地球のはなし 湯けむりの見え方
別府温泉の象徴を「湯けむり」とすることに、あまり異論はないだろう。
殊に鉄輪では、ホテル・旅館・住宅などが密集する中から幾条もの湯けむりが立ち昇っていて、迫力十分である。
その湯けむりの実況中継が、2月初めから別府市のホームページで始まり、インターネットを通して、時々刻々と変化する躍動的な姿を見ることができるようになった。
湯けむりとは、高温の温泉から放出された水蒸気が、空中で凝結して、霧状の微細な水滴になったものである。
本来の水蒸気は無色透明であるが、この現象によって見えるようになる。
しかし、しばらくたつと水滴は蒸発してしまい、湯けむりは消える。
本紙夕刊に連載中の、私の好きな「お天気歳時記」の3月14日の記事の「吐く息白く」に、「湿度が高くて冷える“しけ寒い”ときほど息は白くなる」とあった。この説明はほとんどそのまま、湯けむりに当てはまる。
「ほとんどそのまま」と書いたのは、湯けむりの場合は、風の吹き方が大きく影響するからだ。無風のときはくっきりと立ち昇るのに対し、風が強いと、横に流れたり、吹きちぎられたりして見えにくくなる。
ともあれ“しけ寒い”という簡潔かつ風流な言葉を教わって有難い…のだが、無風流なことに、一句も吐けないのは残念である。
(2009.3.28)
※おまけ情報です。
鉄輪「かまど地獄」の湯けむりパフォーマンス
タバコの煙り(微粒子)に水蒸気が付いて見えるようになります。
別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。