再考リリィシュシュのすべて
一番好きな映画は何、
という質問に答えるのは難しい
何故なら「好き」の中に「嫌い」を内包している
そんな種類の「好き」な映画が最も魅力的だと思うから
好きな映画の監督とは会いたくないと思う
例外もいるにはいるが
「リリィシュシュのすべて」はもうかなり古い映画
とにかく映像として美しく中毒性がある
何度も繰り返し観るうち、ストーリーの重さは気にならなくなっていた
岩井俊二の作品は寓話的なものが多い中で
この映画はリアルなこの時代の14歳の肌触りを表現していると思う
美しさに紛れて残酷さが軽くなるのではなく
残酷だからこそ美しさが際立つ
青春は誰しもが痛みを以て思い出すもの
どれだけ深く、鋭く刺すか
その観点において素晴らしく
その痛みにおいて生々しく
嫌悪しながらも映像の美しさに耽溺してしまう
今20年以上経って
登場する俳優達が燦めいているように
主人公もきっと傷を隠した大人になるのだろう
それがきっと人の強さ
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