あの日、席を譲れなかったわたしに声をかけるとしたら?大丈夫、大丈夫、別に問題ない。
『自分を壊す勇気』
どちらかといえば「自分のプライドをなくす勇気」かもしれない。
なんでナンパなんてできるのか、なんで宗教は駅前で布教活動をしているのかを考えたことがある。
それは将来のためになるからと教えられたか、経験から予測はできる。
しかしそんな大それたことをする必要はなく、住んでいる地域の顔見知りの人に出会ったときに挨拶するか、知らないふりをするか。とか、電車で老人が入ってきたときに席を譲るか、眠ったふりをするか。を考えたことはないだろうか?
これにはナンパや布教とは違い、将来の約束された良いことなんてない。あくまで自分の中でどこか後悔してしまう気持ちや「した方がいい」という頭ではわかっていることくらいだ。
それでも向こうから笑顔で意気揚々に挨拶されたり、隣の人が席をスラっと席を譲っているのをみて後悔したこともあるかもしれない。
それは性格や個性なんかではなく、自分が周りからどう見られているのかというプライドによるのではないかと指摘している。
電車なら断られたらどうしよう。挨拶なら無視されたり、きょとんとされたらどうしよう。恥ずかしいのではないか。
しかし思い返すと恥ずかしい体験は生物であればどんな生き物も経験している。さらにもっとも共感ネタとして雑談など人の心をひきつけるのは失敗談だとも聞いたことがある。
つまり恥ずかしい方に進めば進むほど話のネタが増え、成功したらそれは「ラッキー」程度でいいのだろう。
本書に具体的アドバイスを求めているのならそれは間違いではないだろうか。〇〇していくべき。〇〇をしよう。と言った行動アドバイスがあるわけではない。
あくまで誰の頭でも考えられる「失敗が怖い」を抽象的かつ人間の暖かい言葉を通じて「大丈夫だよ」と語りかけてくれるのが本書である。
レビューを見すぎて判断してしまう世界に著者は”でも、でもです。その分、実物に遭遇した時のトキメキも確実に半減するんです。 正直言って実際に食べたり観たりした時につまらなくなるんです。何故ならその場合、実際の体験は、事前に仕入れていた情報の確認作業になってしまうわけですから。”というが
そうは思わない。確かに失敗をしてネタにしようと思うかもしれないが、不快というものはネタにならないのではないだろうか。
Amazonレビューで失敗した場合ネタにもならない壊れやすい中華性の商品に当たった人もすくなくないだろう。これはレビューに踊らされたり、しっかり情報を集めなかったから失敗したのである。しかしこれをエピソードにできるほど口が達者なわけではない。
ここは落語視点なのかもしれないので、おすすめはできないのではないだろうか。
落語だけではない。人に説得するにしても反対を押し切った先には何も残らないとも話す。”「もしかして親の反対を押し切って無理やり入門、という方が芸人らしいと思ってる? もう大人なんだし、自分の人生の進路くらい、自由に選択すればいいじゃないかって思ってる? でもね、考えてごらん。一番身近な自分の親ぐらい説得出来ないような人間が、言葉を扱う落語家になれるわけがないでしょ?」”
素直にこれはかっこいいと感じた。妻に逃げられた。などのエピソードで本当にしたいことを無責任にしてしまっては本末転倒だろう。
家族<仕事になってしまうのはいいかもしれないが、あくまで大切な家族を守ることを誓った人からしたらこの言葉は大切かもしれない。
著者の海外経験や大手から落語家への波乱万丈エピソードに脳科学者の意見を織り交ぜた人間味ある言葉の本書はあなたの背中を推してくれる1冊となる。
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