あずかりもの
子どもというのは「授かりもの」ではなく「預かりもの」だと何かで読んだのは、26年ほど前でしょうか、息子が生まれて間もなくのことでした。
その記事を読んだ時、目からうろこというか、あ〜そうなんや〜と妙に腑に落ちたのを憶えています。その記事を切り抜いて、ノートに貼り付け、何度も何度も読み返したっけ…。
子どもというのは、授かったのではなく天から預かり、育て、世にお返しするのだと、あの時、親になる決意みたいなものが私の中にできたような気がします。
子どもの就職や結婚などで、今まで当たり前だった暮らしが一変する、そんな気配がまたもやわが家にも漂ってきました。またもや、というのは、先に息子が結婚していて、そして今年の春、娘が社会人となるからです。
私は一年の中でこの季節がどうも苦手なようで、妙にソワソワして落ち着かなくなるのです。それは私だけではないようで、土の下の虫たちも、春を感じうごめきだすので、私の心もそのようです。そういえば明日は啓蟄かぁ…。
そんな私の子育てもいよいよ終盤。今まで数えきれないほどの世話を焼いてきました。はい、煙たがられる煙のように。その煙からやっと解放され、娘は巣立っていくのです。
それは、さみしさでしょうか。うれしみでしょうか。親というのは、こんな想いもあるのねぇ。。。
小さい子どもがわが家に遊びに来ているのだ。この子たちはいつか帰る時が来るのだ。そう思ってきました。わかっていたはずです。まるで、かぐや姫のストーリーです。
先日、さんぽから帰宅した娘が、「お母さん!満月!」と息を切らして私を呼びました。外に出ていくと空にはぽっかり美しい月。母ちゃん、泣きそうやわ。いや、涙は見せられないぜ…。と上を向く。
お風呂あがり、娘がアロマトリートメントをしてくれました。ブレンドはラベンダーとユーカリラジアタ、フランキンセンス。ひいき目でしょうが、娘のトリートメントはピカイチなんです。さすが私の娘…。親バカ…。
春のにおいが少しずつ、私たちの町を染めていきます。