PFAS いのちと植民地主義
※映画「命ぬ水(ぬちぬみじ)」についての感想を記載しているため、一部内容に触れるところがあります。ご注意ください。
5/15は「沖縄返還の日」であることを初めて知った。30年生きてきて全く知らなかったことが恥ずかしい。
まさにその返還の日、沖縄基地のPFAS問題についてのドキュメンタリー映画「命ぬ水(ぬちぬみじ)」を鑑賞した。昨年末から横田基地を中心に、東京多摩地区でPFASという有害物質が水道水、また住民の血液から高濃度で検出されたというニュースを聞いたのがきっかけで興味を持つようになった。近隣に住んでいる親類、友人がいるためもっと知って広めたいと思い、東工大にお邪魔した。
まず「PFAS」とは何か。
撥水効果があり、身近なところでは防水着や油をはじくフライパンなどに使われているが、沖縄、ここ半年は東京西部の水道水で基準を大幅に上回る量のPFASが検出された。いずれも断定はされてないが数々の調査を経た結果、「米軍基地」が原因だという。東京西部は横田基地がある。
そして「フォーエバーケミカル」と言われ、水に溶けるため目には見えづらいと言われていたが、映画では白い泡(一見してちぎれた発泡スチロール)がふわふわと舞う異様な光景が見られた。泡消化剤で米軍の消防訓練に使われるらしく、大量に一気に使うとふわっと白い塊が舞うという。そして平気で基地を飛び越えるため、外にいる子どもたちなどが不用意に触りかねず危険だという。
沖縄だけでなく、米国内でもPFASの影響が汚染が確認された地域から証言があったが、米軍自らが住民に対しPFASが含まれた水道水を持参し説明していたという。だが、沖縄ではいくら地元住民が求めても米軍、防衛省の出先機関などからは全く説明がなされていない。そして大量の泡を除去したのは米軍でなく、地元の消防署だという。なんで発生源の米軍が対処しないのか。ここに「日本に返還されたのがお祝いではない」、幕末の日米和親条約よりも不均衡な、今でも続く米軍基地が治外法権の「日米地位協定」の問題が立ちはだかっていることを痛感した。
私は3年前に転職活動をしていたが、とある企業の面接で米軍基地内に事務所があるから来てくれと言われ、初めて中に入った。日本とは言え、米軍基地は治外法権、日本人はパスポートを持参しないといけない。そして米軍が敷地外で犯罪を犯してもアメリカの法律で処罰される。日本国内なのにゲートを超えたら自分が外国人になったような、肩身の狭さを感じたのを思い出す。
でも、実態として自衛隊は米軍への協力を要請される一方で、基地の維持は国民の税金から拠出されるのだが騒音・PFASなどの汚染・公害は知らんぷり。他国では国内法の適用がされているのを見ると、これだと実質米国の従属下にあることがわかる。
https://www.pref.okinawa.jp/site/chijiko/kichitai/tyosa/documents/r2_p15.pdf
国内法が適用されていないからこそ、米軍・米国・日本政府がブラックボックス化し調査を求めても「米国政府との信頼を損ねるから」という回答が返ってくる始末。
沖縄のPFAS汚染の実態で劇中で指摘されていた点として
・40年前から沖縄は高い汚染率が続く、総漏出量は約4,747L
・PFAS被害の一つである新生児の低出生、発達の遅れが全国的に高い
・ストックホルム条約でPFOS Pfoaとあわせて使用を禁止されているものの、代替する物質が発見されるまでは使用していいとする「除外規定」があるため、いまだに使い続けている
・潜伏期間はPFOSは約5年、PFHxSは約8.5年と長く、子どもで摂取したら中年まで体内に留まる
自国民には被害状況を説明するのに日本人には説明責任を果たさない歪さは1972年5月15日の「沖縄返還」で加速されているのではないだろうか。基地撤廃するとなると、じゃあ自衛隊を国防力として高めようと偽保守(いわゆるネトウヨ)が言い出すだろうが、その武器はアメリカからホイホイ買ってしまうことが目に見えており、まさに防衛費拡大の状況で現実起こっている。そうではなく、対等な日本国として外交で、ペンで米国に対すること・そして他国と接することが現実的だと思う。
今まで本土の人間として生きてきて、恥ずかしながら昨年の東京新聞での横田基地のPFAS汚染の報道を見るまで沖縄の基地問題はほとんど考えたことがなかった。だけど、これは生活のライフライン、いのちに直結するから自分事としてアンテナを張り始めた。物質の有害性のみならず、されるべき調査・対応がされていない背景にある不均衡な日米関係、「返還」の言葉に含まれる単なるアメリカ→沖縄支配から、アメリカ→日本政府→沖縄の二重支配の結果を生み出してしまったのではないかと、51年横たわっている問題についていろいろ考え、参考文献も読みつつ分かり次第発信していきたい。