[過去原稿アーカイヴ]Vol.4 エコー&ザ・バニーメン『Crocodiles』ライナーノーツ
2004年に再発されたエコー&ザ・バニーメンのファースト・アルバムのためのライナーノーツ。ファースト(1980)から最終作(当時)の『Echo & The Bunnymen』(1987)までまとめて5枚分の執筆を依頼された。ちょうどツアーのため来日していた彼らのライヴ会場を訪ね、イアン・マカロック本人に直接取材し、その発言をライナーに反映させている。そのインタビューはこのライナー以外には使われていないし、その後エコバニの日本盤ライナーは別のものに差し替えられてしまったので、今となっては中古盤を探すしか読む手段はないはずだ。ファーストから5枚目までを順次アップしていく。試験的に有料コンテンツとさせていただきます。興味があれば課金してください。
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https://note.com/onojima/m/m1f1bcef5c6a3
胸が痛くなるような清冽な音である。
1980年7月に発表されたエコー&ザ・バニーメンのファースト・アルバム『クロコダイルズ』は、25年近くがたった今も、聴く者の心を激しくかき乱してやまない。これほどまでにひたむきで純粋で情熱的で、しかもクールでふてぶてしくて生意気な音は滅多にない。ポスト・パンクの動乱期の産物でありながら、世代や時代や国境を超えた普遍的な美が、ここにはある。永遠に色褪せることのない青春の情熱は、いつだって美しい。
後年の完成された彼らに比べれば、先人の影響を消化しきれない未成熟さも感じられる。だが欠点さえも美点に転化してしまうような初々しさ、若さゆえの勢いがある。やはりこれは長いブリティッシュ・ロックの歴史の中でも特別な瞬間であったと思わずにはいられない。なにかに取り憑かれたようにこのアルバムを繰り返し繰り返し聴き続けた日々のことを、ぼくはある種の痛みを持って思い出す。それは何よりも大切だとわかっていながら、いつのまにか失ってしまったものへの見果てぬ思いなのかもしれない。
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