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MELT-BANANAインタビュー(後編):たった2人のバンドが最強のハードコアである理由


 MELT-BANANAは今年で結成30周年を迎えた。あの衝撃的なデビューからもうそんなにたったのか……と感慨深くなってしまうが、去る6月17日にWRENCHとの対バンで見た彼らのライヴは、そんな感傷など軽く吹き飛ばしてしまうようなすさまじいパワーとカッティング・エッジなエネルギーに満ちていた。平たく言えば、30年前の登場時と同じように彼らは尖っていたし、2023年の今でも彼らのノイズはガリガリと時代に爪痕を残すような鋭い切っ先を突きつけていた。ハードコア・パンクやポスト・ロックやグラインドコアやノイズコアやオルタナティヴや、そんな流れから生まれてきた彼らは、今もハードネスとラウドネスとノイズとスピードとポップの最高値を弁証法的に更新し続けている。

MELT-BANANAインタビュー(前編):日本より海外の方が圧倒的に知名度が高いバンドの活動の実情

 MELT-BANANAのインタビューの後編は、彼らがヴォーカルとギターの2人編成となった理由や、楽曲や音源の制作工程、レコーディング中の新作について語っている。

ドラムがいなくなった理由

ーーあのう、今さらなんですが、ドラムやベースを使わなくなった理由というのは……

AGATA:いなくなっちゃったから……

YAKO:いつもだいたいドラムの問題だったんですけど……

ーーテクニカルな問題?

YAKO:いや、単に人がいないっていう……(笑)

ーードラムがなかなか定着しなかったですよね。

YAKO:ウチらの音楽がすごいハードで、叩くのが大変だっていうのがあって、なかなか定着しないんですよね。

AGATA:オレの感覚からいうと、ドラムが変わるたびにまたリセットされて最初からやり直さなきゃいけないんですよ。100回練習していい感じで演奏できるようになっても、辞めると元に戻っちゃう。例えばそのドラマーと100回練習したとして、辞めてまた新しいドラマーとやると、そのドラマーが100回練習を終わった頃、俺らは200回やってることになる。その差がなかなか埋まらないんですよ。俺ら10人以上のドラマーとやってますけど、その繰り返しがオレはもういいかな、という。新しいドラマーとまた一から練習する時間があったら、曲を作る時間に使おうよ、という感覚はありました。

ーー辞める人は自分から辞めていくわけですか?

AGATA:俺らから辞めてくれって言った人いる?

YAKO:そういえばいない気が……デイヴっていうアメリカ人のドラマーとやったことがあって、その人はすごく良かったんですけど、ほかにやっているバンドが忙しくなっちゃって、すごいやりたい気持ちはあったけど続けられなかったという。

AGATA:日本に引っ越してくれないと難しいですよね。

YAKO:その人がドラマーの時は、日本のライヴは日本人の別のドラマーにお願いしてやってもらわなきゃいけない。そんな繰り返しで、次のドラマーを探さなきゃ、というのがだんだんしんどくなってきて。いざツアーになると3ヶ月ぐらい出っぱなしになるから、その日程調整も面倒くさい。それでだんだんツアーに行くこと自体が面倒くさくなってきちゃうと、本末転倒になっちゃうので。

ーーああ、なるほどね。

YAKO:それで今はコンピューターがすごい頭よくなってきてるから、いろんなことができるようになった。これなら(二人で)やれるよね……って言ってやるようになったんです。だいたい一番始めは打ち込みだったもんね? 

AGATA:ああ、(MELT-BANANAの)ファーストの前ね。ドラマーがいなくて。打ち込みっていうか「ブー」とか「シュー」ってノイズをキックやスネアに見立ててね。

YAKO:でもそれでライヴをやれるようなテクノロジーはまだなかったけど、今は結構出来るようになったから。

AGATA:昔ドラマーの人がダブルブッキングでウチらのライヴに出られなかったことがあって、その時はA-DATにドラムの音を入れてやったんだけど、あまりうまくいかなかったですね。そんな風にところどころで試したりはしてたんで、(打ち込みに)抵抗はそんなになかったですかね。

YAKO:もともとバックトラック全部AGATA君が作ってるんで、打ち込みのデータは全部あったから。

ーーなるほど。そもそも今のMELT-BANANAはバンド感というか、いわゆるロック・バンドらしいフィジカルな感覚みたいなものを目指してるんですか。それともそれとは違う感覚を表現したいのか。

AGATA:どうだろう……ロックっぽいもの、歪みは欲しいと思いますね。

ーーたとえばビッグ・ブラックとかシスターズ・オブ・マーシーとかーー例えが古いですけど(笑)ーーリズム・マシーンを使ってるけど、別にドラマーが見つからないから仕方なく使ってるわけじゃなくて、ああいう音が好きだからやってるわけじゃないですか。MELT-BANANAはどうなんだろうと。

YAKO:面白い音であれば機械機械しい音でもいいと思いますね。生ドラムっぽい音が身に染みてるから、自然に感じてるだけじゃないですかね。

ーー生ドラムに近づけようとしているのか、それとも違うテイストのものを求めているのか。

AGATA:生ドラムに近づけようとはしてないかもしれないですね。ただ生ドラムっぽい音は好きなのかな。ドラムマシンのドラムの音もすごく好きで、前のアルバムでもそういう音はちょこちょこ入ってるんですけど、強調してないっていうか。

YAKO:ドラムマシーンの音って使うの結構難しいですもんね。

ーーMELT-BANANAのライヴを見ても、打ち込みだから、ドラムマシーンだからしょぼいって感じは全然しない。でもかといって人間のドラムが叩いているという感じもしない。そこらへんの微妙な感じはどこを狙ってるのかなと。

AGATA:ああ、今作ってる新作だとドラマーのことはとりたてて意識してないですね、ドラムを作る時に。今まではその曲をライヴでやった時は(ドラマーが)こう叩くかな、みたいな漠然としたイメージがあって。これ以上やるとダメかなとか、これやるとさすがにキレるだろうとか、こんなの叩けるわけないじゃんて怒られるんじゃないかとか。

ーーこないだのアルバム(『Fetch』)はまだそういう意識があった。

AGATA:ありました。こないだのアルバムの曲って、まだドラムがいる頃に作った曲もあったし、実際にライヴでやってた曲も何曲かあって。でも今回作ってるやつはもう完全に2人になってから作った曲ばかりなんで。ここでハイハット叩いてるのは人間なら2人でやらないと無理とか……

ーー手が4本ないと無理とか(笑)

YAKO:そうだよね。前は、あんまりブラスト(・ビート)を入れるとドラムが叩けないからテンポはここまでに抑えておこうとか。

AGATA:僕らの『Bambi's Dilemma』(2007)ってアルバムは、ちょっとテンポが遅いんですよ。それは何でかというと、その時のドラムの子が、そのくらいの速さまでしか叩けなかったので、そのテンポになっちゃったんです。その子ができる速さの範囲で面白いことをやろうって感じでした。

YAKO:ドラムが新しく代わるとライヴでそのテンポでできなくなるから。

ーーああ、なるほどね。じゃあ2人になったMELT-BANANAのリミッターを解除した本当の本領は、次のアルバムで全開になると。

AGATA:(笑)確かに。今回のアルバムを作り出す前にアメリカ人の友人に「2人でしかできない音楽を次のアルバムで聴くのが楽しみだよ」って言われて、そんなこと考えるんだあって(笑)。

ーーいや考えるでしょ普通(笑)。

YAKO:『Fetch』も半分ぐらいはそうなんだけど。

AGATA:確かに今作ってるやつは意識してます。打ち込みじゃないとできなかった自分たちの音は何なのかな、ということは意識してます。

ーー音源ってなんでもできるじゃないですか、ライヴの再現性とか考えなければ。そこらへんはどう考えてるんですか。

AGATA:再現性は考えてます。

YAKO:それは出来た方がいいよね。

AGATA:だいたい音源でいいなって思うものって、ライヴだと音が多すぎるんですよ。なのでそこからどんどんな音を抜いていかないと、生で爆音でやるとあんまり気持ち良くないんですよね。だからスタジオに戻ってどんどん切っていく。すると今度それを家で聴くとなんか物足りなくなってくる。その間にうまいこと落とし込む作業を今やっている感じですね。どっちも楽しく感じるように、自分が。

「何あんた、シェラックになりたいわけ?」

ーーそこらへんはどんなアーティストにとっても大きな課題なのかもしれませんね。するとMELT-BANANAの制作はAGATAさんがトラックを作って、それをYAKOさんに渡して歌を入れてもらう。

AGATA:そうですね。で(歌が)載ったらまた少し直して。

ーー制作環境は完全にDTMで?

AGATA:そうです。ただ今回は作る過程も結構前とは違うんです。さっき言った、今のスタイルじゃないとできないものって考えた時に、『Fetch』だとギターのサンプルとか使っていた部分に、シンセっぽいものを使ってみようと思って、デモの段階でドラムマシーンとシンセだけでまず作って、それをそのバンドの音にする、みたいな方向ですかね。

ーーデモと本チャンはかなり違うんですか?

AGATA:あ、めちゃくちゃ違います。音源が出たらPatreonでデモを公開しようと思ってるんですけど、デモが1なら音源が100、というぐらい違いますね。

ーー何が違うんですか?

AGATA:要素が違います。デモはA-B-Cで終わるんですよ。でも音源はA-B-A-B-C-Dとか。構成も違うし時間軸も、上に乗ってるアレンジとかももちろん全然違う。そもそもデモはヴォーカルが入ってないんですよ。なのでヴォーカルが入ったあとにまた(別の音を)加えて。ギターとかベースはデモには入っていないので、そういう意味では全然違います。

ーーつまりデモはほんとに叩き台に過ぎないと。ヴォーカルはどの段階で入るんですか?

YAKO:けっこう最終段階ですね。完成したときが10だとしたら、8ぐらいの段階。

AGATA:でもデモの段階で聴いてもらって、そこでイヤだってやつはもうやらないですね。1から8にする作業が鬼のようにあって。

ーー前にインタビューした時に言ってましたよね。YAKOさんからすごい厳しいダメ出しがあるって。「何あんた、シェラックになりたいわけ?」って。

YAKO:(爆笑)

AGATA:そうそう、そういうこと言われるんですよ(笑)

YAKO:あのう、一応言葉には気をつけるようにしてるんですけど(笑)。

AGATA:けっこう傷つくんですよ(笑)

YAKO:でも最近あまり言わないよ。

AGATA:そうだね。……そういうインタビューを経て、けっこう傷つけてたんだって気づいたんじゃないですか(笑)。だから○○っぽい、みたいなのはできるだけ避けるようにしてます。

YAKO:ヴォーカルを乗せると「なんでここにヴォーカルが入ってるわけ?」とか言われることあります。

AGATA:そういう意外な解釈が面白い時もありますね。特に(どこにヴォーカルを入れるとか)具体的な指示はしないんですけど、この構成ならこことここに乗るよな、みたいな感覚で渡すんですけど、すると全然違う場所に全然違うテンポで入っていたりする。1小節に4つぐらい音符が入ると思ってたら8つぐらい入ってたりとか。なんかイメージと違うなあ、と思う時もあるんですけど、こっちが予想もしてなかった方向に曲が発展していってすごく面白くなる時もある。

ーーそれで他にないようなMELT-BANANAだけの個性が生まれるわけですね。事前に2人の間で曲の方向性とかそういうことは話さない?

AGATA:特にないですねえ……イギリスのインタビューでよく引き合いに出すんですけど、ジョン・ピールがザ・フォールを評して言ってた言葉に「いつも同じだけど、いつも違う」っていうのがあって。俺がこのバンドでやりたいことも、そういうことですね。自分たちの音なんだけど前とは違う、前と同じだけどどこか違う、という。

ーーたとえばテンポが速くて、ハイトーンのヴォーカルが入って、やかましいノイジーなギターがあって、というMELT-BANANAらしい個性は保ちつつ、いかに新しいものを入れていくか。

AGATA:そうですね。今話に出たような特徴って、そうしようとしてるというよりは、それしかできないっていう。

YAKO:そうそう(笑)。それが好きっていうのが基本だよね。

AGATA:テンポ感が早いのは基本好きなので。遅くしてると、いつまでこの曲やんのかな、みたいになっちゃうんで。だからそれはもう自然なのかなって思っているんですけど、それ以外は、前と同じことを繰り返すようなことはアルバムでは避けたい。それでも「いつもと同じじゃん」って言われるかもしれないけど、でも自分としてはやっぱりそれまでとは違うものをいつも求めてますね。

YAKO:こういうもの作ったよって渡されても、前と全然違うものは来ないし、いつもと違う感じのものが来ても「こう来たか!」って感じなんです。違和感というんじゃなく意外性がある。

ーーYAKOさんのほうから、こういう曲を作ってくれ、というようなリクエストはしないんですか。

YAKO:最近はあまりしないですね。

AGATA:されてもできないっていうのがある(笑)。作曲する人たちって、たとえば悲しい時はこのコード進行行くといいですよとか、いろいろなパターンがストックされてるじゃないですか。そういうのがほぼないので、全部ゼロからって感じなので。そうなると自分がいいと思ったものを出すしかできないっていうか。

ーーでもそれはお二人のような根本的な信頼関係というか、ちゃんとしっかりした共通の基盤があるから、好きに作ってくれれば好きにヴォーカル入れて、それでいい曲ができるという関係でしっかり成り立っているという。

YAKO:いつのまにか役割分担ができたというか。

ーーそれはメンバーが4人のときもいまも変わりない?

YAKO:それは変わらないですね。いつも(AGATAが)ひとりで作ってたんで。

ーー2人になってすっきりした感じはありますね。最初はライヴとかちょっと見た目、落ち着かない感じがありましたけど、見るうちに気にならなくなってくるというか、むしろ2人のほうが研ぎ澄まされた感じがある。

AGATA:最近は2人でやってるのしか見たことないって人も多いですね。

YAKO:でも最初はやっぱり不安でしたよ。2人しかステージにいないって大丈夫なのかなって。

AGATA:よく言ってたのが「スレイヤーがもし同じことをやったらどうか」っていう(笑)。無理でしょうそれ(笑)。でも俺たちスレイヤーじゃないから大丈夫だよって(笑)。

ーーヘヴィ・メタルはフィジカルな、肉体を使う音楽だって強固なコンセンサスがお客さんの側にもあるから成り立ちにくいだろうけど、MELT-BANANAはそういうバンドではなくて、むしろそうした常識や枠を打ち壊していくことに価値があるから。

YAKO:最近2人組って多い気がしますよ。アメリカとかヨーロッパとかツアーすると、サポートのバンドで2人組って多いですね。うちらが2人だから2人のバンドをブッキングしてるのかもしれないけど、コンピューターを使って激しい音楽をやっているようなバンドが前より増えている気がします。

ーーMELT-BANANAの影響?

AGATA:(笑)でも機材の進化は大きい気がしますね。

新作はどういうものになるか

──これから完成だから、まだあまり言えないと思いますけど、次のアルバムはどういう部分にチャレンジしてるんですか?

AGATA:チャレンジしているのは、ギターですかね。ギターはかなりチャレンジしてます。自分が弾けないのに弾けるように聞こえるっていうか。何て言うのかな(笑)。SY300っていうギターのシンセサイザーみたいなエフェクターがあるんですけど、それをすごい使ってます。なので使うと音色もヒュルルルー!みたいな。一回弾くだけでも速弾きしてくれる、みたいな。

YAKO:大丈夫かなぁ(笑)。

AGATA:そういうのを使ってる。だけどそれって、お店とかで試すと全然、自分感がないんですよ。ただエフェクターがあるだけっていう感じなんですけど。それを自分が弾いていないのに自分が弾いたみたいにやれるやり方って何かな、みたいな感じで、今、使っています。

──それは使いこなしの仕方ということ?

AGATA:そうですね。

──言葉を変えれば、自分の手足を操るようにそういう機材を扱えるかどうか。

AGATA:そうですね、すごく使いにくい機材なので。あまりそれを今、自分がやっているかのように…テラ・メロスっていうバンドのニック・ラインハートってギタリストがいるんですよ。すごい好きなギターの子なんですけどね。自分がやってるアプローチとは違うけど、路線的には同じというか。ギターの弦に合わせてシンセの音色を割り振って、これってギターでやってるんだ、みたいな感じのことをやったりとかしているんですけど。それとはちょっと違う方向性で、自分がやりたいことをやっているのが今回のアルバムかもしれないですね。

YAKO:エフェクター好きだよね。「このエフェクターをこう使って、これが俺」みたいな。

AGATA:そうですね。結局やっていることは同じなんだけど、前はできなかったことがこのエフェクターがある今ならできるなぁ、みたいな。そういうのをやってますね。

──何年か前の「ギターマガジン」の記事でね、日本のロックのベスト・ギタリストを上げてくれって言われて、私、AGATAさんの名前を挙げたんですよ。

YAKO:(笑)ほらほら、聞いて(笑)。

AGATA:なになに(笑)。

──私のほかに誰もいなかったけど、AGATAさんを挙げている人。

AGATA:基本的な技術はダメですからね。(笑)。そういうところじゃ評価されないですよ(笑)。

YAKO:そもそもギタリストなのかなっていう(笑)。

──そもそも速弾きとかテクニック指向じゃない、全く違う方向性に行ったきっかけというのは何かあったんですか?

AGATA:それはやっぱり、ピアノを習っていたからじゃないですかね。子供の頃、高校くらいまでピアノを習っていたんですけど、スケールを習ったりするじゃないですかあれが俺、とにかく嫌いで。普通に楽しく遊びたい、遊ぶように弾きたいのに、教えてくれる先生は全然……うまい人っていくらでもいるんですよ。

──そうですね。

AGATA:極端な話、今クラシックで、ものすごくうまいけど生活できない人っていっぱいいるわけじゃないですか。俺は好きでもないのに生活出来るかもわからないのに、そんなスケール練習するよりも、自分の感情がバーッと入る事をギターではやりたいなと思ってる。…中学の頃かな、メタル好きの友だちがライトハンド(奏法)とか見せてくれるんですよ。だけど俺はその時に出たフィードバックの音が一番好きだったんですよね。

──あぁ。

AGATA:なんかすごい気持ちいいと思って。そこがもう、ノリが違う。一生懸命練習してそういうことができる人はすごいと思いますけど。スキル的にすごいって知り合いは周りにもいっぱいいるんです。その人たちに混ざって自分がそれを目指そうなんて無理でしょっていう。それよりも自分のテンションが上がる事を…「ピィー!!」とかやっている方がめっちゃ何か楽しいし、そういうのをやりたいという。昔からそうだよね。

YAKO:でも、なんか時々がんばってるじゃん(笑)。

AGATA:俺、コロナの時に初めてギター練習やりまして(笑)。今までは普通にピッキングを練習するとか、したことなかったんですよ。ピックを正しく持って弾くとか、基本を知らないでやってた。コロナの状況の時ってずっと家にいて、自分がこのまま演奏できなくなるんじゃないかって不安みたいなものがすごくあって。それでYouTubeとかで基礎練習の仕方とか見て。みんなこんなこと練習してるんだって思って。タリラリ〜とか、一フレットずつ上げますとか。

YAKO:けっこう頑張ってたよね。

AGATA:それを毎日1時間くらいやっていたのかな。2か月くらい延々やっていて。関節が痛くなってきてやめたんですけど、かなりの練習にはなったと思います。練習っていうのも悪くないんだなと。最近ライヴ中に、すごく良く思い出すんですよ、その時のことを。一生懸命弾いている時に。ふと「あ、やべ、ピックずれてるじゃん!こういう風にやらないとだめじゃん!」っていう。

──正しいピックの持ち方とか、弾き方とかを学んで、実際にそれはプレイに役に立ってるんでしょうか?

AGATA:普通にギターを弾く人が聞いたら何を今さらって話かもしれないけど、ピックってはじく場所でも音色って違うんですよ。それまでそんなのあまり考えていなかったんですね。ほんと初心者みたいなことなんですけど。それで色々と見えることはあって。

――たとえば?

AGATA:今までダダダダ、ダダダダっていう部分は、俺は弾いていなかったんですけど、正しくは空ピッキングを入れる。だけどそれをやるとリズムが綺麗に聴こえるんですよ。でもMELT BANANAのノリっていうのは、自分のこの雑なピッキングっていうのもあるんだなって。それはすごく思いました。変な話、すごくギターの(うまい)人が、俺が弾いてるタイミングで弾こうとしても、たぶんできないんですよ。俺のズレ、雑な感じを出せないんですよ。意識的に雑にするっていっても、ほぼ毎回同じように雑には出来ないじゃないですか(笑)。

YAKO:めちゃうまいドラマーの人がのりのいい、かっこいいエイトビートを必ずしも叩けるわけではない、っていうことだよね。

AGATA:ドラムを打ち込んでる時もそうなんですよね。自分で適当に手打ちする方が「これでいいんじゃないかな」ってなるというか。

──それで個性的な、AGATAさんだけの音ができるんだから全然問題ないってことですね。

AGATA:そうですね。だから、これでいいんだなって納得してます(笑)。

(2023年7月12日 東京・渋谷にて)


(MELT-BANANA ライヴ・スケジュール)

11月11日(土) KATA&TIMEOUT CAFE( 東京・恵比寿LIQUIDROOM 2F)

11月26日(日) HOKAGE OSAKA(大阪)


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