おかげ様で、10周年。
2011年12月1日、当院の記念すべき診療初日でした。
まだ慣れない手つきで、どこかぎこちなさのある診療をしていた照れくさい記憶が今でも残っています。早いもので、おかげさまで10年が経ちました。地域の皆様からもだいぶ認知されたことと思います。
2011年は皆さまご承知の通り、東日本大震災があった年でした。開院した当時は、新宿フロントタワー周辺の人通りはまばらで、この先大丈夫なのだろうかと、すこし心配な気持ちになることもありました。それが現在では周辺に新しいビルやマンションも次々と建設され、いつしか多くの人で賑わう街へと成長し、さらにはまた新たな高層ビルの建設が進められています。その傍ら、古くからの住宅街も広がり、様々な年代の方が生活されておられ、多彩なドラマが交差するこの地域。そんな日本でも有数の成長著しい街に開業でき、皆様から暖かく迎え入れていただけたことに感謝しております。
この10年は、目の前の患者さんの診療を一つ一つ丁寧に頑張り、そんな毎日の積み重ね、という印象です。2019年まではおかげ様で年々患者数は増加し、年を追うごとに忙しさの増す診療となっておりましたが、2020年に全世界を襲った新型コロナウィルスの影響により、そんな忙しかった日々は一変しました。ご多分に漏れず大変な日々となったわけですが、過去の忙しい診療の中で忘れていたことを思い出させていただいた、そんな気もしています。
「科学とヒューマニズムの融和」を胸に
私の母校は東海大学でして、どちらかというとスポーツが盛んで、体育会系の色が濃い大学です。医学部も同様な傾向があり、あれこれ頭の中で考えるより、まず体を動かす方が馴染んでいるかもしれません(これは完全に私のイメージですが)。そんな東海大学医学部の標語は「科学とヒューマニズムの融和」でした。大学の大きな講堂にはこの標語が飾られ、講義のたびに目にしていたこの標語。学生の頃はこの言葉の意味があまりピンときませんでした。むしろ、もっとカッコいい四文字熟語みたいな言葉はなかったのかな?なんて思ったりしていました。それが、最近はこの言葉が医療者にとっていかに大切かということを感じております。年をとったのですかね。
”病気”という言葉。何気なく使われるこの言葉をよく見てみると、身体に生じた病態に心理的な要素が加わったことを意味する言葉です。つまり、身体と心の不調な状態が病気なのです。様々な病気がありますが、”病”が主体の疾患もあれば、”気”が足かせになっている患者さんも多くみられます。病に対する治療は科学の出番ですが、気はそう簡単に科学では治せません。そこで大切になるのがヒューマニズムなのだと気づきました。医療におけるヒューマニズムとは、言い換えると良い医師患者関係を築くことに尽きると思います。医学部6年間の授業では、良い医師患者関係を築くことの大切さは学びますが、その築き方を習得するような訓練はありません。医師になり、多くの若い先生は病気を治すために科学的な知識や技術を習得することに重きをおく傾向にあります。それは医師にとってとても必要なことですし最もなことだと思います。しかし、この仕事を続けていくとやがて、科学のみでは限界があることに気が付きます。そこにどう対応するか。そこがヒューマニズムの大切さなのでしょう。たとえ疾患や症状が改善しなかったとしても(もちろん改善するのが一番良いのですけど)、一歩その先へすすもうとする気持ちを後押ししてあげることができたなら、その病気はきっと改善に向かうのだと思います。これは一朝一夕では出なきないものですし、効率よく築くマニュアルもありません。患者さんと医療者が協力し、その答えを一緒に探していく、そんな医療ができたら開業医冥利に尽きるのだろうと思います。次の10年は忙しい中でも時々立ち止まりながら、科学とヒューマニズムの融和を胸に刻んで歩んでいきたいと思います。
この機会にいままで細々と続けてきたブログ(おそらく誰も見ていないと思われる)からnoteでの情報発信に切り替えることにしました。上手な文章で伝えたいという気持ちはあるのですが、まったくか上達しない幼稚な文章なのは恥ずかしいのですが、そこは親しみやすくわかりやすい表現と思っていただきまして、お付き合いいただけますと幸いです(単刀直入にいいますと、物書きの才能は無いということです)。加えて、10周年を記念して、2021年12月のカレンダーを作ってみました(できれば2022年は毎月作りたいのですが、三日坊主癖のある私が続けられるかどうかという話もあります)。もしお気に召しましたら、どうぞご自由にお持ち帰りください。
2021年12月で10周年。記念にカレンダー(1ヶ月分のみですが)作ってみました。お気に召しましたら、ご自由にお持ち帰りください。※フレームは持ち帰らないでね。