お国自慢と温泉研究の今 — 三朝温泉とキュリー夫人②
昭和34年建立の石碑には「世界一」の文字が!
この石碑は、キュリー夫人のラジウム発見についての謝意が刻まれています。
この横にはマダム・マリー・キュリーの胸像が。
三朝温泉は、現在、開湯850年。ここには800有余年と記されています。
「医療効果が岡山大学温泉研究所等によって明らかになった。」
医学的に認められてきたのは、最近なのです。
キュリー夫人をご存じない方は、以下の説明で今回のブログは十分です。
ポーランド出身、パリで研究成果が大ヒットした「放射線」の発見者で名付け親です。
女性のノーベル賞受賞者でパリ大学の大学教員でした。
1867年11月7日、ワルシャワ生まれ。放射線の研究で、1903年のノーベル物理学賞、1911年のノーベル化学賞を受賞し、パリ大学初の女性教授職に就任した。1909年、アンリ・ド・ロチルド (1872-1946) からキュリー研究所を与えられた。
放射能 (radioactivity) という用語は彼女の発案による。2)
三朝温泉の入り口には、前回のブログで書いてある通り、今はなき岡山大学温泉研究所の施設を受け継いだ「岡山大学惑星研究所」と温泉病院が併設されていて、いかにも古き良き時代を忍ばせます。
現在の岡山大学惑星研究所の公式サイトです。
http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/jp/
キュリー夫人の功績によって放射性物質の研究が世界的に進歩を遂げると、三朝温泉ではラジウムの効能に目を付けて岡山医科大学が1939年(昭和14年)に三朝温泉療養所(現在の岡山大学病院三朝医療センター)を設置して、温泉治療の研究を行ってきた。
いまでは、寂れた温泉街の三朝温泉。栄えていた時代がしのばれる建物と街頭。
交通の便が悪いのがネックと思いつつ、泉質はとてもラジウム含有量が多く、やはり特筆すべきものがあります。
三朝温泉に関する岡山大学の研究発表は古くからあった
前回は今月に開催された学会発表について表面だけご紹介させていただきました。
しかし、三朝は古くから放射能泉の有効性に関する調査データが教科書のように使われていたり、自己中で訂正されたり…、地域住民の方の胃がんが少ないとか、肺がんは多いとかです。
超有名な三朝温泉の研究報告、インターネットでもいろいろなサイトで引用されているお話を先にさせていただきます。
放射能泉として鳥取県の三朝温泉で、37年間にわたる死亡統計を調査した岡山大学の御船政明は、「三朝温泉住民のがん死亡率は、全国平均や周辺よりも低い」という結果を一九九二年に発表した。三朝温泉の放射能は、一リットルあたり平均約四〇〇ベクレルで、温泉地では屋外でも周辺の農村地帯の二・四倍ある。
ある浴室内の放射能は一立方メートルあたり二〇〇―八〇〇〇ベクレルで、アメリカ環境保護局による室内基準値の一五〇ベクレルを大きく上回っている。このように三朝温泉では、空気中のラドンを日常的に吸入しており、さらには温泉を飲む習慣もある。
ラドンに直接影響される肺、胃、大腸でがんが少ないことは、少なくとも「すべての放射線は有害」という考えに問題があることを示唆しているとした。
この報告の後、低濃度のラドンに日常的にさらされているとがんによる死亡率が低くなるのではないか、と話題になり、よく引用されるようになりました。
この後の話があります。
同じ研究グループが六年後(一九九八年)に発表した報告では、調査地域と期間が少し異なっていたが、三朝地域では胃がん以外の死亡率は低下しておらず、男性の肺癌はむしろ増加していた。前回の疫学的調査でのデータ収集方法に問題があるとの指摘もあり、調査の慎重さが求められている。
こういった経緯があり、今でも岡山大学は温泉研究を続けていて、前回のように詳細の研究が続けられているというわけです。
※効能は万人に対してその効果を保証するものではありません。
今回引用させていただいたのは、信用度の高いソース、北海道大学の温泉病院の院長や健康づくりシステム研究会の幹事にも現職で就かれている阿岸祐幸先生の「温泉と健康」(2009)にあったデータです。
三朝温泉は、最寄り駅のスーパー特急はくとの鳥取県の終点「JR倉吉駅」から各旅館の送迎バスが便利です。鳥取空港からのリムジンバスはなくなってしまいとても残念でした。(2019年3月終了)
岡山駅・岡山空港からは近いようで遠いです!ご注意ください。遠方から訪問する場合、鳥取空港か米子空港からバスで行くのが現実的です。
今回は、自信がなくなるような放射能泉の効果を研究調査し続けている、岡山大学の歴史の古い温泉研究の自慢とその温泉愛、有効といえるかどうかのポイントについてご説明させていただきました。
実は、放射能泉なんて…、と信じていない、信じたくない、信じられない医師もいるということです。はい。
これからも、温泉療法医としての目線で、健康づくりに役立つ様々な温泉医学情報をご紹介していきたいと思います。
セルフメディケーションの時代、ぜひ、日常にお役立ていただけましたら幸いです。
本日はご訪問・ご拝読頂き、誠にありがとうございました。
今後とも、よろしくお願い致します。
1)温泉と健康(2009)阿岸 佑幸 p.197-198
2)マリー・キュリー 出典:Wikipedia
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