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地球のはなし 春のたより
インターネットを開いたら、100年前のウィスキーとブランデーが南極の氷から発掘されたという記事に出くわした。2月5日、英国の探検家シャクルトンが1908年に建てた小屋の床下から、だそうだ。
いささか驚いた。というのは、その小屋は、1972年1月に私が滞在し、皆既日食を見た(そのことは、6年ほど前に本欄に書いた)、ロス島のロイズ岬にある小屋だからである。
シャクルトン達は危うく遭難しそうになって、小屋にすべてを残したまま避難した。だから、積み上げられた食糧の箱などが、当時のまま残っている。
こぼれた大豆も、ポニーの糞もあった。低温のため腐らないのだ。
南極での人間の活動を伝える数少ない歴史遺産として保存されているので、私も見学することができたのだった。
ただし、よほどのことがない限り、入室は許されていない。ドアを開けてのぞいたら、部屋の中央にはストーブが、窓際には流しとオーブンがあった。天井にはソリが吊るされ、棚には調味料のビンらしいものが残っていたことを覚えている。
やりきれないことが多い報道の中、寒い国からの楽しい記事。予告したかのように、2月の初めには、かつての南極仲間の中国の友人から春節のカードが届いていた。
「新年快楽 吉祥如意」。そうありたい。
(2010.2.18)
別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。