られてしまいました。
また、ケーブルのY分岐から本体までの長さが特別短いわけではないのですが、ケーブルの硬さから、装着していて窮屈に感じました。
装着感に対する不満をつらつらと書きましたが、実際に音を出すと気にならなくなるのがGRADOのスゴさです。民芸品だのなんだのと揶揄されますが、数多くのファンがいることが納得の音質です。
外観のイメージ通り硬質で高域寄りですが量はそこそこで、締まりのある質の悪くない低域もしっかり聴こえます。解像感もあり、明るく、コントラストが高い印象です。
音場は広くはなく、耳の横で音が鳴っている感じは否めませんが、開放感があり聴いているうちに気にならなくなります。ボーカルが弱いということはなく、Helloweenの新譜「Helloween」を聴くと、アンディ・デリス、マイケル・キスク、カイ・ハンセンによるトリプル・ボーカルを心置きなく楽しめます。あと、メタルではありませんが、フュージョン系もなかなか相性がよかったです。
従来のSR325のレビューとほぼ同様のレビューですね。強いて言えば、以前のSR325シリーズのレビューで見られた「高域のキツさ」というのはあまり感じられませんでした。これは新しいxドライバーのためか、試聴環境のためか、はたまた自分の加齢による可聴域低下のためかは不明ですが。
xドライバーのインピーダンスは38Ωですが、現行のGRADOのラインナップでインピーダンス38Ωのヘッドホンは限定版のThe Hempだけです。
The Hempは聴いたことがないので他の方のレビューで見ただけですが、従来のGRADOらしい音とはかなり違い、高域が抑えられ、豊かな低域が特徴のヘッドホンとありましたので、新しいプレステージ・シリーズはHempと同じドライバーを使用して、従来とは違う音作りを目指しているのかもしれませんね。
総評:メタル好きにはたまらないヘッドホン!
生まれ変わったというよりはさらなる進化をとげたGRADO SR325xですが、自分のように好きなジャンルに合うと唯一無二なヘッドホンになると思います。
問題はケーブルの取り回しの悪さでしょうか。それもあって、世界初の開放型BluetoothヘッドホンGW1000が今かなり気になっていたりします。
やはりメタル好きを自称する以上、一台はGRADOを持っておかないとですね。