[追悼]さようなら、ウィルコ・ジョンソン
ウィルコ・ジョンソンが表紙になったNME。ウチのどこかにあるはずですが、見つからなかったので写真はネットで拾ってきました。確かドクター・フィールグッドを辞めてソリッド・センダーズで再デビューしたころだったから、1978年ぐらいでしょうか。記憶が確かなら、ウィルコが単独でNMEの表紙になったのはこの時が唯一だったはず。当時彼の動向がマスコミ的にいかに注目されていたかわかります。それだけ彼の登場はセンセーショナルだったし、その特異なギター・スタイルはパンク前夜の英国ロックに多大なショックと影響を与えたのでした。ギャング・オブ・フォーのアンディ・ギルはその代表格で、アンディのギター・スタイルがパンク/ニュー・ウェイヴ以降の英国ロックの基本になったことを思えば、ウィルコこそはその基礎を作ったわけです。
晩年のウィルコは(特に日本では)優しくて温厚なジェントルマンみたいな感じで受け止められていたようで、それも間違いじゃないかもしれませんが、この頃のウィルコは何を考えているのかわからないエキセントリックでアブない奴という印象で、それは当時のライヴ映像や、このNME写真に明らかですね。実際、人間的にもかなり尖ってたみたいだし。プレーもこの頃〜ソロ初期ぐらいがキレキレで一番冴えてたかな。私は90年代になって一度だけ取材したことがあって、確かジュンスカの森純太との対談という記事だったけど、その時はもう温厚な感じになってましたが、急に怒り出したり声を荒げたりと、ちょっとアブない面影も少し残ってました。森君が「あれだけステージで動くのに、なぜワイヤレスじゃなくカールコードを使ってるんですか」と訊いたら、自分は古い人間で最新のテクノロジーについていけないんだ、と照れくさそうに言ってたのを覚えてます。
私が一番夢中になったウィルコは、フィールグッズを除けばイアン・デューリーのブロックヘッズに一時在籍してた頃〜ソロのファースト「Ice On The Motorway」を出した1979~80年前後でしょうか(ソリッド・センダーズはキーボードが入ってるのであまり好きではなかった)。ちなみにこのNMEの「Black suit,black shirt〜」という見出しは、そのイアン・デューリーの名曲「Sweet Gene Vincent」の歌詞からの引用というかもじりですね。結局彼は音楽的にブルース〜R&Bの定型表現から大きく逸脱することがなく、パンク以降どんどん多様化・先鋭化していった英国のシーンから取り残されてしまったんだけど、彼はギター・スタイルこそ革新的で衝撃的だったものの、元々そういう(言い方は悪いけど)保守的で伝統的なミュージシャンだったんだと思う。
一番好きだったギタリストの一人。佇まいもプレーも最高にカッコよかった。どうか安らかに。
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