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歴史香る世界のスパイス料理 第2回ローマ帝国のスパイス - スパイス航路に導かれ

本記事は、雑誌『小原流挿花』2018年10月号に寄稿した記事を追記再構築してnoteに投稿したものです。当時は4ページで5品の料理を紹介しましたが、noteではボリュームがあるので、全5回としました。その第2回です。
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すべての「食」はローマに通ず。帝国を席捲した真のイタリアサラダ

 紀元前8世紀ごろ、ローマが建国されます。ギリシア、エジプトなどの古代文明が花開いた都市に比べると、見劣りしましたが、ローマは強国でした。共和制の時代になると周辺国を次々と属州にし、他国の食文化をスポンジのように吸収していきます。こうして食の多様化が進んだローマは独自の食文化を形成していきました。

 スパイスに話を戻すと、ローマではコショウ、シナモン、クローブなど香りの強い香辛料を多用するようになったのが特徴です。これらは元々地中海世界にはなく、東西の交易路を利用して、メソポタミア、エジプト、ペルシア、インドなどからもたらされます。そんな香りわき立つスパイスを使った古代ローマの冷製チキンサラダを紹介します。
 「サラ・カッタビア」という名前のこのサラダには、ドレッシングの中にジンジャー、コリアンダー、セロリシード、塩、コショウを加えています。パンとチーズの入った具だくさんのサラダは当時、最後に雪の中で1時間冷やして食べたという貴族などの上流階級の人々が食べたご馳走でした。

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写真/久保田狐庵

サラ・カッタビア(古代ローマ風チキンサラダ)
材料(4人分)
食パン 1枚
鶏もも肉 200g
コンビーフ 100g(1缶)
 きゅうり 100g(1本)
 タマネギ 200g(1個)
 パセリ 100g
粉チーズ 適量
 オリーブオイル 適量
 白ワイン 100ml
 塩 小さじ2
 松の実 小さじ2
 ドレッシング 
  しょうが 1片
  干しぶどう 10g
  ミント 適量
  コリアンダー粉 小さじ1
  セロリ粉 小さじ1
  ハチミツ 大さじ1
  赤ワイン 10ml
  赤ワインビネガー 20ml
  オリーブオイル 100ml
  塩・コショウ 適量

作り方
1. クルトンを作る。
食パンの耳を取り、一口サイズにカット。オリーブオイルを塗り、フライパンで焼き色がつくまで焼く。
2. ボウルの底にクルトンを並べる。
3. 鍋にサイコロ状に切った鶏もも肉、白ワイン、塩を入れ、鶏肉に火が通るまでゆでる。残った煮汁は別の器にとっておく。
4. きゅうり、タマネギを薄くスライスしタマネギは炒めておく。
5. 2のボウルにタマネギ、きゅうり、松の実、コンビーフ、鶏肉を敷きつめ、粉チーズをかける。
6. 5にドレッシングと3の煮汁をかけて、冷蔵庫で1時間冷やす。
7. 皿に盛りつけて、最後にパセリを飾る。

ドレッシングのつくり方
1. しょうが、干しぶどう、ミントをすり潰す。
2. ボウルに1を入れ、コリアンダー粉、セロリ粉、赤ワインビネガー、赤ワイン、ハチミツ、オリーブオイル、塩、コショウを加えて、かき混ぜる。

 サラ・カッタビアはパン、チーズが入った具だくさんのサラダです。この料理名はギリシア語でもラテン語でもなく由来は不明のままですが、一説では現在のトルコにあった古代国家のリュディアの料理に似ているそうです。ローマ帝国の領土の拡大に伴い、トルコ周辺の属国から持ち込まれた可能性を考えるのが面白そうです。

 ドレッシングのソースに多種多様な食材やスパイスをまぶし、水か酢に浸したパンとチーズをかけ、きゅうり、レーズン、鶏肉、松の実とタマネギを入れ、雪で覆ってよく冷却して食べたそうです。氷室で保存した貴重品だったようで、高級品と考えられています。
 チーズはウェスティーニ(人)のチーズと原典にはあり、ローマから離れた中央イタリアの一地方のチーズを取り寄せて、当時のローマのお菓子や料理に使われていました。ここではよく刻んだという文脈から粉チーズを使用しました。
 また、パンはピケヌムというイタリア中部にあった古代都市で作られていたぶどう果汁を練りこんだ固めのパンを当時は使用していたそうですが、ここでは市販の食パンをフライパンで炙って固くしました。クルトンのような食感を味わえます。

 現在、イタリアンレストランで定番のシーザーサラダですが、これは全くシーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)や古代ローマとは関係がありません。20世紀前半のメキシコにあるレストラン「シーザーズ・プレイス」でありあわせの食材で作ったサラダが発祥と言われていて、シーザーサラダは比較的歴史の浅いサラダです。

 そのようなわけで、真のローマサラダと言えばこのサラ・カッタビアだと言えるでしょう。


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