地球のはなし 火山の噴火
昨年、暮れも近づいた11月の中ごろ、島原半島の雲仙岳が突然噴煙をあげた。200年ぶりだそうである。200年前のそれは、後に島原大変肥後迷惑と呼ばれることになる大災害を引き起こした。雲仙の火山活動に伴って、今の島原市の背後にある眉山が崩壊し、海に突っ込んだ山塊のために発生した津波が対岸の天草・肥後を襲ったのである。
こんなことは、めったやたらと起こるものではないが、たまに起こると災害をもたらすから怖い。だから人々の火山噴火に対する関心も高いわけなのだろう。日本だけに限らず、世界のどこかで火山の噴火が報道されると、鶴見岳は大丈夫ですかという質問をときに受ける。
九州の西と東に離れていても、大きく見れば雲仙と鶴見は同じ系列の火山であるから、こうした質問は必ずしも見当違いとは言えない。もしかしたら重要な問いかけかもしれない。しかし、この2つの火山はもちろんのこと、九州内にある数多くの火山の間の具体的な関係を説明するのは、現段階では至難のことである。火山活動は数千年、数万年、あるいはもっと長い時の流れの中で消長を繰り返すものらしい。それに比べると、私たちの歴史、地球観測の歴史はあまりにも短い。
【別府-島原地溝】
素粒子から宇宙まで知的世界は大きく広がり、極微の時空と極大の時空が描き出されている。それなのに、肝心の地球に対する知識にこころもとない点が残っているのは皮肉である。
(1991.4.24)
別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。