科特隊出撃せよ【ネロンガ】
1966年7月31日に初放映されたウルトラマン第3話「科特隊出撃せよ」。この第3話でウルトラマンは初めて地球産の怪獣ネロンガと対決します。透明な怪獣で、エネルギー源である電気を吸収するとその姿を現す。劇中では「怖ろしいやつだ」とも云われますが、その昔江戸時代に村井某と云う武士に退治され、蘇って巨大化しても角から出す電撃は人を殺傷するレベルには達しておらず、最期はウルトラマンに投げ飛ばされただけで絶命。スペシウム光線で爆破されてハイそれまでよ。
特に物語にも怪獣にも特筆すべき点がないのだけれど、ネロンガ自体はちょっと聞き分けのない犬みたいで、でもきっと飼い主には猛烈に甘えるような可愛さが感じられる。ペットにするならネロンガが良いかとも思う。電気代が嵩むか。真夏とかには電気料金の請求書を見てビックリと云うことになりそうだ。
この第3話からは離れてしまうが、ウルトラマンの主題歌は第1話と第2話以降ではメロディーが違う部分がある。歌の最期の方の「来たぞ我らの」の「我」が第1話では「わーれ」と付点8分音符+16分音符でハネた感じになっているが、第2話以降では「われ」と8分音符+8分音符でスクエアになっている。僕たちがうろ覚えでウルトラマンの歌を口ずさむと、意外にも前者のハネた「わーれ」とする人が多いのに気が付く。
そして第1話のメロディーのメインは大人の女声コーラス、第2話以降は子供の合唱がメインで、それぞれ男声コーラスがサポートしている。ここまで読んでこんなことはどうでも良いと思われている方が殆どであろう。自分でもこれぞ正にどうでも良いことの典型と思うのだけれど、先に進む。
ウルトラマンの歌のベースラインが素晴らしい。最初はルート音(ドレミのド)と7th(属七、ドレミのシの短の方)と5度(ドレミのソ)で2小節。この後にメジャーのメロディーが来てももう1小節その7thの入ったベースライン(ミュートのギターもオクターブユニゾンしているように思える)が続く。そして歌の2小節目の3拍目にはメジャースケールの7度(maj7、ドレミのシの長の方)を提示するだけでメロディーに対してコードがドミナントに移動していると聞かせるのだ。人類史上最も偉大なる7度の使い方であると思う。
文章だけで書いていると大変なのでベースラインの話はここまでにするが、楽曲を構成する全てのアンサンブルが素晴らしい。使用楽器の編成はそこそこ多いのだが、音の空間がいっぱいあって、その空間が見事に生きている。音楽屋としてはいつも心しておきたいポイントである。
ウルトラマンの歌の最初の4音。ドミーラソ。これはウクレレの開放弦の音と同じ。左手では何も押さえずに、3弦ー2弦ー1弦ー4弦と弾くとウルトラマンのメロディーの最初になる。もう一度繰り返すと、つけてる、まで左手は使わずに行ける。第1話の時にも書いたけれど、ウルトラマンに最初に出てきた楽器が龍ガ森湖畔で若者たちが弾くウクレレ。ここに何かしらの関連性を見いだすのは無理だろうか。
そしてこのドミーラソは、実は「帰ってきたウルトラマン」主題歌の最初の4音でもある。きみーにも、だ。キーは違うが同じ符割りの同じ4音なのだ。これは絶対に狙っていたと思う。作曲者のすぎやまこういちさんに訊いてみたい。
ウルトラマンにはまだ謎や秘密がいっぱいある。それこそが僕が今でも好きで好きでたまらない理由だ。57歳にもなって、こんなどうでも良い文章を書いていられる幸せ、ゆっくり噛み締めている。いつまでもこんなどうでも良いことを考えたり書いたりすることが出来る世界であって欲しい。僕は今、色々な発信をしながら、日本の世の在り方に抗議もしている。今こそ第1話でのウルトラマンの台詞を、僕も云ってみたい。「地球の平和のために、働きたい」と。
(5月11日:段落の区切り方を変えました)
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