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いのちの調べ

人と動物、神仏が共生する奈良 春日の原生林。奈良国際映画祭のプログラムの1つとして、世界遺産である春日大社のご奉納としてのピアニスト 川上ミネさんの演奏会、そして長年奈良の四季を美しい映像で綴っておられる保山さんによるコンサートに参加。

神さま仏さま、そして奈良公園に棲む鹿はじめすべての生きものたちの息づかいを全身で感じた贅沢な一時で、おそらく一生このような機会はないだろう。今回は若宮さんとご本殿へのお参りと合わせ、特別に「林檎の庭」と呼ばれる、神さまがおられる本殿の前でのピアノ演奏ご奉納となった。

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演台には大きな燭台が置かれ、炎のゆらめきをじっと見つめながらピアノの音色と生きものの息づかいにも耳を澄ませていた。虫の音、何か鳥の声、あるいは飛行機のジェット音。いろいろな音が聴こえてくる。生きてるのは人間だけじゃない、てこと。自然の恵みに私たちは生かされているのだ、ということ。人と生きものの営みを見守り続けてきた春日の杜を目の前にして実感した。

保山さんの映像と川上さんの音楽を通して水や大気、生きものたちのうごめきを見つめていると今までのわだかまりだったり勝手に期待していたこととかが遠く小っちゃく感じてしまう。同時に4月の大仏放送で顔も名前もわからないたくさんの暖かい人達とここ奈良の地でめぐりあえたことが一気に思い出され、ずっと涙が流れていた。単なるパフォーマンスや舞台のすばらしさだけでなく、その場にいると人間の営みを1250年以上見守ってきた春日の自然にいいんだよ、と温かく受け止めてくれた気がした。せせこましい自分の感情への反省や彼らとの感謝など、いろいろな思いが交錯していた。

途中川上さんの提案で少し席を離れて思い思いの場所に移動して音色を聴いた。電灯がほぼないのでもちろん真っ暗。宮司さん曰く溝にも注意しながら私は本殿の正面に移動し、時折空を見上げ耳を澄ませた。そうすると夜はあかりがないと墨を流したように暗いと思い込んでいたのだが空が意外と明るいことに気づいた(この日はおそらく月は出ていなかった)宵の中盤みたいな、少し明るめな空が広がっていた。

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万物は流転する、明けない夜はない、諸行無常。日々の雑事に追われてしまう私たちにとって、雨が降らない中(川上さんがご奉納される中では初めてとのこと)神さまがおられるお社の前で過ごした時間は時間や空間を超えて何か大きな恵みに生かされていることを教えてくれたとともに、それに感謝することで何か良いことがさざなみのように起こってくることを予感させた。


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