[日々鑑賞した映画の感想を書く]『プライド』(2008年 金子修介監督)(2021/9/6記)


 最近金子修介監督がマイブームでして、我ながら物好きと思うが、一条ゆかり原作のこれも、わざわざ中古DVDを購入して鑑賞。結論から言うと意外と面白かった。

 原作の漫画は読んでないので再現具合はよくわからないが、ベタなキャラ設定と通俗的なストーリー展開がなかなか楽しい。予算の制約ゆえか全体にチープさは免れないが、そこはおそらく制作サイドもわかっていて、そこに目くじらを立てるのではなく、一種のキッチュの美学と思えば楽しめる。この映画の最大の欠点は主演を演じたステファニーなる女優(本業は歌手らしいが、全然知らなかった)の無表情&棒セリフ&大根演技&華がなくどんくさい立ち居振る舞いで、彼女が出てセリフを喋るたびにコメディになってしまう。そのため本来なら主人公の引き立て役であるはずのライバル役・満島ひかりのしなやかな悪の存在感が俄然光って、ほとんど主役の風格である。オペラ歌手を目指す2人の若い女性の話なので、歌えるというのがキャスティングの基準だったのだろうが、ステファニーではなくもっとまともな演技力の女優を使えば全然違って、2人の対決と葛藤もより見応えのあるものになったはず。

 この映画は同じく満島ひかりが出演した『愛のむきだし』とほぼ同時公開。『愛のむきだし』の満島のキレキレの演技を思えば、こっちはギャグみたいなもんだが、ファンとしては楽しく見られました。

 それにしても「ガメラ」から「デスノート」から「プライド」から、なんでもこなしてそれなりのものに仕上げる金子監督はまさに職人監督の鑑ですね。(2021/9/6記)

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小野島 大
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