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「飛梅伝説」と菅原道真公 ~東風吹かば の歌に込めた想い~
2月の厳しい寒さの中、梅の赤や白い花びらが優雅に咲き誇る様子はまるで自然界が目を覚まそうとしているかのよう…♪
当社でも、拝殿向かいの太宰府天満宮よりいただいた「道ひらきの梅」が春に先駆けて花を咲かせ、訪れた方々の心を和ませてくれました🌸
さて、2月は梅の季節ということで、今回は当社御配神・菅原道真公が愛した梅の花と、梅の名歌についてのお話です。
◆「東風吹かば~」道真公の想いに応えた「飛梅」
当社の御配神であり「天神さま」と親しまれる道真公は、子供のころから梅をこよなく愛し、自宅でも梅花を愛でておりました。
その邸宅は古くは天神御所 紅梅殿・白梅殿と呼ばれていたと伝えられています。
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そんな梅を愛した逸話から、〇〇天神や〇〇天満宮など、全国の道真公を祀る神社の御神紋は「梅の花」。
御配神としてお祀りしている当社も御神紋に梅紋が入っています♪
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そんな菅原道真公が祀られている太宰府天満宮の本殿の左側には、「飛梅」と呼ばれる梅の木の御神木があります。
この「飛梅」には道真公にまつわる有名な逸話があるのですが、ご存じでしょうか…?🙂
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菅原道真公は、朝廷内での藤原家との政争に敗れ、延喜元年(901年)身に覚えのない罪によって突如、大宰府に左遷されることとなりました。
ご家族と十分な別れをすることも許されぬままに京都を離れる際、日頃からとりわけ愛でてきた梅や桜、松の木などの庭木との別れを惜しんだ道真公は、梅の木に語りかけるように「東風吹かば~」の歌を詠まれました。
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東風吹かば にほひおこせよ 梅の花
あるじなしとて 春な忘れそ
【現代語訳】
春の風が吹いたら、花を咲かせて匂いを寄こしておくれ、梅の木よ。
主人(道真公)が(大宰府に行って)都にいないからといって、春を忘れてはならないよ。
庭の梅の木にも、愛を持って接していた道真公のお人柄が垣間見えますね。
この歌の出典は平安後期に作られた歴史物語である『大鏡』です。なお、「東風吹かば~」の歌は出典により、「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて 春を忘るな」という結句の違う歌もあります。
そして、この歌に呼応して、主のもとに都から大宰府へと一夜のうちに飛んできたと伝えられるのが、現在も太宰府天満宮の本殿右側にある御神木「飛梅」なのです。
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道真公の邸宅には梅以外に桜や松もありましたが、桜の木は主人との別離の悲しみのあまり枯れてしまい、松の木は梅と同様公を目指して飛び立ちましたが大宰府までは届かず、全国各地に根を下ろした「飛松伝説」が残っています。
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◆道真公の真骨頂「鳥点の筆法」に込められた想い
そして書の「三聖」であり、「書道の神様」とも称えられる菅原道真公の真骨頂ともいえるのが「鳥点の筆法 」です。
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その筆法で書かれたものに、太宰府天満宮の境内美術館に所蔵される『五言絶句双幅』や、御神木である「飛梅」の立札がありますが、のびのびと書かれた文字をよーく見ると…文字に鳥が隠れています!
絵画のように美しく、遊び心が感じられる技法ですが、飛梅の縁起になぞらえて「都に鳥のように飛んで帰りたい」という道真公の心情が描かれているといわれています。
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意匠に忍ばせたストーリーを知ると切なく思えますね。
鳥点の筆法には、ご自分の気持ちを情緒豊かに表現する道真公の類まれなる感性と、圧倒的な書の技術が表れているのです…!
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太宰府天満宮の境内には、約200種、約6,000本の白梅・紅梅があり、現在では日本有数の梅の名所になっています。
道真公が愛した梅に思いを寄せて、ご奉納や記念植樹によって毎年多くの梅が今も植えられています。
例年、御神木の「飛梅」は境内で一番早く、 1月下旬から2月上旬頃には花を咲かせます。
太宰府天満宮を訪れた際には飛梅だけでなく、その立札にもご注目ください🎵
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