運の良さそうな人
「よかったら応募してください」
四谷三丁目の點水樓で台湾料理を食べたあと、お店の人からクリスマスのキャンペーン葉書を渡された。
一緒にいた人が、
やたらめっぽう運の良さそうなので、
「送ってみてくださいよ」と葉書を押しやった。
うんうん、とうなずくと、
住所を書き始めた。
ほがらかそうな見た目に反して、
一文字一文字が縦に長く細く、
まるで東京タワーが並んでいるような文字。
思ったより、華奢な字を書くんだな。書いている様子から目が離せなかった。
おもて面にひっくり返すと、
宛先の〇〇行という字に細工を始めた。
「行」に縦や横の棒を書き足し、
「御」にしてしまった。
そして、「中」を足して「御中」が完成した。
なぜ、横線で「行」を消さないの。
いつもそうするの?
「うん。なんか、『行』を書いた人に悪いから。せっかく書いてくれてるんだから、消さずに使いたくて」
他の空白をうめながら言った。
印刷の「〇〇行」を書いただれかを、想像している。。。
ひとりものすごく納得して、やはりこの葉書はこの人に書いてもらってよかったと思った。
当たらなかったとしても、神さまが外したことをちょっと申し訳なく思ってくれる気がしたよ。