[日本ハムファイターズ観戦記] 栗山監督の続投決定

 ここでも早くから予想していた通り、栗山監督の来季続投が正式にハム球団から発表されました。吉村GMはシーズン終了直後「すべてはオーナーと栗山監督の会談次第」なんて思わせぶりなことを言ってましたが、その会談はわずか30分で終わったそうで、要は最初から結論ありきの儀式。だいぶ前(たぶんコロナでオリンピックの延期が決まった時=今オフに稲葉監督就任が不可能になった時)から続投は決まっていたということです。去年の続投は栗山監督の進退伺い→球団の慰留→続投という臭い臭い田舎芝居があったわけですが、さすがにそれはみっともないと球団も気付いたのか今回はいきなりの大本営発表のみ。それも記者会見もなし、ただプレスリリースを報道各社に配布するだけの続投発表だったようで、記者に痛いところを突っ込まれたくないからだろう……とはうがちすぎな見方でしょうか。

コロナ禍で開幕が遅れた今季、チームは1軍が北海道、2軍が千葉・鎌ケ谷と離れている球団事情もあって調整が遅れ、開幕後にはビジターの連戦が続いてスタートから出遅れ。故障者の続出や外国人野手の不振も響き、優勝争いに加われないまま5位に低迷。
新型コロナウイルスにより、開幕は延期され試合数は120試合に縮小。シーズン途中まで同一カード6連戦が続く過密日程だった。1、2軍の本拠地に距離があり、移動の際の感染リスク等の観点からチームが分断された時期も長くコンディション調整に影響が出た側面もあった。
球団側は今季のチーム活動に、新型コロナウイルスが与えた影響を考慮。1軍が北海道、2軍が千葉・鎌ケ谷と離れており、他球団よりも開幕前の全体練習を再開するタイミングが遅れ、難しい調整を強いられた。また9年間でリーグ優勝2度、Aクラス5度に導いた指揮官の手腕に信頼を寄せている。
 今季は首位と20ゲーム差の5位となり、2年連続のBクラスに終わっていた。去就は微妙だったが、コロナ禍で開幕が遅れるなど異例のシーズンであったことも考慮された。
〇畑佳秀オーナーコメント
「全ての球団が同じ条件だったとはいえ、開幕延期やコンディション調整など新型コロナウイルス感染症に直面しながらの舵取りは極めて難しいものだったと理解しています。思い通りいかなかった歯がゆさ、悔しさは誰より栗山監督が感じており、それを晴らしたいという思いを最も強く抱いているのは監督自身です。これまでも信念を貫き通すだけでなく、結果で示されてきました。10年目という一つの節目を迎え、これまでの集大成を見せていただけると信じて栗山監督に2021年のファイターズを託します」
〇栗山英樹監督コメント
「もう1年というお話をいただいて、自分でいいのかということと同時に、責任ある行動がどういうものなのかじっくり考えました。今シーズンが終わってこんなに悔しい年はなかったですし、絶対にこの成績で終わる選手たちではないので、引くことは簡単ですが、やると決めた以上は情を捨ててチームが勝つために向かっていく。それが責任の果たし方だと思っています。もう一度1年目にお受けしますと答えた時の気持ちに戻って全てをかけてやります。責任を果たし切るために厳しさを求めるのが本当の愛情。選手がはつらつとしていて、試合を見ていただいてわくわくするような、ファイターズらしい特徴が出るように選手やコーチには言葉ではっきり伝えていきますし、全てをさらけ出してやっていきます」

 いずれもプレスリリース配布を受けてのストレートニュースなので、どの記事も内容は似たり寄ったりですが、球団が最近のチーム低迷にも拘わらず監督続投を決めた理由として挙げられているのがコロナの影響です。以前GMが記者に対して喋っていたのと同じ内容ですが、そんなの畑オーナーの言葉を待つまでもなく12球団同じ条件なわけで、チーム不振の理由には全くならない。一二軍の本拠地が離れているのは球団移転当初からのこと。シーズンの変則日程も最初からわかっていたこと。そんな言い訳にもならない理由で「不振も仕方なかった。監督の責任ではない」と言い張るのは、要はこの球団が「誰も責任をとらない」組織になってしまったということです。2年連続Bクラス、この4年で3回のBクラス、攻撃も走塁も守備もボロボロのズタズタ、ドラフトは失敗続き、若手も育っておらず、2016年の日本一以来、上位チームとの差はどんどん開くばかり……という現在のハムの惨状。にも拘わらず、監督も、球団フロントも、おまけにコーチ陣も基本的に今季のラインナップを来季も引き継ぐわけで、要はチームがどんなに不振でも、編成面を一手に担う球団フロントも、現場の最高指揮官である監督も、それを支えるコーチも、誰も責任をとらない球団が、現在の北海道日本ハムファイターズなわけです。<チームが勝つために向かっていく。それが責任の果たし方だと思っています>なんて監督はコメントしてますが、現場の最高指揮官として思い通りの采配をふるえる分、結果を出さなければ厳しく責任を問われ、地位を追われる。それが選手の人生を預かり、ファンの応援(金銭面も含め)を受けたプロフェッショナルの、厳しい勝負の世界というものでしょう。それは球団運営や編成面で思い通りにやれる権力を与えられたGM以下フロントも同様です。去年続投が決まった時に球団は「今季の不振は監督だけの責任じゃない。十分な戦力を供給できなかった球団にも責任がある」という意味のことを言ってましたが、今回それも言わなくなったのは、球団フロントが責任を追求されるのがイヤだったからでしょう。栗山監督はシーズン前いつも「優勝を目指す」なんて言い方じゃなく「必ず優勝します「清宮は来季3割30発打ちます。できなければ来年オレはここにいない」なんて断言をよくしますが、断言する限りは責任が伴うのは当たり前。その責任の取り方が「進退」ではなく「勝つために向かっていく」とは笑止千万。日本一になるまで球団も栗山監督も誰も辞めず「責任を果たし続ける」つもりでしょうか。采配面ではあんなに頑固なのに、言葉は軽い軽い。

 私たちはなぜプロ野球チームを応援するんでしょうか。仕事上の利害関係がある人は別として、我々ファンが、応援しても一文の得にもならない、なんなら入場券やらグッズやら有料放送やらでせっせをお金を注ぎ込んでも、私生活のかなりの時間を費やしても、それでもひいきチームを応援し続けるのはなぜでしょうか。私だって一応プロの文筆業ですが、プロ野球とは何の関係もないジャンルの貧乏ライターです。にも拘わらず、誰に頼まれたわけでもないのにこんな長文をせっせと書き続けているのはなぜか。

 プロ野球に夢を託したいから。

 それ以外に何もありません。好きな選手が活躍し、好きなチームが素晴らしいゲームを見せ、球場一体となった応援に感動して、なかなか現実の生活では得られないドラマティックな喜びやカタルシスや高揚感を得て、明日を生きるエネルギーとする。ちょっと臭い言い方になりますが、我々一般市民がプロ野球チームを応援する理由なんてそれに集約されるんじゃないでしょうか。もちろんプロ野球に限らずどんなスポーツもエンタテインメントもそうでしょう。

 でも今の北海道日本ハムファイターズに、そんな夢を持てるでしょうか。監督は10年間変わり映えない。コーチも球団フロントも変わらない。つまりは来季も、これまでと同様の野球が決まり文句のように繰り返されるだけ。たとえ結果が出ずチームが低迷しても誰も責任をとらない。若手のころから応援し続けた選手も、一人前になると途端にFAやらトレードやらで出ていく。そのくせそれを補う大型補強もしない。スカウティングや育成のシステムが綻びかけているのに、それを変える気配もない。つまり、現状を変えよう、強いチームにしようという意思が見えない。これで、どんな夢や希望や期待を球団に持てというんでしょうか。もちろん個々の若手の成長や新加入の選手への期待はあります。でも今の球団態勢で、果たしてそれが叶えられるのかきわめて疑問です。

 私たちはプロ野球を見てワクワクドキドキハラハラしたい。今年はダメだったけど、きっと来年はなんとかしてくれるに違いない。いきなり優勝とまではいかなくても、最後まで希望や期待の持てるプレーを、新しい刺激と景色を見せてくれるに違いない。明日はきっと今日よりも良い一日になる、明るくて面白くて楽しい未来になるに違いない。そう信じるからこそ今日を頑張れる。でも今のハムでは無理です。少なくとも栗山監督が指揮をとる限り、この先ずっと、今年と同じような希望も展望もない野球を見せられるのは間違いない。だって、これまで9年間も同じようにやってきたんですから。「もう一度1年目にお受けしますと答えた時の気持ちに戻って」なんて言ってますが、口先ひとつでそんなに簡単に初心に戻ってうまくいくなら誰も苦労はしない。

 西川も有原もいなくなる可能性が高い来季は最下位の可能性も少なからずあります。いや、別に弱くてもいいんです。今は弱くても明日はきっと強くなると信じたい。少なくとも球団は勝つために懸命の努力をしていると思いたい。でも今の球団の姿勢、スカウティングや育成システムのさび付きを考えると、とても楽観視はできません。そう不安に思う人が多いからこそ、ネット上では今回の栗山続投に対して圧倒的に反対の声が高いわけです。でもそんなことは球団にとっては「蛙の面に小便」なんでしょう。ファンなんて、レプリカユニフォームでも配布しておけばOK、ぐらいにしか思ってないのは明白。

 以前ここにも書いた通り、球団は来オフの栗山監督から稲葉新監督への禅譲を経て札幌ドームお別れセレモニー、そして2023年の新球場開場というストーリーを描いているのでしょう。その筋書き遂行のためには現在のチームの不振も、ファンの不満も関係ない、ということです。コロナ禍ということを考慮しても今季の札幌ドームの観客動員は相当に悪かったようですが、来季はさらなる低下が懸念されます。それでも新球場開場のお祭り騒ぎさえあれば全てチャラになるとタカをくくっているのでしょう。実際にどうなるかはその時が来ないとわかりませんが、このままでは新球場開場までにチームの成績はさらに低迷、内情はボロボロ、本拠地スタジアムには閑古鳥が鳴いて、2023年開幕時には草木も生えない荒れ地になっていた、なんてことも十分考えられます。

 もちろんだからといって新監督が就任すれば万事解決、なんてことはありえない。どんな名監督が来ようが、今のチームを立て直すのは数年かかるでしょう。栗山政権9年間でこうなったわけですから、立て直すのも同じぐらいかかるかもしれない。でも問題はそういうことではなく、「現状を打破したい」「今までのダメなやり方やシステムを変えて、チームを強くしたい」「明日に希望が持てるようなチームにしたい」という意思が球団から感じ取れるかどうか、なのです。12球団で一番先進的で柔軟な球団経営をやっていたと自他共に任じていたハム球団も、いつのまにか「変わらない」「変わろうとしない」硬直した組織になってしまった。それがとても残念です。



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小野島 大
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