世界一周を決めてから3年半、初めて日本を出る。
21:20 なんばOCAT発
もう何回目かわからない夜行バスに乗って、いつものように東京に向かう。
今夜のバスはバスタ新宿じゃなくて、町田に到着するから、きっと降りたら左にある階段を上がって、まずはその時間でも空いてる小田急線の前のマクドに入るだろう。
そこで少し疲れた体にコーヒーでも入れて、軽く作業して。
ワクチンの接種証明書を役所でもらい、PCR検査を受ける。
お昼はいづみちゃんに会いに虎ノ門まで行って、その後おばあちゃんちに顔を見せにいく。
家に帰ってきたら明日の準備をして、お風呂に入って、アラームを10個くらいかけて、充電器を全部充電したのを確認して
眠りにつくだろう。
高校三年生、5月。
ある一本の動画に心を打たれ、夢を見た
「地球一周」
これは実際その時みた動画とは違うけど。
何千本の紙テープが船と港を繋いで、生まれ育った日本を離れていく。
そこから一度も後ろに戻ることなく、出発した場所に帰ってくる。
それまで目に映る景色の全てがはじめての景色である。
みのが持ってない言語を使ってる人たちがいる、そこで暮らしている。
地球は丸いっていうけど、本当に丸いことを、本当に全ての国が繋がってることを体感で知っている人は、
ほとんどいない。
知らない感覚が、知らない景色があることに強く惹かれた。
この船は宣伝用のポスターを町の至る所に貼ることで、最大全額船の料金が割引される。
100万円分。
毎日知らない土地を歩き回って、知らない店にいきなり入って
リストなんてないし、アポなんてないから、
「営業時間なんだよ!考えろよ!」
「普通に洗脳されてんじゃん?」
「邪魔!出てって」
とか、怒鳴られたり馬鹿にされたり、話しかけてもみのの事見もしなかったり。
貼らせてもらったのは、3500枚/1700軒。
入ったお店は約一万軒。
何度も1人で号泣して、クリスマスの原宿で30人くらいの前で「申し訳ありません」って頭下げたこともあった。
別に全然強制じゃないし、みのが自分の意思でやってた事だったから、きつかったけど
事務所に帰ってくると同じように頑張っている仲間も帰ってきて、みんなでギターとカホンで歌いながら飲んだりして
そんな時間が楽しかった。
2020年3月2日
コロナウイルス流行により、船の出港停止が決まった。
その連絡が来たのは、
4月出航の船に乗る人たちを見送る、行ってらっしゃいパーティー通称「いってらっぱ」が行われた次の日だった。
船のために会社を辞めた人や休学した人がたくさんいた。
みのがとてもお世話になった人は美容師になることが夢で、美容師の専門学校に通いながらバイトをしながらポスターで全額貯めた人だった。
交渉して入社時期を遅らせてまで乗ろうとしてた船、そのタイミングを逃すと次に乗れるのは早くて5年後くらい。
なんか、やるせなくて、悔しかった。
自分は別に捨てたものもないし、時間はいくらでもあるしいいけど、頑張ってたところを見てた仲間たちや、人生かけてるスタッフたちがどうにもならない理由で「船」を奪われたことが
悔しかった。
「それでも美容師の夢は諦められない」
そう言った、そのお世話になった人は今
新宿駅から徒歩15秒くらいの美容室で2年前から働いている。
2020年4月
フリーターになった。
バイトか、ピースボートに遊びにいくか、それだけの日々。
目の前にある「地球一周」のポスター。
憧れた見たことのない景色や、知らない言語が飛び交うその地を想像しながらただ見ているだけの日々。
これも、別に不幸だとかは思っていない。
だって、コロナは全ての人の人生を変えた。
ライフスタイルに衝撃を与えた。
みのだけじゃない。
それによって出会えた人たちもたくさんいたいた。
でもやっぱり考えるよ。
「コロナが来るのがあと半年遅かったら」って。
海外に興味を持ち始めたのは中1の時、アフリカで少年兵をしていた人の話を聞いた時。
高1で友達がトビタテの留学制度を使ってアメリカに行った。
高2の時にはクラスメイト3人が、フランス・メキシコ・イギリスにそれぞれ1年旅立った。
デンマークのフォルケホイスコーレに行ってた人の話を聞いた。
ずっといいなって思ってただけ。
自分で調べようともしなかった。
いつか行きたいな、大学生になったら行こうかな、
初めて自分で調べて、行くことを決めて、お父さんにプレゼンして、100万貯めて、
行けなかった。
正直どこでもよかった。
海外に行ければ、自分の知らない言語や自分の知らない景色や自分の知らない味がそこにあるなら、
それがどこでもよかった。
今日の夜行で東京に向かう。
9日成田発の飛行機に乗り込んで、自分の意思で、自分の持つ記憶の中で、
初めて日本から出る。
初めてだというと、意外だと言われる。
世界一周とか、旅とか、ふっかるとかそんなイメージだから、自分でも「本当に初めてなんだ」ってちょっと不思議な気持ちになる。
海外に興味を持ったあの日から、8年。
進路を世界一周に決めてから、3年半。
ようやく、飛び立てる。
日本ではないところに行く、ただその一つの事実がこんなにも嬉しいんだって
ようやく感じることができている。
「もう何回目かわからない夜行バスに乗って、いつものように東京に向かう。」
行ってきます!!
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