地球のはなし「非火山性温泉のガス」
六月十九日、東京渋谷の温泉施設で温泉ガスが爆発し、女性従業員三名が亡くなり、通行中の人たちが重軽傷を負ったという事故には、驚倒した。
かつて、石油探査などの際に、地下深部で地下水が見出された。深い所にあるため比較的温度が高く、深層熱水と名付けられて、温泉として利用するところも現れた。こうした温泉は、「深層熱水型温泉」と言われたり、火山とは無関係なことから「非火山性温泉」と称されるようになった。
1970年代頃から、温泉は無いとされてきた平野部でも、深いボーリングによる非火山性温泉の開発が全国的に進み、現在に至っている。大分市の温泉は、代表的な例である。
平野の地層は、土砂がたまった堆積層であるのが普通である。この地層が出来るとき、淡水や海水が閉じ込められて、長年月の間に温まったのが非火山性温泉である。このとき動植物が閉じ込められると、バクテリアなどの作用によって分解され、可燃性のガス(ほとんどがメタン)になる。だから、量の多少はあれ、メタンガスが付随していることが多い。
非火山性温泉は新型の温泉で、利用の歴史は浅い。そのため、メタンガス付随の可能性が高いことが常識となっていなかったことも、今回の不幸の一因になったものと思われる。
(追記)火山地域の温泉は「火山性温泉」と呼ばれることがある。
その代表・別府温泉と非火山性温泉の代表・大分市温泉が隣り合っているのは、けだし温泉県大分の大特長である。
- 「大分合同新聞夕刊」 2007年7月 -
※「松濤温泉シエスパ爆発事故」 ***ウィキペディアから***
温泉を汲み上げた際に一緒に噴出するメタンガスを主成分とした天然ガスが屋外に排出するためのU字状の排気管が結露した水で塞がれたことにより施設内に溜まり、制御盤のスイッチが動作した際に出た火花が触れたことによって爆発、女性従業員3人が死亡し、一緒にいた別の女性従業員2人が重傷、通行人の男性も爆発に巻き込まれ重傷を負った事故。
現場の渋谷区は「南関東ガス田」の中にあたり、1500メートル程掘れば天然ガスが出る可能性のある地域であった。
別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものから温泉に係るものを順次ご紹介しています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?