岡山『だてそば』のかつ丼を再現してみる
非常事態宣言が解除になって、他県への往来もオーライになったけれど、まだ日本全国自由自在に移動する生活は戻らない。この夏こそしっかり感染対策をして、次の流行に備えなければならないと思う。それにしても募るのは全国のウマイモノへの憧れ。あれを食べたいこれを食べたいと僕の心の中の御馳走帳が常に囁くのだ。お店に伺えないのなら自分の記憶を辿りながら再現してみようとなんて無謀な考えも涌こうと云うもの。その無謀を実践してみた。
ターゲットは岡山『だてそば』のかつ丼。岡山のかつ丼と云えばデミグラスソースのかかったデミカツ丼だが、『だてそば』のはちょっと他とは違う。甘めのまったりしたデミグラスソースではなく、スッキリとした味わいでサラッとした特製ソースがかかっている。デミカツ丼とソースカツ丼の中間地点辺りに位置する唯一無二のかつ丼である。
このかつ丼を知ったのは10数年前。僕がバイブルとしている「ベストオブ丼 文春文庫ビジュアル版」にも載っている。初めてこのかつ丼を食べた時の衝撃は忘れられない。自分の人生を大きく動かした体験だったと云っても過言ではない。
このかつ丼の特徴は別添えの生卵をトンカツの間からご飯に載せて、かき混ぜて戴く方式にある。僕はずっと生卵が嫌いで、玉子かけご飯が自分の偏食のラスボス級だったのにもかかわらず、あまりにもこのかつ丼が食べたかったが故に自分のポリシーを完全に捨てて挑んでみた。その結果、ハマった。こんなにウマイモノが世の中にあるのかと瞠目し放心し落涙し世界の中心で愛を叫んだ。以来岡山に赴く度にこのかつ丼を食べている。一日に二度食べたこともあるくらいだ。数年前にはお店のマダムが体調を崩されて、一年ほど休業されていたことがあった。その間はもうこのかつ丼を味わえなくなったのかと暗い気持ちに陥る他はなかった。お店再開の一報を受けたときの僕の喜びようは説明するまでもない。昔西武ライオンズに在籍したデストラーデ選手がホームランを打った時のガッツポーズが出た。
昨年訪問時のブログ記事。ご参照ください。その愛はほぼ信仰に近いくらいになっている。
さあここまで思い入れのあるかつ丼を、自分で再現してみると云うのはあまりにも無謀で不遜であるとは承知の上で、自分の記憶にどれだけ迫れるかの挑戦をしてみる。まずはトンカツを揚げる。
20数年前にはほぼ毎日料理を作っていた時期がある。だから何となく手順は覚えている。先日天ぷらは揚げたので、油の扱いには多少慣れてきた。豚肉はちょっと厚みのあるロースを使用。ちゃんと揚がるか。
揚がった。見た目はなかなか良い。食べ易いように切り分ける。
衣がちょっと剥がれたりしたけれどまあいいや。
最重要ポイントであるソース。ただのソースではなく何か手を加えているのは判っているが、実際何をどうしているのかは不明。僕はこのお店のもう一つの看板メニューである支那そば(ラーメンですね)との関係性に注目した。あの支那そばの基本スープはどうなっているか。動物性と魚介のマッチングではないのか。ならばそうしたスープでウスターソース(一応岡山県のタテソースのウスターを取り寄せて使ってみた)とマリアージュしてみたらどうなのか。そんなことを考えて適当に色々と行き当たりばったりの目分量でそれらしきものを作ってみた。さあどうなる。
ここまで出来た。トンカツは丼の径に対してちょっと少ないかと思う。多分肉のカットの形状からして選択ミスをしている。トンカツはもう少し薄めでなくてはならない。既に反省点続出。生卵はキレイに器に割り入れられた。ちょっといい気になってこれを丼に移す時に失敗した。
黄身が割れて流出してしまった。後でご飯に混ぜるので別に大丈夫なのだけれど、良い写真が撮れなかったのがとても悔しい。
別角度から撮っても大差はない。いつかステキな写真を撮ろう。
ご飯の中に生卵を埋めるようにして混ぜた。さあ、お味の方は如何か。
食べかけの写真で恐縮です。これがとてもとても美味しく出来たのだ。『だてそば』の味とは、方向性は合っていても匹敵するまでは行かなかったけれど、初めて作ってみたにしてはかなりのレベルにまで達することは出来たと思う。特製ソースと生卵のマッチングが素晴らしいと自画自賛。一気呵成に食べ切ってしまった。かつ丼サイコーだぜロックンロール。ウマウマウー。もちろん今後の指針も出た。
反省点その1:トンカツの肉のカットをもっと薄めに。
反省点その2:パン粉はもっと細かいのを使うこと。
反省点その3:ソースにもう少しだけ甘味を増やす。
反省点その4:ご飯は炊きたてのアツアツであるべき。
次はもっと上手く作るつもりだ。でもこれを作って岡山に行きたい欲求が収まったかと思ったら、逆に行きたくてしょうがなくなってしまった。お店で食べて、また色々考えてみたいと思う。御馳走様でした。
そしてまた蛇足ではありますが、パン粉も特製ソースも残ったので、シイタケフライを作ってソースをかけて食べてみた。これがまた世界の中心でシイタケを叫ぶくらいにウマかった。ウマウマウー。揚げものサイコー。まだまだ揚げものを欲する僕の食欲。食べ過ぎないように気を付けてこれからもがんばります。そしてかつ丼シリーズ、続編もお楽しみに。