夜が明けたら銀色のせかい
12月の朝。
目覚めると外は真っ白な雪景色になっていた。
小さい頃のはなし。
故郷は雪国というほどではないが、
雪が積もるのは珍しいことではなかった。
雪だるまなんて数メートル転がせばすぐに作れるし、かまくらや即席のすべりだいもあっという間に出来あがる。
凍った地面はまるでスケートリンク。
歩くというより滑るように学校へ向かう。
丸めた雪を投げ合いながら、教室に着く頃には手が悴んで感覚がない。競うように石油ストーブに手をかざすと、ゆっくり手の感覚が戻ってくる。
雪が積もれば遊びに困ることはない。
木の下に近づいたところでその木を蹴れば、ドサっと雪が降ってくる。分厚い氷が張る川に、石を投げ込み割る遊び。土手を滑るそりはジェットコースターのようなスリルとスピード。雪に飛び込んで見上げた空には無数に降る雪の結晶。雪の絨毯に寝ころぶと、赤くなった頬に暖かさを感じる。そんな遊びをくり返して笑う。
この街は多少の雪では電車が止まったりしない。
ゆっくり走ればいいのだから。
雪道で転ばないコツはひとつだけ。
焦らずゆっくり歩くこと。
傘など必要もなく、フードを被ってさらさらの雪を払えばいい。白い息を吐きながら、ギュッギュッとブーツを鳴らし道を作って歩いていく。
カーテンをあけるとそこは銀色の世界。
灯油の匂いと凍てつく空気。
刺すような寒さに感じる懐かしさ。
今でも冬は嫌いではない。
昨日は雪が降った。
夜が明けたら、
子供は銀色の世界へ飛び出していった。